愛嬌たっぷりの仕草と顔立ちが、みんなの心を捉えて離さない。

世界中の人たちに愛されるイギリスの国犬

 

イギリス国民とともに歩んだ歴史

13世紀頃のイギリスには、ブル(牛)・ベインディング(咬み付く)という見世物がありました。この時に活躍していたブレンバイザー(クマにかみつく犬)という犬たちが、ブルドッグとボクサーの祖先と伝えられています。17世紀ごろにはその存在が広く知られるようになり、18世紀には絵画にもしばしば登場するようになります。しかし1835年には、動物愛護の観点からブル・ベインディング(牛にかみつく競技)は禁止され、ブルドッグたちは、絶滅の危機に瀕してしまったのです。そのような流れの中にあっても、根強い愛好家たちの手によって、時代に合った犬種へと大きく改良が進められました。その際ブリーダーたちは、身体的な改良ばかりでなく、性格的にも闘争心や攻撃性を持った犬たちを繁殖ラインからはずしていったのです。

優しくなったブルドッグたちは、家庭犬として人気を得るようになります。さらにずんぐりした体と、頭が大きい容姿の選択交配にも拍車がかかりました。その結果生まれたユーモラスかつ勇猛な外貌は、イギリスだけでなく、世界中の人気者になります。イギリスでは海軍の象徴として、アメリカではニューヨーク州のレスキューのシンボルマークや、さまざまな大学スポーツのマスコットにも、勇気と不屈の精神を象徴するブルドッグが使われています。

特徴的な一般外貌:

要求されているのは、バランスがとれた体つき

一般的な見た目(外貌)で特徴的なのは、スムースな被毛です。さらにがっしりとした重厚な体の作りをしています。体位は低く、幅広く強力。引き締まった体格で、頭部はとくに大きく、マズルは極端に短く幅広く上向きです。下半身(後躯部)は高くかつ強いのですが、上半身(前駆部)に比べると、軽いような印象があります。この特殊な体の作りから、足先を使った短い歩幅の独特な歩様が生まれたのです。その後の足の運びも、高くかかげることはなく、地面をこするように前進して行きます。この独特な歩様、ローリング・ゲイトも、ブルドッグの魅力のひとつと言えます。

腰の形は背中に比べて狭く、やや低くなっています。この位置から脊柱が盛り上がり、腰に達します。このバックライン(背線)もブルドッグならではのもので、ローチバックという名の背線です。また、耳は高い位置についており、広く離れています。サイズは小型で薄く、バラの花びらのような形をしています。この耳の形はローズイヤーと呼ばれるものです。

ブルドッグの性格:

自然でムラのない、フラットな優しさ

コワモテの顔つきとガッシリとした体格から誤解されやすいですが、ブルドッグは非常に優しい性格をしています。しかも極めて自然でムラがなく、常に温和な表情と無頓着とも思える愛らしい行動をします。その一方で、頑固で勇猛心に富んだ一面も持っています。そのため、どうしても飼い主の言うことに耳をかさないことがあるかもしれませんが、臆せずに毅然とした態度でつきあっていくことが重要です。

日常的なしつけ:

優しさを、最大限にいかしてしつけを

ブルドッグは飼い主とのコミュニケーションが大好きです。普段から「大好きだよ」と愛情を言葉で伝えることで、飼い主の気持ちをよく理解してくれます。そのがっしりとした体つきから、叩いたり等のしつけをしても大丈夫、と考えている人もいるようですが、それは違います。優しい性格に応えてあげることが重要です。日常のしつけでは、ひとつの行動に対して、キュー(サイン)はひとつだけと決めましょう。

室内でのしつけでは、家族で同じルールを作って、家族全員でそのルールを守らなければなりません。頑固で一本気な性格をしていますので、みんながバラバラのしつけをしてしまうと迷ってしまい、何にしたがっていいのかがわからなくなってしまいます。もちろん、飼い主自身も一貫した行動をとるようにしなければなりません。

健康上の注意:

事前に『特有な病気』を知っておくこと

その特徴的な体格から、ブルドッグにはさまざまな犬種特有の病気が報告されています。被毛、皮膚、目、耳、尾、呼吸器系、肛門 …など、他犬種に比べて、ブルドッグならではのいろいろな病気があります。でも、これらの病気は日常的に犬をしっかり観察することによって、初期の段階で気づくことができます。定期的な健康診断に加えて、気になることがあったら、かかりつけの動物病院に相談しましょう。そのためには、ブルドッグがどのような病気にかかりやすいのか、予備知識を身に着けておくことが大切です。

まず、気道が特徴的で極端に狭いため呼吸器系の病気にはとくに注意をはらわなければなりません。気管虚脱や軟口蓋、鼻腔等、呼吸に関係する病気がありますが、これらの予防のための最短の方法は、まずは愛犬を太らせないことです。肥満は呼吸器系を圧迫してしまいます。ずんぐりした体型が魅力ですし、むしろ多少ぽっちゃりしていた方がかわいいと思われるかもしれませんが、愛犬の健康を考えるなら、最初にしなければならないのは、太らせないこと、です。また、呼吸での対応調節も苦手なので、夏場の温度管理には十分注意しましょう。さらに皮膚が敏感な場合も多く、特徴的な皺の構造から皮膚炎を起こしやすいともいわれています。日ごろから清潔に保ち、愛犬に合ったスキンケアを獣医師に相談しましょう。

ブルドッグを含めた短頭種では、その特殊な体の構造により麻酔のリスクが他犬種に比べると高いとされています。麻酔をかけなければならない状況まで病気を悪化させないことが大切なことはもちろんですが、現在ではそのリスクをできるだけ抑え安全に行えるように様々な工夫や手法で対応されています。手術が必要な場合には、獣医師と十分に相談しましょう。

※ 参考資料
一般社団法人 ジャパン ケネル クラブ
https://www.jkc.or.jp/archives/world_dogs/2711

千葉 路子
『月刊WAN』編集長、『DOG FAN』編集長など、愛犬雑誌の編集に約30年携わってきました。現在は老犬2匹と暮らしながら、ペットのためのフィットネスを研究しています。ads@ka3.so-net.ne.jp

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