エレガントで穏やか。優しい顔立ちは人を笑顔に
原産国:
イギリス
用途:
牧羊犬
サイズ:
理想体高
牡:37cm 牝:35.5cm、33cm未満、上限40.5cmを超えるものは好ましくありません
被毛は、ダブルコートで、しっかりとした長い直毛の上毛と、柔らかく短い密生した下毛で構成されています。首の周り(メーン)や胸元(フリル)は特に毛量が豊富でフサフサしています。
毛色
セーブル
クリアなものか、あるいはシェードのあるもの。色は薄いゴールドから濃いマホガニーまでで、色調は鮮やかです。ただしウルフセーブル(シルバーがかったグラデーションのような色)やグレーは好ましくありません。
トライカラー
ボディはブラックで、濃いタン・マーキングが好ましい。
ブルーマール
きれいなシルバー・ブルーで、大理石のようにブラックが散らばっています。濃いタン・マーキングが好ましいのですが、なくても欠点とはみなされません。大きなブラックの斑やあせた色が見られるのはもっとも好ましくありません。全体的な基本の色調はブルーです。
ブラック&ホワイト/ブラック&タン
これらも認められている毛色です。
以上の毛色は、ブラック&タンのものを除き、ブレーズ(目の間から頭部に向かう白線)、カラー、胸、フリル、脚、尾先にホワイト・マーキングが見られます。これらの部分の全て、あるいはいくつかの部分にホワイト・マーキングが見られるのが好ましいのですが、なくても欠点とはみなされません。
どんな毛色でも、ボディの白い斑は極めて好ましくありません。
シェットランド・シープドッグの犬種の歴史
厳しい自然環境の中で育まれた、健康的で美しい犬種
イギリス最北端にあるシェットランド諸島が原産の牧羊犬です。その歴史はきわめて古く、スコットランドの牧羊犬の歴史に匹敵するものと思われています。一説によるとシェットランド・シープドッグは、このシェットランド諸島にもともといた犬たちと、近隣のスコットランドにいたボーダー・コリーの先祖といわれる犬(船による交流により、この地に持ち込まれ小型の家畜の番犬をしていた)、そして、クジラ漁のため北海へきた漁師が連れていたサモエドなどのスピッツ・タイプの犬との混血でできた犬に、さらにイギリスに持ちこまれてからラフ・コリーと交配して作出されたと伝えられています。
シェットランド諸島は荒涼とした島で、動物も植物も通常の大きさにならないのがこの島の特徴です。そのため犬たちも長い年月の間に、小型化したと考えられています。イギリス本土には、19世紀の終わりごろに紹介され、1909年に登録が認められるようになりました。当初は作業犬タイプとショータイプの二通りの犬がいて、大きさなども一定していませんでした。体高に厳しい規定があるのはそういった背景のためです。犬種名は当初「シェットランド・コリー」としていたものの、コリー・クラブからの反対を受け、「シェットランド・シープドッグ」となりました。日本に初めてシェルティーが持ち込まれたのは、昭和30年(1955年)頃のことです。
その後、昭和32年(1957年)にテレビで放送された「名犬ラッシー」で一躍コリーブームとなりましたが、日本の住宅事情により大型犬のコリーよりも小型のシェルティーが注目されるようになりました。その後も何度かテレビや映画で放送されたこともシェルティーの人気を後押ししました。
一般外貌
ゴージャスで美しい被毛と優しい顔立ちの最強コンビ
優美でエレガントといった言葉がよく似合う、小型で長毛の牧羊犬です。粗雑さや荒々しさといった印象は全くありません。ボディラインはバランスが取れており、滑らかで長い被毛が体全体を覆っています。特に首の周りや顎の下や胸元の被毛は豊富でボリュームがあります。穏やかで優しい表情もこの犬種の魅力をぐっと引き立てています。
シェットランド・シープドッグの性格
表情からにじみ出る優しさと知性は本物。ナイーブなところも受け止めて
明るく温厚で、飼い主に対して忠実で愛情深く接します。感受性が強く繊細で、その場の状況を判断できるような知性をもつ賢い犬のため、トレーニングもしやすいといわれます。一方で牧羊犬時代の資質からか警戒心が強く、他人に対しては打ち解けにくく素っ気ないところがあります。また、牧羊犬の仕事においても、吠えることで羊を誘導したり、吠えて何かを知らせたりするタイプであったため、基本的に吠えやすい性質があります。
毎日の暮らし
家族思いの性格と高い運動能力が見事にマッチ
聡明で家族に対し一途な心をもち、優しい気持ちは家族に対してだけではなく、親しい人たちにも向けられます。しかもシェルティは学習能力が高く従順です。そして、牧羊犬として高い運動能力を持っています。つまり、トレーニングのしやすい犬種なのです。遊びが大好きなので、トレーニングに遊びの要素を盛り込むようにしてあげましょう。運動不足だったり、コミュニケーションが不足したりすると、ストレスがたまってしまい必要以上に吠えたり等の好ましくない行動につながることがあります。
美しい被毛を保つためには、こまめなブラッシングが必須です。柔らかく密な下毛は絡みやすく、一見するときれいなようにみえても、根本で束になって毛玉になっていることがしばしばあります。毛玉は見た目だけの問題ではなく、皮膚炎の原因になったり、ひどくなるとつれて痛みが出たり動きを妨げたりすることにもなります。ブラッシングを嫌いにならないように、慣れるようにトレーニングすることも大切です。なお、トリミング犬種ではありませんが、毛が伸びるとお尻の周りや足周りのケアがしにくくなったり、毛のせいで全身の状態が確認しずらくなるため、部分的にカットするとよいでしょう。
気を付けたい病気には、コリー系の犬種にみられる「コリー・アイ」があります。これは、この系統の犬種にみられる遺伝性の眼疾患の総称で、視力障害や失明に至るケースもあります。また、遺伝的な素因が関連しているとされる「股関節形成不全」や「甲状腺機能低下症」といった疾患も挙げられます。さらに、牧羊犬には「MDR1遺伝子の異常・欠損」が多いとされています。 MDR1とは薬剤の代謝に関係する遺伝子で、これに異常が起きると、薬剤をうまく代謝できなくなってしまいます。代表的なものとしては、フィラリア駆除薬として一般的に使用される「イベルメクチン」があります。そのため、コリー種のフィラリア予防薬については、獣医師に相談する必要があります。
上記の様々な疾患ついてはそれぞれ対処方法が異なりますので、気になることがあれば獣医師に相談しましょう。
※参考資料 一般社団法人 ジャパンケネルクラブ 犬種標準より
Contributor Bio
高橋智司
編集責任者: 高橋智司
アソシエイト ディレクター 獣医師
プロフェッショナル獣医学術部
日本ヒルズ・コルゲート株式会社