
犬のふらつきは前提疾患の前兆か。原因や治療含め解説
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老犬に起こる症候群と聞くと、白髪が出て来た頃や若々しい活力を失い始めた頃に起こるものと思われるかもしれません。実際にこの現象が指しているのは、犬の生涯のどの時期にも起こり得る特定の病態です。この記事を読んで、正式には前庭疾患と呼ばれるこの病態と、愛犬がこれにかかったかもしれないときに注意するべき徴候、原因、治療や家庭でできるサポート方法について学んでください。
老犬に多い前庭疾患とは?
米国前庭疾患協会*¹によると、『老犬の前庭症候群』は、一般的にイヌ特発性前庭疾患と呼ばれる平衡感覚異常を指す名称です。この病態は高齢の老犬に多く見られますが、あらゆる年齢の犬、猫、人、および複雑な内耳系を持つその他の種に起こり得ます。 メルク獣医学マニュアル*²の図に示されているとおり、前庭系は平衡感覚を制御する内耳の一部です。この器官に異常が生じると、犬はめまいを覚え、まっすぐ歩くことが難しくなり、よろけたり、ふらつくといった行動が見られるようになります。
前庭疾患を患った犬に見られる徴候
Wag!*³は、この症候群の始まりに気付くことに役立ついくつかの徴候を教えてくれています。前庭疾患でよく見られるふらつき、くるくる回る、よろめくといったもの以外にも以下のような徴候がありますので、注意しましょう。
- 顕著な頭位傾斜(捻転斜頚)
- つまずく、ふらつく、よろける
- 足を大きく広げて立つ
- 飲食したがらない
- 協調運動の欠如
- 倒れる
- 右、左どちらか1方向にくるくる回る(旋回)
- 悪心、嘔吐
- 目が覚めているときの眼の小刻みな動き(眼振)
- 床やその他の硬い面の上で眠ろうとする
前庭疾患の症状は一時的ですぐに治る?
幸いなことに、この病態が犬にとって危険なものではなく、痛みもありません。とはいえ、めまいは犬に多少の不快感や乗り物酔いをもたらすかもしれません。病態は2~3週間以内に自然に治まることが多く、そのため獣医師は多くの『経過観察』を勧める、とアニマルウェルネスは言っています。
しかし同じ状態が長く続いたり、悪化するようであれば、精密検査を受ける必要があります。これらの前庭疾患の症状は、脳卒中や脳腫瘍といったより深刻な病気の徴候の可能性もあるためです。そのため、平衡感覚に突然問題が生じたときは、できるだけ早く獣医師に相談することが最善です。
犬の前庭疾患の原因
前庭疾患の原因は様々ですが、主に3つに分類されます。
特発性前庭疾患
特発性という単語は、発生原因が分からないことを意味します。ほとんどの前庭疾患のケースがこの特発性にあたります。
末梢性前庭疾患
中耳炎、内耳炎などの病気が神経障害を引き起こし、前庭疾患の原因となることがあります。
中枢性前庭疾患
脳の炎症、腫瘍、脳梗塞など脳内の前庭系に関連する部位の異常や病気が前庭疾患の原因となることがあります。
前庭疾患を発症しやすい犬の傾向
Embraceペット保険*⁴は、ドーベルマン・ピンシャーやジャーマン・シェパードなどのいくつかの犬種は遺伝的にこの病態を起こしやすく、子犬のときから症状が現れることもあると報告しています。
前庭疾患の検査方法
前庭疾患かどうか調べるにはどのような検査が必要なのでしょうか。前庭疾患で見られる症状が三半器官の異常によるものなのか、それとも脳の異常や他の病気によるものなのかを見極める必要があり、以下のような検査を行うことが一般的です。
CT検査・MRI検査
内耳、脳内の異常を確認します。
耳鏡検査
外耳から鼓膜を検査し、外耳炎、鼓膜の破れを確認します。
歩行検査
平行感覚を確認します。
神経学的検査
どの神経に障害が発生しているかを確認します。
血液検査
神経症状を引き起こす可能性のある腎臓、肝臓の病気を確認します。
前庭疾患の犬の治療と回復
悪心と嘔吐が続くような場合、獣医師は制吐薬(吐き気止め)を処方してくれます。犬が水飲みボウルにたどり着けず、自力で水を飲むことができないときは必要に応じて静脈内輸液も検討してくれるでしょう。残念ながら、前庭疾患への対処法には、犬が回復してくれるのを待つしかない面もあります。
家庭でできる前庭疾患の犬のサポート
Dogster*⁵は、家庭で役立つ、めまいの症状がある犬のためにヒントを教えてくれています。まず、頭を枕で支えるなど、快適に休める場所を用意して、届くところに水飲みボウルを置きましょう。また、ヨロヨロしている犬は倒れたり物にぶつかったりしやすいので、階段は閉鎖して、家具の鋭い縁にも当たらないようにしておきましょう。犬自身は自分に起こっているこの症状を理解できず、ただ恐ろしく感じてしまうこともあります。いつもより多くなでてあげたり、あるいはただそばにいるだけでも、必ず安心してくれるはずです。
前庭疾患からの回復を早めるためのヒント
前庭疾患協会は、犬を抱いて運びたい、という衝動は抑えるよう勧めています。それは病態を長引かせることになるからです。犬が自分で動き回ることが多いほど、内耳が自然に回復する機会も多くなります。犬が周りをよく見ることができるように十分な照明を施すことは、犬の回復に役立ちます。
重要なのは、愛犬が突然、年齢にも関わらずこの老犬に起こる前庭疾患の症状を示したとしても、パニックにならないことです。もちろん獣医師に診せるべきではありますが、おそらく2~3日で良くなって、またいつもの元気で活発な自分を取り戻してくれることでしょう。
参照先:
*1 https://vestibular.org/sites/default/files/page_files/Vestibular%20disease%20in%20dogs%20and%20cats.pdf
*2 https://www.merckvetmanual.com/dog-owners/ear-disorders-of-dogs/ear-structure-and-function-in-dogs
*3 https://wagwalking.com/condition/vestibular-disease
*4 https://www.embracepetinsurance.com/health/vestibular-disease
*5 https://www.dogster.com/ask-the-vet/peripheral-vestibular-disease-in-dogs