
犬の糖尿病について
ペットに最適なフードを見つけましょう。
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糖尿病とは、摂取した食事をエネルギーに変える、という体のもっとも基本的な機能が障害されてしまう病気です。そして残念なことに、犬の糖尿病は年々増加しています。Banfield動物病院*¹ の報告では、2006年から2015年にかけて症例数がおよそ80%も増加しています。
「クリニカルベテリナリーアドバイザー*²」の著者Etienne Cote獣医師によると、犬の糖尿病の多くは、インスリン依存性の糖尿病だと紹介しています。これは血糖値を下げるためのインスリンというホルモンが膵臓から出なくなり、不足してしまっている状態です。人の糖尿病には1型と2型という分類があり、犬は1型に、猫は2型に類似した病態であることが知られています。
犬の糖尿病の原因
人の1型糖尿病では、膵臓のインスリンを産生する細胞が破壊されてしまい、インスリンが出にくく、あるいは出なくなってしまうことで、血糖値を適切に調節することができなくなります。犬でも、遺伝的な素因や膵炎、免疫等の関与によって、膵臓からのインスリンの分泌が不足してしまうと考えられています。
どのような機序で犬の糖尿病が起きるのか、正確にはわかっていませんが、いくつかのリスク因子が報告されています。メルク獣医マニュアル*³ によると、中高齢の犬で起こりやすく、オスよりもメスの発症率が2倍高くなっています。そういった背景から、遺伝的な素因の関与も原因のひとつとして考えられています。メルク社のホームページには、次の犬種が好発犬種として挙げられています。
- コッカー・スパニエル
- ダックスフンド
- ドーベルマン・ピンシャー
- ジャーマン・シェパード
- ゴールデン・レトリーバー
- ラブラドール・レトリーバー
- ポメラニアン
- テリア系
- トイ・プードル
- ミニチュア・シュナウザー
- キースホンド
- サモエド
その他のリスク因子として、以下が挙げられています。
- 太りぎみや肥満
- 膵炎が再発しやすい
- 未避妊のメス
- クッシング症候群や先端巨大症などのインスリン抵抗性を来す疾患
- ステロイドやプロゲステロン等の特定の医薬品の長期間の投与
犬の糖尿病の症状
糖尿病の犬は、水を飲む量や尿量が増え、食欲も増えることがよくあります。そのほかに次のような症状がよく認められます。
- 疲れやすい
- 筋肉が落ち、体重も減少する(肥満の場合もあり)
- 白内障
- 足が弱くなる
- 毛づやがなくなる
糖尿病は、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)という急性の合併症を起こすこともあります。ケトアシドーシスを起こした犬は、重度の代謝障害により衰弱し、元気消失や食欲不振、脱水や下痢などが認められます。これらの症状に気付いたら、すぐに動物病院を受診してください。
犬の糖尿病の診断
もし、上記のような症状に気づいたら、すぐに動物病院で検査を受けてください。動物病院では、今までの経緯や過去の病歴などを確認し、身体検査や血液検査、尿検査などを実施して、糖尿病かどうか、そしてその重症度を診断します。
犬の糖尿病の治療
人でも犬でも、糖尿病の治療の目標は、高血糖に起因する臨床症状を緩和して、合併症を予防し、生活の質を改善することです。血糖値がなるべく上下しないように低血糖にならず、かつ尿糖が出ない範囲で維持します。このような管理によって腎不全 (糖尿病性腎症)といった糖尿病の合併症のリスクを低下させることができます。
犬の糖尿病の治療の基本はインスリンの投与と規則正しい食事です。インスリンを毎日投与できるように、しっかり食事を食べられることが大切です。糖尿病の管理を目標とした療法食もありますが、現状の犬の体型や状態によって推奨される食事内容が異なるため、もし愛犬が糖尿病と診断された場合には、愛犬の状況に応じた適切な食事について獣医師に相談してください。一般的に食物繊維は糖が体に吸収されるのを遅らせるのと同時に、満腹感を得られやすくします。そのため、糖尿病向けの療法食には食物繊維が強化されています。太りぎみや肥満の場合には、このように食物繊維が強化され、かつ脂肪を制限した食事が推奨されるでしょう。
必要なインスリンの量は犬によって異なるため、獣医師は血糖値が安定して管理できるようになるまで、インスリンの種類や用量、投与頻度を変えて調節していきます。取扱いや保存、投与の方法もインスリンの種類によって異なりますので、獣医師の指示に従ってください。犬に注射を打つことに最初は多くの飼い主さんが戸惑いますが、意外とご自身が思っているよりも早く慣れてしまうことが多いように思います。
糖尿病の治療が始まったら、血糖値のチェックのため定期的に動物病院に通院する必要があります。最初のうちは、インスリンの投与量が適切か確認するため頻繁に通院する必要があるかもしれませんが、安定してきたら、通院間隔は少しずつあけることができるでしょう。ただし犬の場合、基本的にはインスリン治療が不要になることはないので、長期的な通院が必要になります。
無理なく治療を続けるために
糖尿病は治療によって安定すれば、治療しながらも今までとあまり変わらない生活を送ることもできます。とはいっても、糖尿病の治療は、飼い主さんやご家族へ負担は少なくありません。きちんと食事を食べているかの確認とインスリンの投与、尿量や飲水量の確認と、体重のチェック、犬の様子の確認など、普段から気をつけるべきことがたくさんあります。治療を続ける上で、大変なことや困ったことなどがあれば、遠慮なく獣医師や動物病院のスタッフに相談してみましょう。無理なく治療を続けるためのベストな方法を、一緒に相談してくださいね。
参照先:
*1 https://www.banfield.com/
*2 https://www.clinicalvetadvisor3.com/
*3 https://www.merckvetmanual.com/endocrine-system/the-pancreas/diabetes-mellitus-in-dogs-and-cats
Contributor Bio

ラシ・シャイブル獣医師
小動物獣医師で獣医療ライターとしても活躍中。ペットの飼い主向けの熱心な啓発活動により多数の賞を受賞し、遠隔獣医療の第一人者としても知られる。