猫の心臓病について

執筆: パティ・クリー獣医師
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ペットに最適なフードを見つけましょう。

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猫は、痛みがあったり気分が悪かったりしても、弱っていることをなんとか悟られないように隠そうとする、野生の本能的な性質を残している動物です。そのため、なんらかの病気であったとしても、そういった調子の悪さを明らかに見せることはあまりしてくれません。猫の病気にもさまざまなものがありますが、その中でもことさら心臓病についてはこのことが当てはまるといえるでしょう。

現代のイエネコの先祖である野生の猫たちは、捕食者に食べられることを恐れ、弱さを外に出さないようにしていました。この本能は、今の時代の猫の飼い主さんにとっては、特に、猫を飼うことに慣れていない新米の飼い主さんにとって、かえって猫の健康管理や病気の早期発見を難しくしています。体調の変化は常に気を付けなければならないことですが、では心臓の健康の確認のためにはどんなことに注意したらいいか、ご存知でしょうか。

Person's hand and cat's paw together make heart shape.

心臓は、全身の血管に血液を送り出して酸素を届けている、筋肉でできたポンプで、この働きや役割は人も猫も同じです。心臓が必要に応じて効率的にポンプの役割を担えている状態がいわゆる健康な状態で、この機能が低下すると身体が酸素欠乏に陥るリスクが生じます。

猫の心臓病とそれに関連する変化は、残念ながら非常に分かりにくく、全く気づかないうちに徐々に進行する傾向があります。病態が進行するまでは、ほとんど症状が認められません。人間で心臓病というと、だるくて疲れやすい、動機や息切れがする、といった症状がよく知られていますが、これと同じことが猫で起こっていたとしても、症状として分かりやすく示されることが少なく、気づきにくいのです。病状が進んでくると、寝てばかりいる、呼吸が苦しそう、咳をする、食欲が落ちてきたなどの症状が認められることがあります。

それでも、飼い主さんが病気に関して基礎知識を学ぶことと、信頼できるかかりつけの動物病院の存在によって、この病気に対してもできることがあります。

  • 猫の心臓病のサインを見つけること
  • 心臓病による症状の発現を遅らせること
  • 症状が進行しないように最善をつくすこと

猫の心臓病とは

コーネル猫保健センター によると、猫で知られている心臓病には多くの種類があるものの、一番多いのは心筋症と呼ばれるものです。心筋症とは心臓の機能障害とともに起こる心筋の病気で、猫の心筋症では代表的な3つのタイプが知られています。いずれのタイプにしても、病態が進むことによって左心房に圧がかかり、結果、肺に液体が溜まって、うっ血性心不全と呼ばれる状態になります。

このコーネル保健センターによると、心筋症の中では肥大型心筋症というタイプが最も多い、と紹介しています。これは遺伝性の関与が疑われているものの、原因は解明されていません。あらゆる年齢の猫が罹患する可能性がありますが、比較的高齢の猫で診断されることが多いようです。また、拡張型心筋症というタイプでは、タウリンというアミノ酸の欠乏が発症に関連しているとされているため、魚だけの食事などの場合に、この病気のリスクが高まります。

また、高齢の猫では、心室の内膜や心筋に徐々に瘢痕組織が蓄積してしまう拘束型心筋症が発生することがあります。これは心筋症の症例の約10%に相当します。なお、同センターによると、猫での先天性の心疾患は比較的まれで、発生は子猫の1~2%に過ぎない、説明しています。

maine coon cat looks off into distance.

猫の心臓病に関するFAQ

リスク因子は何ですか

猫の心臓病では、遺伝が大きく関与していると考えられています。アメリカ獣医内科学会によると、猫の肥大型心筋症では、ペルシャ、ラグドール、メイン・クーン、アメリカン・ショートヘアの品種で遺伝性の関与が疑われていますが、品種に関わらずすべての猫がこの疾患を発症する可能性があります。

栄養が不完全な食事内容(特に魚だけに頼ったもの)は、拡張型心筋症のリスク因子になります。愛猫が確実に栄養バランスの取れた食事 がとれているか、獣医師に確認しましょう。

猫の心臓病は予防できますか

拡張型心筋症についてはタウリンが不足しないようにすることですが、いずれにしてもバランスのとれた総合栄養食のキャットフードを与えることは、猫の健康の基本になります。残念ながら猫の心筋症については、原因がはっきり解明されているわけではないので、今のところ予防方法も分かっていません。

運動は心臓の健康にどのように役立ちますか

一般的に、適度な運動すると心臓を含め全身の血液循環がよくなり、健康維持に役立ちます。さらに、健康的な体重を維持することは、心臓病に関わらず、健康のためにはとても大切なことです。肥満が直接心臓病の原因になるというわけではありませんが、肥満になればそれだけ多くの血液を循環させなければならないので、心臓に負担がかかることになります。つまり、心臓にトラブルがある場合には、さらにその病態が進行してしまう可能性があります。体重維持のために、毎日時間を取って猫と遊んであげてください。猫の健康体重を維持して心臓の健康を増進するためには、一日数分の運動で十分です。

栄養は心臓病の予防に関係しますか

前述のタウリンを除いて、心臓病の予防のための特定の食事プランというものはありません。猫の必要なカロリーに合わせた(健康体重を維持できる)量のバランスの取れた総合栄養食を与えることが基本になります。ただし、治療が必要になったときは、治療をサポートするために猫の食事変更が必要かどうか、獣医師に相談してください。

ほかに知っておくべきことがありますか

猫の心筋症の一部では、ほかの疾患や病態から二次的に起こる場合があります。心筋肥大の原因となる疾患・病態としては、甲状腺機能亢進症や高血圧症、貧血などがあり、これらは心臓の基本的な働きに影響を及ぼす可能性があります。獣医師は、心筋症を診断する際にこのような疾患が併発していないかも確認します。このように病気が併発しているケースでは、一方を治療すると時として他方も軽快することがあります。

猫の心筋症が進行したケースで問題になるのは、うっ血性心不全に加えて、血栓症があります。これは、病態が進んで心臓内での血流が悪くなることによって、血が固まって血栓ができ、それが大動脈を介して細い血管に詰まってしまうというものです。特に後ろ足の左右の動脈の分岐部分に詰まることが多く、後肢への血流を遮断して、後肢が冷たくなる、麻痺する、痛がって足を引きずるなどの症状が現れます。このような症状に気づいたら、すぐに動物病院を受診してください。

猫にも心臓の定期検診を

このように、猫の心臓病は初期の段階では非常に気づきにくく、症状として気づいたときには、かなり進行しているケースが多いのです。また、猫の心臓病では心雑音が聞こえないケースがあったり、レントゲンや心電図でも見つけにくいケースがあるなど、犬とは状況が異なるところがあります。心臓病に関わらず、定期的な健康診断は大切ですが、猫の心臓検診については一般的な検査に加えて、心臓の超音波検査など心臓に特化した検査も併せて受けるようにしてください。

猫を動物病院に連れて行くのは大変な場合もあることは私たち獣医師側も皆理解していますが、それ以上に猫ちゃんの健康を保つうえで大切な情報やサポートを動物病院は提供しています。心臓病については病院の検査なくして状況を確認することはできませんし、早期に発見することでその進行を遅らせて、苦痛を感じることなく暮らすための治療を行うことができます。

Contributor Bio

パティ・クリー獣医師

ウェルズリー・カレッジとペンシルベニア大学獣医学部をともに優秀な成績で卒業。VMD/MBA二重学位プログラムの一環としてウォートン・ビジネススクールでMBAを取得。現在はフロリダ州マイアミのサンセット・アニマル・クリニックのオーナー。さらに、大の読書家でもあり、熱烈な編み物マニア、そして熱狂的なホットヨガファン、音楽マニア、市民ランナー、飽くなき美食家の顔ももつ。犬3匹、数え切れないほどの猫、2頭の保護ヤギ、そして愉快な雌鶏たちとサウスマイアミに居住。

著作は DrPattyKhuly.com と SunsetVets.com に掲載。

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