猫の食欲が旺盛すぎる…対策と注意したいこと

執筆: ラシ・シャイブル獣医師
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ペットに最適なフードを見つけましょう。

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顔を合わすたびに、ニャーニャーとごはんを要求してくる、食欲旺盛すぎる猫ちゃんにお困りの飼い主さん、いませんか?猫の健康のために、適切でバランスのとれた食事を与えているのに何が不満なのか・・・、と疑問に思っているかもしれませんね。今回は猫の食欲に関連する行動パターンや注意したいことについて考えてみましょう。

なぜ常にごはんをほしがる?

痩せ体型で、ウンチもコロコロで量も少ない、ということであれば、もしかしたらそもそもの食事量が足りていない可能性もあります。市販のキャットフードには通常、パッケージに給与量の目安が記載されていますが、これはあくまで目安であるため、個体差が大きいものです。猫の代謝は、年齢、体重、避妊去勢の有無などの個々の状態による影響を受けます。猫の理想体重と食事の給与量について獣医師に相談してみましょう。

Beautiful feline cat eating on a metal bowl. Cute domestic animal.

食事量が適切なのに、さらに欲しがる場合には、退屈がストレスとなって過食になっている、退屈なのをアピールしている、アピールに応じてもらえた経験からさらに要求しているなどが考えられます。ただし、糖尿病や甲状腺機能亢進症といった病気によって食欲が亢進することもあるので注意が必要です。食欲が急に増えた、食べているのに太らないなど、気になる様子があれば、早めに動物病院を受診しましょう。

健康的な食欲とは

猫は起きている時間にちょこちょことものを食べる習性があります。つまり、一回の量よりも回数が多いほうが満足するようです。健康な食欲を維持できる猫ちゃんであれば、猫が好きなときに食べられるようにしていても、適正体重を維持できるかもしれませんが、自分で食事量を調節することができず、結果的に食べ過ぎになってしまうことも多いのです。猫の肋骨が触ってもわからない、または、上からみたときに腰のくびれがない場合は、肥満気味の可能性があり、その場合、関節疾患や糖尿病などの好ましくない健康トラブルにつながることがあります。

体の大きさや活動エネルギーのレベル、健康状態、年齢などによって代謝も変化し、同じ猫でも年齢とともに食事量が変わることもあります。動物病院で愛猫の理想体重と1日に摂取すべきカロリー量を確認してもらい、適切な食事量を把握しておきましょう。

Food Puzzle for Cats

退屈による食べ過ぎを防ぐには

空腹が満たされたらそれ以上は食べない、という自己調節ができる猫ちゃんがいる一方で、あればあるだけ食べてしまう猫ちゃんもいます。とくに室内で飼育されている猫ちゃんの場合、刺激が少なく、暇すぎて過食になってしまうパターンもあるようです。あたりまえですが、お腹が空いていないのに食べる状態を繰り返していれば、肥満、変形性関節症、尿路疾患、糖尿病などのさまざまな病気を引き起こしかねません。コーネル大学猫健康センター*¹ によると、肥満の猫は健康な体重の猫と比べて中年期(6〜12歳)に死亡する確率が2倍高いそうです。このことを踏まえると、(過食になりやすい猫ちゃんは)フードを置きっぱなしにはしないこと、そして何らかのアクティビティで忙しくいてもらうことは、飼い主さんができるよい方法です。退屈でアピールしてきたときにも、おやつではなく、一緒にアクティビティで楽しめる方がより健康的ですね。

フードパズルは元々動物園で使用されていたものですが、猫に刺激を与え、自然の中での猫の本来の環境を模倣することができます。働かないと食物を得ることができないような状況を作ることで、身体的な健康状態を改善するだけでなく、不安症や破壊行動などの退屈から生じる好ましくない行動問題を減らすこともできます。国際猫医学会と全米猫獣医師協会が発行する学術誌*² によると、猫が取り組みやすい角の丸いフードパズルが最適だそうです。知的トレーニングと身体的な運動を兼ねた、猫の狩猟本能を刺激するためのフードパズルが多数市販されています。

食欲が増える病気

注意したいのは、病気によって食欲が亢進することがあることです。急に食欲が増えた、食べているのに太らない、あるいは食べているのに痩せてきた、など気になることがある場合には獣医師に相談しましょう。

  • 甲状腺機能亢進症:血液中の甲状腺ホルモンが過剰になる病気です。食欲は増えているのに体重が減っていくのがこの疾患の典型的な症状です。筋肉量の低下や多飲多尿、嘔吐、下痢といった症状や、神経質になる、攻撃的になる、よく鳴くようになるといった行動の変化が現れることもあります。
  • 糖尿病:多飲多尿がよく知られている症状ですが、食欲の変化や体重の変化、毛づやが悪くなる、といったことで最初に気づかれる場合もあります。
  • 内部寄生虫:内部寄生虫とは、消化管などの体内に寄生する寄生虫のことです。食べているのに体重が増えない、あるいは痩せてくるなどの症状のほか嘔吐や下痢などが見られることもあります。ウンチの中に虫が出てこないからといって、消化管の中に寄生虫がいないというわけではないため、疑われる場合には動物病院で糞便検査をしてもらいましょう。

食欲が増える、ということではないしても、食べているのに痩せてくる場合には、何らかの消化器疾患や、慢性腎臓病、がんなどの病気の可能性も考えられます。体重の変化は見た目だけでは分かりにくいため、定期的にチェックするようにしましょう。

旺盛な食欲には回数で対策を

よく食べて元気なことは大変喜ばしいことですが、やはり適正な体重を維持することは健康で長生きしてもらうためにとても大切なことです。猫ちゃんの適正な食事量を把握して、決められた量だけを与えるようにします。できるだけ回数を分けて与えることで、猫ちゃんに満足してもらいましょう。

退屈アピールがかわいくて、ついつい何かあげたくなってしまうかもしれませんが、一度あげてしまうとまたさらに要求してきます。かまったり遊んであげることでもアピールに応えることもできますから、猫ちゃんの好みのアイテムをいろいろと試してみるのもよいですね。もちろん体重チェックも忘れずに、気になることがあれば、必ず動物病院を受診するようにしましょう。

参照先:
*1 https://www.vet.cornell.edu/departments/cornell-feline-health-center/health-information/feline-health-topics/how-often-should-you-feed-your-cat
*2 http://foodpuzzlesforcats.com/wp-content/uploads/2016/08/JFMS-Accepted-Version.pdf

Contributor Bio

Dr. Laci Schaible

ラシ・シャイブル獣医師

小動物獣医師、獣医学ジャーナリストであり、業界の思想的リーダー。テキサスA&M大学にて獣医学学位を、ウェイク・フォレスト大学にて法学修士号を取得。