執筆: エマ・ミルン獣医師(BVSC、FRCVS)
2025年7月11日
所要時間: 10

若い親猫に抱かれているオレンジ色の子猫。子猫は警戒心が強く、健康的な体重である。

猫に人の食べ物を与えても大丈夫?

動物に食事を与えることは、人間と動物の絆の最も重要な要素のひとつであり、与えたものを喜んで食べている姿を見るのは、本当にうれしい気持ちになりますよね。猫がすりすりとよってきて訴えてくると、ついつい何かあげたくなってしまいますが、猫には人間の食べ物を与えても大丈夫なのでしょうか。あるいは、どんなものであれば与えてもいいのでしょうか。

猫の成長には人間の食べ物はだめ?

成長期は、あらゆる動物の一生の中で非常に大切な時期であり、最適な栄養が最も重要となる時期のひとつです。健康的な成長のペースを安定的に保ち、丈夫な骨や歯の形成、そして脳や五感の健やかな発達のためには、この時期に適切な栄養をしっかりと摂ることが不可欠です。

このような成長期の栄養を人間の食べ物で代用することはできません。塩分や脂肪分が多すぎたり、必要な栄養素が不足していたりと、子猫の体には負担がかかる可能性があります。そのため、子猫には必要な栄養がバランスよく含まれている、総合栄養食の子猫用フードを与えましょう。発育ステージに合った総合栄養食であれば、ウェットフードでもドライフードでも、その組み合わせでも構いません。

子猫には離乳後フードが食べられるようになったら、できるならウェットフードもドライフードも、そしてフードもいくつかの種類を試しながら与えてみるのは良い方法です。猫は幼い頃の食事の経験が後々の食の好みに大きく影響します。早い段階でさまざまな食感や味を経験させ、慣れてもらうようにしましょう。

猫のおやつなら人間の食べ物を与えてもいい?

猫のおやつには、人間の食べ物ではなく、猫に与えることを前提として作られた猫用のおやつを選ぶのが一番安心です。人間の食べ物には塩分や脂肪分が多く含まれていたり、猫にとって有害な成分が入っていることもあるため、たとえ少量でも注意が必要です。

また、おやつは1日に必要な総カロリー摂取量の10%を超えないようにコントロールすることが大切です。与えすぎは肥満の原因になるだけでなく、栄養バランスが崩れ、健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。かわいくてついあげたくなっても、人間の食べ物ではなく、栄養設計された猫用のおやつを適量・適切に与えましょう。

猫に人間の食べ物をおやつとして与えたい場合は?

どうしても人間の食べ物を猫のおやつとして与えたい場合は、猫が食べても問題ない安全な食材を選ぶことが重要です。

  • 調理した肉:猫は完全な肉食動物であり、猫にとっての必須栄養素を全て摂取するためには肉を食べる必要があります。子猫用フードには必要なものはすべて含まれていますが、ちょっとしたおやつとして、調理した鶏肉や豚肉、牛肉を少しあげるくらいなら問題ありません。ただし、脂身の多い部分や皮は、消化不良を引き起こす可能性があるため避け、骨や生肉は決して与えてはいけません。また、ハムのような加工肉は、塩分が高いので避けましょう。
  • 魚:特有の匂いを好む猫もいるでしょう。魚は一般的に栄養価が高く、肉と同様に少量与えることは問題ありません。ただし、猫に生の魚は避け、必ず骨を取り除き、調理して与えましょう。
  • 卵:豊富なたんぱく質源であり、猫が食べても安全です。スクランブルエッグやゆで卵など、必ず加熱してから与えるようにします。また、多くの猫は乳製品の消化が得意ではないので、調理の際バターや牛乳はいれない方がよいでしょう。
  • 果物・野菜:猫は甘みを感じることができないとされています。また食性的に野菜は必要としません。そのため、一般的に野菜や果物には興味を示さないことが多いかもしれません。それでも、エンドウ豆、ブロッコリー、ニンジン、カボチャ、バナナ、メロン、ブルーベリーは猫に与えられる食材として知られています。
  • 全粒穀物:オーツ麦や米などの穀類は猫に与えても問題ありません。とくに精製前のものは栄養価が高いとされています。

猫に危険な人間の食べ物は?

このように、猫に与えて問題のない食材もありますが、人間の食べ物の中には、猫に与えていけない危険なものも多くあることを忘れてはいけません。たとえば次のような食品には注意してください。

  • ブドウとレーズン

  • 玉ねぎ、エシャロット、ニンニクなどネギ属の植物

  • キシリトール甘味料を含む食品

  • アルコール

  • チョコレート

  • カフェイン

  • ナッツやそのほかの種

  • 乳製品:中には乳製品を消化できる猫もいますが、多くは十分に消化できないと考えられます。猫にあえて与える必要はありません。

子猫の食事について覚えておきたいこと

子猫の健康的な成長のために必要な、最適な栄養について覚えておくべき大事なポイント:

  • 子猫の1日に必要なカロリー摂取量の90%以上を、バランスの取れた子猫用の総合栄養食から摂取するようにします。

  • できれば、ウェットフードとドライフードの両方を与えましょう。

  • おやつは子猫に必要な1日のカロリー摂取量の10%を絶対に超えないようにしましょう。

  • 人間の食べ物には安全なものも多いですが、安全でないものも多いのです。少しでも不安がある場合は与えてはいけません。

  • 子猫を健康的な体型に保ち、獣医師とともに成長を見守りましょう。

かわいい子猫といつまでも幸せな時間を過ごしてください。長く素敵な友情に乾杯!

監修:ハイン・マイヤー博士(DVM、PhD、Dipl-ECVIM-CA)

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