子猫の社会化のためのヒント

執筆:
所要時間:

Kitten with owner image
猫というと、すぐ隠れてしまうコもいれば、誰にでもスリスリと寄ってくるコもいたりと、性格は様々ですよね。もちろん、元々の性格もありますが、この猫の人やそのほかの動物に対する態度の違いは、幼少期の"社会化期"での過ごし方が大きく影響します。猫の社会化期は生後2週間から7週間頃を中心に16週齢頃までと短く、この時期に受けた様々な刺激や経験に対して、ふさわしい態度や行動を理解し学んでいきます。

子猫の幼少期の経験

本来、子猫は母猫や同腹の兄弟たち、状況によっては周囲の人間と過ごしながら自分以外の他者がいることを理解し、その接し方や力加減の程度などを学びます。

子猫を迎え入れたら、まずできるだけ早い段階から人に触れられることに慣れてもらうようにすること、そして、特定の人しか受入れられないといった状況にならないように、できるだけ多くの人と接する機会を作ることが大切です。また、人間と暮らしていく上で当たり前の日常生活の光景や匂い、音などについても、徐々に慣れてもらいます。極端なことを言えば、この時期に人間との接触が全くないまま成長した成猫は、人間のそばでいわゆる飼い猫として飼育することは非常に困難になります。

譲渡される前に、子猫がすでに多くの人間と接触した経験があると、いろいろなことを経験させたり、しつけたりしやすくなります。譲渡のタイミングは、様々な状況があるとは思いますが、子猫の発育状況や社会化期を考慮すると、可能であれば8週齢以降が好ましいでしょう。

子猫にとって初めての場所に連れていかれることは、緊張も負担も大きいものです。初めて子猫を連れて帰ったら、まずは準備した居場所やトイレの場所を子猫に紹介します。子猫のいる場所は静かで落ち着ける場所を選びます。そして、やさしくゆっくりと、落ち着いた声で話しかけたり撫でたりしてあげましょう。落ち着いて、体調も問題ないことを確認したら、猫用おもちゃなどを上手に使った遊びを取り入れてみましょう。遊びは子猫にとって運動やストレス発散でもあり、飼い主と猫とより良い関係を築くための大事なコミュニケーションでもあります。

人間の子どもと子猫

人間の子どもは、猫にとって予測不能な行動をしたり大きな音を発するといった、苦手なものになり得る要素が多くあります。加えて感染症のことも考慮する必要があります。あらかじめ子猫への接し方について守らなければならないルールを決め、子どもたちにはルールを守ることを約束するようにしましょう。その上で、小さい時からお互いに接していくことは、子猫にも子どもたちにも双方にとってメリットがあります。.

可愛い子猫を目の前にすると、子どもたちが興奮して騒いだり、必要以上にかまったりしてしまうのは無理もないことです。猫と接するときには、大きな声は控え、ゆっくりとした動作を心がけることや、優しく丁寧に扱い、無理やり抱き上げたり、寝ているところを起こしたりしない、など具体的なルールを決めておきます。尚、猫に悪気がなくても、引っ掻いたり噛んだりということもありうるため、慣れないうちは必ず子どもたちと子猫だけで遊ぶということは避け、おとなが見ているようにします。

家族以外の人間と子猫

人間には性別や年齢、職業などによって、その姿形には多くのバリエーションがあります。子猫のうちにいろいろなパターンの"人間"に出会って慣れておくことは、その後の猫の性格形成に良い影響を与えます。ただし、過剰な愛情表現はかえって子猫にとって恐怖となってしまうこともあるため、注意が必要です。

家族以外の人々にできるだけ出会えるような機会を作りましょう。友人に遊びに来てもらうことのほか、キャリーに入れて簡単な外出に慣れるようにするのも一案です。動物病院への通院もしやすくなりますし、いざというときの災害時にも役立ちます。

いろいろ先々のためにやっておきたいと思っても、子猫の体力を常に考慮することを忘れないでください。初めての人たちとの対面は必ずごく短時間に抑えておくようにしましょう。

先住ペットと子猫

先住ペットがいる場合には、まず子猫と引き合わせる前に、お互いが獣医師の診察を受けて、健康状態の確認と、ワクチン接種が済んでいる状態でなければなりません。

猫にとって最も重要な感覚は嗅覚です。そのため、引き合わせる前に、互いの匂いを紹介しておくことは引き合わせをスムーズに行うことに役立ちます。互いに使用していた毛布や布等を事前に嗅がせたり、先住猫をなでて、その手を洗わないまま子猫をなで、またその逆のことをして、匂いを混ぜ合わせるといった方法があります。

初対面の際には、新入りの子猫はキャリーに入れたままにするか、ペットゲート(柵)などで隔てておきます。そして、ゆっくりと(複数いる場合は一度に1頭ずつ)行います。

対面中に先住ペットが少しでも攻撃性のサインを見せたら、すぐ引き離します。対面は短い時間から始めて、様子を見ながら徐々に長くしていきます。受け入れてもらえるまでに時間がかかることもありますが、無理にくっつけようとするなどの焦りは禁物です。お互いに舐めあう、じゃれて遊ぶ、安心して眠るなど、の様子が見られるまでは、目の届かないところで新入り子猫と先住ペットを絶対に一緒にしないようにしてください。なお、ハムスターや魚、小鳥などの小さなペットは、必ず子猫の手の届かないところに置いて安全を確保してください。

猫の分離不安

分離不安とは、依存の強いタイプのペットが、愛着を感じている特定の人(動物)と離れると、その強い不安感から引き起こされる問題行動のことです。

分離不安は犬でよく知られていますが、最近では猫にも起こることが知られています。猫の分離不安で見られる症状には、不適切な場所での排泄、過剰に鳴く、破壊行動、過剰なグルーミング、食欲不振などがあります。これらの症状は分離不安に限っての症状ではないため、心配な場合には外出時の様子の動画を撮影したうえで、獣医師に相談すると診断に役立ちます。

元々甘えん坊で依存が強い性格な上に、飼い主や同居動物が常に居て一人になることがなかったり、常に飼い主に構われているような状況だと、分離不安を起こしやすいようです。子猫にとって安心できる環境を整えたうえで、在宅時の猫とのかかわり方を見直していきましょう。そして、猫が好ましくない行動をとっても決して叱ってはいけません。猫は叱られている意味を理解できませんし、かえって不安を増強させ、問題を悪化させることにもなりかねません。

子猫には、短時間でも子猫が一人になる時間を設けて、"そういうことも普通にある"ことを理解してもらいます。子猫を部屋に残してドアを閉めその場から去ります。その際は静かに何気なく立ち去るようにします。そして2~3分後に部屋に戻りますが、その時、子猫にかまってはいけません。これを何度かやった後、今度は不在時間を徐々に延ばしていきます。おやつを詰めた知育玩具などを利用して、おもちゃに夢中になっている間に行うのも良い方法です。

Contributor bio

高橋智司

編集責任者: 高橋智司
アソシエイト ディレクター  獣医師
プロフェッショナル獣医学術部
日本ヒルズ・コルゲート株式会社

関連記事