獣医師が伝えたい、犬の胃の不調について

執筆: サラ・ウーテン獣医師
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ペットに最適なフードを見つけましょう。

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犬の胃の不調といって思い浮かべるのはどんなことでしょうか。時々胃液を吐く程度で、普段から元気で食欲もあるようであれば、おそらく心配する必要はないでしょう。一方で、嘔吐が頻繁だったり、吐き気があるような気持ち悪そうな様子が続くときは動物病院への受診が必要です。また、犬が誤食や盗食をして想定外のものを食べてしまったときも同様です。

犬の胃の不調を示すサインとは?

犬の胃の不調に関して表れる症状は、その多くは人間が胃の調子が悪いとき、お腹を壊したときに経験するものとよく似ています。代表的なものは以下の通りです。

  • 下痢や嘔吐
  • 食欲不振
  • 疲れやすい
  • 不機嫌
  • おならやげっぷ
  • 発熱
  • 胃の過剰なゴロゴロ音
  • 強ばって背中を丸めた姿勢
  • 前肢を前に伸ばして尾を挙げた姿勢(祈りの姿勢)

胃の不調の原因には、胃そのものが原因となる内因性の場合と、胃以外の原因によって胃の不調が引き起こされる外因性の場合とがあります。内因性の原因としては、いわゆる誤食や盗食など無分別な摂食行動や、食物アレルギー、過食、潰瘍、腫瘍、寄生虫(が胃に寄生する)などが含まれます。外因性の原因には、肝臓や腎臓の問題、膵炎、ホルモンの問題、脳の問題、内耳の問題、がん、疼痛、熱中症、およびストレスが含まれます。

愛犬は胃が弱いタイプ?

横に横たわっている混合品種の子犬は、黄色と灰色の縞模様の毛布で覆われています。

何でも食べられるし、何を食べても具合が悪くなることなどない・・・といった、鋼の胃腸をもつ犬もいますが、その一方で、いつもの食事とほんの少し違ったものを一口食べただけで吐き戻してしまう犬もいます。

たまたま一時的に胃の不調を起こしているだけなのか、それとも実際に胃が弱いタイプなのか、見分ける方法があります。それは不調の起きる頻度です。犬が胃の不調を思わせる何らかの症状を頻繁に(月に1回以上)示している場合は、それは胃の弱いタイプかもしれません。こういった胃弱の原因は常にはっきりわかるわけではなく、特定の食物が消化できない食物不耐症や、食物アレルギー、腸内微生物叢の変化によるものまで、いろいろな説があります。

食物アレルギーの場合には、消化器の症状に加えて痒みや赤み、脱毛などの皮膚のトラブルも見られることがあります。

犬の胃の不調の際に必要な治療とは?

気持ち悪そうな、調子の悪そうな犬をみていたら、何とかしてあげたくなります。でも、どの病気もそうですが、治療内容はその原因や程度によって異なります。たとえば、膵炎が原因だった場合と食物アレルギーが原因になっている場合とは全く治療が変わります。とりあえず、動物病院に行く前に何とかしたいという気持ちもわかるのですが、獣医師としては回り道せず迅速に適切な治療を受けてもらいたいので、迷ったときはまず動物病院に来ていただきたいと思います。

獣医師は、犬の状態を確認して必要な検査や治療を行いますが、症状が出たときの状況や過去の病歴などの飼い主さんからの情報は、診断や治療のために非常に重要になります。来院時にはそういった情報を細かく伺うことになると思いますので、メモやその時の動画などをとっておいていただくのもよいと思います。治療は症状の程度や原因に応じて制吐剤や制酸薬、抗生物質、駆虫薬などの薬剤が処方あるいは投与されます。場合によって静脈内または皮下輸液がなされたり、入院や手術が必要になるケースもあります。

お腹に優しい食事を考える

緑の首輪のドーベルマンの子犬はベッドで寝ています。

胃の不調の際に、胃に負担の少ない適切な食事を与えることは、治療と同様にケアとして重要な要素です。個々の症例の状況によって継続する必要があるか、あるいは一時的な対応で良いかは変わると思いますが、まずは3~10日程度を目安に、消化しやすい食事を与えるように勧められることが多いでしょう。療法食を与えることもできますし、獣医師が手作りフードのレシピを教えてくれることもあります。

犬の体調がすぐれないと、心配でこちらまで気分が落ち込んでしまうという飼い主さんも多いことでしょう。動物病院に行くのはハードルが高いと思われている飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、動物のことなら動物病院に相談するのが一番です。普段からかかりつけ病院に立ち寄ったりして行き慣れておくと、いざというときも相談しやすいですよ!

Contributor Bio

サラ・ウーテン博士

筆者紹介
サラ・ウーテン獣医師

サラ・ウーテン獣医師は、カリフォルニア大学デービス校獣医学部の2002年卒業生です。アメリカ獣医ジャーナリスト協会会員のウーテン獣医師は、コロラド州グリーリーで小動物病院を開業しながら、職場の人間関係問題、リーダーシップ、クライアントとのコミュニケーションについての講演活動や執筆活動も行っています。楽しみは、家族とのキャンプ、スキー、スキューバダイビング、そしてトライアスロンに参加することです。

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