犬のしっぽの毛が抜けてる!その原因とは?

執筆: サラ・ウーテン獣医師
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犬が、時々後ろ足で体を掻いたり、しっぽやお尻のあたりをガチガチ噛んだりするのはよくあることだと思いますが、毛が薄くなっている、赤くなっている、傷が付くほど気にするというのは、違和感や痒みを感じている可能性があります。あるいは、自分で気にする仕草は特にないのに、ふと見たらしっぽのあたりの毛が薄くなっているということに気づいた・・なんていうことも。犬のしっぽやその周辺の毛が薄くなる原因には、皮膚炎によるもの(ノミ等の寄生虫やそのほかのアレルギー性など)のほか、ホルモンが関連した疾患、ある種の行動障害が関連している場合もあります。

もちろん、異常に気づいたら動物病院に受診していただきたいのですが、動物病院での診察時には、飼い主さんからの情報が診断や治療に大きく役立ちます。是非、来院される前に事前にお家でチェックしていただきたいことをご紹介します。

犬が自分でしっぽを噛んで毛を抜いていませんか?

まず、原因を見分けるにあたって重要なのは、犬自身で自分のしっぽを噛んでいる行動があるかどうかです。犬が自分でしっぽ噛んでいると、しっぽの毛がゴワゴワになったり、縮れたり、切れたりします。毛が唾液で濡れていることもあります。さらにひどくなると、尻尾の皮膚が炎症を起こして赤くなったり、もっとエスカレートすると傷になってしまうこともあります。

犬が自分でしっぽ付近を噛んで毛が薄くなる原因でもっとも多いのは、ノミの感染、あるいはノミの唾液によるノミアレルギー性皮膚炎です。特にノミの活動が盛んになる暖かい季節で、ノミの定期的な駆除を行っていない場合には、この可能性が高くなります。ノミアレルギーの場合、ノミに一咬みされただけで、ひどい痒みで傷ができるほど尻尾を噛むことがあります。治療は適切なノミの駆除薬を使用することですが、皮膚の症状の程度に応じて外用剤や内服薬を処方されることがあります。

縞模様のマットの上に座っている2匹の犬、尻尾のクローズアップ

またその他のアレルギーも尻尾を噛む原因になることがあります。この中には環境中の物質や特定の食物に対するアレルギー、様々なものに対して過敏な体質によるアトピー性皮膚炎などが含まれます。食物アレルギーかどうかを見極めるために、獣医師は専用の療法食を一定の期間試すように推奨することがあります。

犬が尻尾を自分で噛むもう一つの理由には、肛門周囲が気になるということが考えられます。犬が肛門周囲を気にして舐めたり、お尻をずりずりとさせてお尻歩きをするような様子が見られたら、よくその周囲を観察してみてください。犬のこのような仕草を見せるときに多い原因としては、肛門腺が溜まっている、あるいは溜まっているだけでなく、付随して炎症が見られることもあります。肛門腺についてはまずは絞ってあげれば解決することが多いですが、症状によっては患部の洗浄や抗生物質などの薬剤が、時には外科的な手術が必要になることもあります。

犬が肛門付近を気にする原因として、実は消化管に寄生虫がいて、それがお尻から出てきて違和感を感じている、ということもあるかもしれません。犬の消化管内に寄生する寄生虫としてよく知られているのは瓜実(犬)条虫とよばれる寄生虫です。腸に寄生し、卵を含んだ虫体の一部(片節)が消化されずにお尻から出てきます。この片節は米粒のような見た目で活発に動くため、犬の肛門を刺激して痒みを起こし、先ほどの肛門腺の違和感のときと同じようにお尻歩きすることがあります。この瓜実条虫が犬に感染するためにはノミの存在が必要不可欠です。つまり、犬にノミが感染しているときには、同時にこの瓜実条虫にも感染している可能性があります。そのため、この寄生虫を駆虫するときには、併せてノミの駆除も行う必要があります。

以上のような、皮膚炎や肛門周囲の異変、肛門腺といった問題、寄生虫の問題がクリアされても、まだしっぽを気にする場合に考えられるのは、何があるでしょうか。ほかに考えられるのは、この付近に痛みがある場合です。しっぽ付近の関節炎や腰痛などは、どれも過度に尾の毛づくろいをする原因になります。また、問題行動の一つとして扱われることの多い常同障害の代表的な行動の一つにも、尾追いや尾への攻撃があります。常同障害は、不安または恐怖からの感情的な葛藤や欲求不満に由来し、状況とは関係のない行動が繰り返し行われ、動物の正常な機能を妨げている状態のことを言います。これらの症状に必要な治療はそれぞれ異なるので、獣医師に相談しましょう。状況によっては、犬の行動学の専門家を紹介されることもあります。

しっぽの毛が自然に抜け落ちていませんか?

犬自身がしきりに尻尾を噛んでいるわけではないのにしっぽの毛が抜け続けている場合、別の基礎的な原因があるかもしれません。しっぽの毛が自然に抜け落ちている場合、しっぽに残っている毛が折れたりしておらず、皮膚も滑らかで、通常赤みや炎症は見られません。

このような場合には、甲状腺機能低下症やクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)などのホルモンが関連したトラブルの疑いがあります。これらのホルモンに関連した疾病では、しっぽや腹部に左右両側の脱毛を起こすことがあります。甲状腺機能低下症の場合、このような脱毛のほか、しばしば管理しにくい体重の問題を抱えていて、特徴的な悲しそうな表情や、無気力な様子が見られることがあります。クッシング症候群では、脱毛や皮膚が薄くなるといった皮膚トラブルのほか、多飲多尿や腹部膨満といった症状が典型的なものです。

ホルモンが関連したトラブルが疑われる場合には、通常行われる血液検査にく加えて、ホルモンを測定するための検査が必要になります。状況に応じて、超音波検査などの画像検査も同時に行われるでしょう。トラブルの原因となっているホルモンが見つかったら、その内容に応じて適切な治療が行われます。

犬のしっぽの脱毛には、いろいろな原因があることがご理解いただけたでしょうか。治療によって、またもとのように毛が生えてくるものも多いのですが、それには時間がかかることもあります。テネシー大学獣医学部によると、毛の成長には周期があるので、うまくその周期が回り始めればいいのですが、上記のような何らかのトラブルが起こると、治療をしてもそのサイクルがすぐにうまく戻らないこともあるのです。治療には時間がかかることを理解して、あせらずしっかり治療していくようにしましょう。そして、日頃から愛犬のしっぽも含めた健康チェックを欠かさないようにしてくださいね!

Contributor Bio

サラ・ウーテン博士

筆者紹介
サラ・ウーテン獣医師

 

サラ・ウーテン獣医師は、個人診療施設における小動物の臨床経験が16年になります。カリフォルニア大学デービス校獣医学部の2002年卒業生であり、公認獣医ジャーナリストでもあります。

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