結論

猫アレルギーがあっても、アレルゲンの少ない猫種を選び、掃除やHEPAフィルター付き空気清浄機などで環境を整えれば、共生できる場合があります。血液検査による特異的IgE抗体値(クラス0〜6)は共生の可能性の目安になりますが、最終的には症状や生活環境を踏まえ、専門医の助言を受けることが重要です。猫を迎える際は、子猫か成猫かも考慮しましょう。子猫は活動的でアレルゲンを撒きやすく、成猫は生活リズムが安定して環境管理がしやすい傾向があります。現時点でアレルゲンを完全に持たない猫種は存在しませんが、無毛種や短毛・中毛・長毛の中で比較的アレルゲンが少ない猫種を選ぶと、共生の可能性が高まります。

猫アレルギーとは?

猫アレルギーは、猫の唾液・フケ・皮膚などに含まれるタンパク質(代表的には Fel d1)がアレルゲンとなり、免疫系がこれに過剰反応を起こすことで発症します。多くの人が「猫の毛」を原因と考えがちですが、実際には毛に付着したフケなど微細粒子が主なアレルゲンとなります。空気中に舞いやすい性質を持つため、猫との接触以外でも症状が出る可能性があります。 アレルギーの程度には個人差があり、アレルゲンが少ない猫を選んだり、環境を整えることで一緒に暮らせるケースもあります。

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猫アレルギーでも猫を飼える判断基準は?

猫アレルギーでも猫を飼えるかどうかを判断する一つの材料として、血液採取による特異的 IgE 抗体検査があります。

この検査では、猫の主要アレルゲン(Fel d 1など)に対するIgE抗体値を測定し、クラス0〜6 に分類します。クラスが高いほど体が猫のアレルゲンに強く反応していることを示し、症状が出やすく、重症化リスクも高まる傾向があります。ただし、これはあくまで客観的な目安であり、数値だけで「飼える・飼えない」が決まるわけではありません。実際の症状の出方や、HEPAフィルター付き空気清浄機・換気・寝室分離といった生活環境の整備状況も大きく関わります。そのため、最終的な飼育可否の判断は、アレルギー専門医の診断・助言を受けた上で行うようにしてください。

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猫アレルギーの場合、成猫、子猫どっちがいい?

もし猫を迎えると決めた場合、「子猫」か「成猫」かによってアレルギー反応の出方や生活への影響が変わる可能性があります。
一般的に、子猫は活動量が多くアレルゲン(フケや唾液)を撒きやすい一方で、成猫の方が生活リズムが安定しており、環境管理がしやすいケースもあります。
ご自身の症状の程度と生活環境に応じて、より負担の少ない形を選ぶとよいでしょう。

猫アレルギーが出ない猫種はいる?

アレルゲンを持たない猫がいれば理想的ではあります。しかし、結論から申し上げますと、すべての猫がアレルゲンを産生します。特に主要なアレルゲンであるFel d 1は、猫の唾液や皮脂腺から分泌され、グルーミングを通じて毛やフケに付着し、家の中に拡散します。

現時点で完全にアレルゲンを除去した猫の実現には至っていませんが、遺伝子操作技術の研究が進められています。例えば、広島大学キユーピー株式会社の共同研究では、鶏卵の主要アレルゲンである オボムコイド(OVM) をゲノム編集で除去した「アレルギー低減卵」の開発が進行中です。この技術は、将来的に猫におけるアレルゲン除去にも応用される可能性があり、猫アレルギーを持つ方々の生活の質向上につながることが期待されています。

猫アレルギーが出にくい猫種は?

現時点でアレルゲンを完全に持たない猫種は存在しません。しかし、無毛種の猫を選ぶ、あるいはアレルゲンの分泌量が比較的少ない短毛・中毛・長毛種を選ぶことで、猫との共生の可能性を高めることができます。ここでは、毛の長さ別に猫種を一部ご紹介します。

短毛種の猫

中毛種の猫

  • サイベリアン(Siberian):ロシア原産の猫で、アレルゲンの分泌が少ないとされています。性格は穏やかで社交的です。
  • ラグドール(Ragdoll):大きな体と長毛が特徴の猫です。性格はおおらかで人懐っこいとされています。
  • バーマン(Burmese):中毛で、アレルゲンの分泌が比較的少ないとされています。性格は穏やかで人懐っこいです。

長毛種の猫

無毛種の猫

  • スフィンクス(Sphynx):カナダ原産で、1960年代に突然変異で無毛の猫が誕生し、品種として確立されました。皮膚はしわが多く、筋肉質な体つきが特徴です。
  • ピーターボールド(Peterbald):ロシア原産で、ドンスコイとオリエンタルショートヘアを交配して誕生した猫種です。

猫アレルギーがある場合の飼育の注意点は?

猫アレルギーがある場合、アレルゲンが少ない猫種を選ぶだけでなく、飼育環境や日常的な管理も重要です。具体的には、以下の点に注意するようにしましょう。

  • HEPAフィルター付き空気清浄機の使用: 高性能な空気清浄機を使用し、アレルゲンを空気中から除去する。
  • 掃除の徹底: フローリングやカーペット、家具の上など、こまめに掃除を行い、アレルゲンの蓄積を防ぐ。
  • 猫のグルーミング: 猫の毛や皮膚の状態を清潔に保つために、定期的なグルーミングを行う。
  • 生活空間を分ける: 猫専用の部屋を設けることで、アレルゲンの拡散を最小限に抑える。

猫アレルギー症状が出た場合の対処方法は?

猫アレルギーの症状が現れた場合は、まず上述した飼育環境や生活習慣で改善できる点がないか確認しましょう。それでも症状が出る場合は、早めに医師の診察を受け、適切な治療を行うことが大切です。症状に応じて、抗ヒスタミン薬や点鼻薬、点眼薬、場合によってはステロイド薬が処方されることがあります。

よくある質問

猫を飼う前にできるアレルギー検査は何?

猫アレルギーのリスクを確認する方法として、血液検査(特異的IgE抗体検査)があります。これは、猫アレルゲンに対するIgE抗体の量を測定し、アレルギー反応の強さをクラス0〜6で評価する検査です。また、皮膚プリックテストでは、猫アレルゲンを少量皮膚に付け、赤みや腫れの出方からアレルギー感作の有無を確認できます。

猫を飼い始めた後にアレルギーを発症することはある?

猫との接触が長くなることで体がアレルゲンに感作され、初めはなかったアレルギー症状が後から現れることがあります。

喘息持ちの場合、猫を飼うのは控えたほうがいい?

猫のアレルゲン(Fel d 1)は空気中に浮遊しやすく、喘息症状を悪化させるリスクがあります。軽度の喘息でも症状が悪化する可能性があるため、医師に相談したうえで飼育の可否を判断することが重要です。

妊娠中の場合は、猫を飼うのを控えたほうがいい?

妊娠中は、基本的に猫の飼育に注意が必要です。猫アレルギーによる呼吸症状の悪化も懸念されますが、特に注意したいのはトキソプラズマ症です。妊娠中に感染すると、胎児に影響を及ぼす可能性があります。

Nagao Maya Nagao Maya
編集責任者: 長尾麻矢

プロフェッショナル獣医学術部
プロフェッショナル獣医学術マネジャー
日本ヒルズ・コルゲート株式会社