猫の下部尿路疾患

猫の下部尿路疾患

「うちの猫があちこちでおしっこするのはなぜ?」


猫の尿路の問題は、多くの場合、生涯にわたるケアが必要となります。こうした問題は、ストレスや環境要因によって引き起こされることが多く、猫とペットペアレントとの関係にも影響を及ぼすことがあります。このような時に役立つのが尿ケア用のキャットフードです。将来的な排尿トラブルのリスクの軽減に役立ち、猫がトイレを正しく使えるようになる手助けとなります。

リラックスできる環境を整えるなど総合的なケアの一環として、尿路の健康に配慮したキャットフードは、猫が日常生活を取り戻し、再び家族と一緒に快適な生活を過ごせるようにサポートします。

誤解されやすい症状を正しく理解する

 

猫がトイレ以外の場所でおしっこをする行動は、健康上の問題ではなくしつけの問題と誤解されがちです。このように猫の尿路トラブルは猫の健康において最も誤解されやすい症状の一つとなっています。残念ながら、こうした問題でペットオーナーとの関係にもストレスが生じてしまうことがあります。そのため、尿路のトラブルの兆候を見逃さずに気づくことがとても大切です。愛猫の健康を守るために、知識を身につけましょう。

愛猫の尿路トラブルを見逃さないために

 

猫の尿路の問題は、ペットペアレントにとってストレスであるのと同じくらい、猫自身にとってもつらいものです。猫は尿路のトラブルがあっても我慢してしまう傾向があるため、気づかれないまま時間が経過することも少なくありません。愛猫が尿路疾患に苦しんでいるかもしれないと感じたとき、以下のような兆候に注意してみてください。

 室内で排尿するアイコン

室内での粗相



成猫が頻繁に粗相をしたり普段と違う場所で排尿するようであれば、獣医師の診察が必要な、よくある尿路疾患の兆候かもしれません。これらの多くは適切なケアによって管理が可能です。

排尿時の痛みを示すアイコン

排尿時の鳴き声や痛がる様子



排尿時に力んだり、不快そうな鳴き声をあげる場合は、すぐに獣医師に相談してください。特発性膀胱炎、膀胱結石、尿道栓子などの可能性があります。

尿に血が混じっていることを示すアイコン

血尿



トイレや尿に血が見られた場合は、速やかに動物病院を受診してください。血尿は特発性膀胱炎や膀胱結石、尿道栓子など、さまざまな原因が考えられる重大なサインです。必ず獣医師の診断を受けましょう。

頻尿を示すアイコン

頻尿



トイレにいる時間が長いのに尿が出ない、またはごく少量しか出ない場合は、すぐに獣医師の診察を受けてください。これは尿道閉塞の兆候であり、命に関わる緊急の状態です。

愛猫が尿路トラブルを抱えている場合

ストレスが原因かもしれません。クイズに答えて、ストレスが愛猫の健康に影響を与えているかどうかをチェックしてみましょう。

特発性膀胱炎と特発性下部尿路症候群



猫に最も多い下部尿路疾患は、特発性膀胱炎です。これは他の病気を除外したうえで診断されることが一般的です。特発性膀胱炎の原因ははっきりしていませんが、ストレスが深く関係していると考えられています。

トイレ以外でおしっこをするなどの特発性膀胱炎の症状は、猫の生涯を通じて繰り返し再発することがよくあります。そのため、特発性膀胱炎の管理には継続的なケアが欠かせません。

尿石

 


ストルバイト尿石とシュウ酸カルシウム尿石は猫でよく見られる尿石の種類で、強い痛みを伴うさまざまな不調を引き起こします。

尿石ができやすい猫には、飲水量を増やすことや、現在の尿石を溶解し再発リスクを軽減することに役立つ療法食を獣医師が推奨することがあります。

尿道栓子

 


尿道は、膀胱から体外へ尿を運ぶ管です。尿中のストルバイト結晶が粘液と結合すると、尿道栓子を形成することがあります。

愛猫が排尿時に鳴き声をあげたり、頻繁にトイレに行ったり、少量しか尿が出ない場合は、尿道閉塞の可能性があります。この状態は緊急を要する命に関わる症状ですので、すぐに動物病院を受診してください。

愛猫の尿路トラブルを管理するには



下部尿路疾患には、「これさえあればOK」という万能の対処法はありません。獣医師と連携しながら、愛猫に最適な管理方法を見つけることが大切です。

一般的に、下部尿路疾患と診断された猫には、尿ケア用キャットフード、投薬、必要に応じて手術などを組み合わせた総合的なケアが効果的です。ただし、最適な治療を行っても、症状が再発したり、周期的に症状が現れることもあるので注意が必要です。

栄養アイコン

栄養



ほとんどの猫の下部尿路疾患では、再発リスクを減らすためにも、栄養管理が基本となります。尿ケア用キャットフードは、カルシウム、リン、マグネシウムなど、尿中で結晶を作る原因となるミネラル量が調製されています。また、ストレスが原因で症状が現れやすい猫のために開発された特別なフードもあります。

環境アイコン

環境づくり



環境によるストレスが下部尿路症状を引き起こすことも珍しくありません。静かな空間を用意したり、爪とぎポールやキャットタワーなどの上下運動ができるスペースを設置することで、愛猫のストレスを軽減できます。また、たっぷりの愛情やスキンシップも効果的です。

薬アイコン

投薬



愛猫の症状や状態によっては、獣医師が薬を処方する場合があります。このような薬は、痛みや不快感を和らげることを目的としており、栄養管理や環境づくりと併せて取り入れることで、より効果的なケアが期待できます。

引用文献:1Lekcharoensuk C, Osborne CA, Lulich JP. Epidemiologic study of risk factors for lower urinary tract diseases in cats. J Am Vet Med Assoc. 2001;218(9):1429-1435.