
猫のオシッコが出ていない?:猫の尿道閉塞について
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尿道とは尿を貯めている膀胱から体外に排泄するまでの通り道です。なんらかの原因によってその尿道が詰まってしまい、尿が排泄できなくなることを尿道閉塞といい、これは生命にかかわる深刻な状態です。尿道が詰まり尿が排泄されなくなると、膀胱が尿で満杯になり、過剰に膨張した状態になります。閉塞が長く続いた場合、膀胱だけではなく腎臓も浮腫を起こしてダメージを受けるとともに、膀胱が破裂する危険性があります。
尿道閉塞はオス猫でとくに冬に起こりやすい病気としてよく知られています。また再発しやすいため、飼い主さんはこの病気のサインをよく理解し見逃さないようにすることがとても重要です。早期に発見して適切に対処する必要があります。
オス猫の尿道閉塞の原因とは
メスの尿道と比較して、オスの尿道は細くS字状に湾曲した構造をしているため、尿道閉塞を起こしやすくなっています。とはいっても、すべてのオス猫がなる、というものでもないので、遺伝や体質的な素因に加えて、食事や飲水量、運動量や肥満などの要因も関係しているといわれています。閉塞する原因として、小さな尿路結石によるものだったり、膀胱内膜の細胞や粘液、尿中の無機物でできた結晶から形成される尿道栓子によるもの、さらにこれらが通過する刺激によって尿道自体が狭くなってしまうことや、尿道の腫瘍といったことがあげられます。また、猫の特発性膀胱炎という病気が原因になることもあります。
オス猫の尿道閉塞の症状
何度もトイレにいって排尿しようとしているのに何も出ていないというのが、獣医が「尿閉」と呼ぶこの病気のもっともよくある症状です。落ち着かずうろうろしている、ポタポタと尿をたらす、いきんで鳴き声をあげるといった症状が観察されることもあります。完全に閉塞してしまうと急性の腎障害に陥り、尿毒症に至ります。尿毒症になると、意識状態が低下し、嘔吐や心拍数の低下が認められるようになり、さらに進むとけいれん発作などの兆候がみられるようになります。
獣医師は、病歴、身体検査、血液検査、尿検査、状況に応じて腹部レントゲンや超音波検査などをもとに診断を行います。細菌感染が疑われる場合には、尿検体の培養検査や薬剤感受性検査を行うケースもあります。
尿道閉塞の治療
尿道閉塞が確認された場合には、すぐに救急治療が必要です。痛みを伴うため、麻酔下で尿道カテーテル挿入し閉塞を解除するように試みます。同時に点滴のための準備を行い、尿路の確保後に全身状態に応じて点滴治療を開始します。想定の尿量が排泄でき、全身状態が回復するまで尿カテーテルは数日間挿入したままにし、膀胱内を洗浄して、砂粒や炎症物質を取り除きます。
普通に排尿ができるようになったら、退院することができます。飲水量の維持のために、猫にできるだけ多くの水を飲ませるための工夫やウェットフードを取り入れるなどのアドバイスと共に、尿路の健康のために設計された療法食を推奨されることでしょう。必要に応じて内服薬が処方されることもあります。
猫の尿道閉塞の予防
やっかいなことに、過去に尿道閉塞を起こしたことのある猫は、再発するリスクが高い傾向にあります。常に猫の排尿の様子には気にかけ、排尿できていることをチェックします。そして、定期検診で尿の状態を確認してもらうようにしましょう。どうしても再発を繰り返す場合や、閉塞の解除が難しい場合などには、獣医師から会陰尿道造瘻術という外科手術を提案されることもあります。これは、尿の出口を再形成し広げて詰まりにくくするためのものです。<>
この尿道閉塞を含め、膀胱炎や尿石症などの尿のトラブルの予防に最も重要なことは、飲水量の確保です。尿が濃縮して膀胱内に留まることが様々なトラブルの元になるため、尿量を増やして、尿路から老廃物や分泌物を洗い流すようにします。猫に水を飲んでもらう方法には、水飲み場を増やす、ボウルの代わりに噴水タイプの給水器を使用する、ツナ缶の汁で味を付けた水を普通の水とは別に用意する、ドライフードのみを食べている場合はウェットフードを取り入れるなどの方法があります。
また、尿道閉塞の予防には栄養も重要な役割を果たします。獣医師は個々の症例の閉塞の原因にあった、尿路の健康維持のために栄養設計された療法食を推奨します。療法食は特定の病態に合わせて栄養調節されているため、どの猫にも合う、というものではありません。必ず獣医師の指示に従って給与するようにしましょう。ヒルズの療法食であるプリスクリプション・ダイエットのどの製品が適切かどうか獣医師に相談してみてください。
ストレスの役割
猫の膀胱や尿道に起こる病気を総称して猫の下部尿路疾患(FLUTD)といい、尿道閉塞の主な原因となる病気が含まれています。この下部尿路疾患の発症に関係する重要な因子の一つにストレスがあります。猫は、生活環境や生活スタイルの変化には非常に敏感ですし、ずっと同じ状況だったとしても実はストレスを感じていた‥、ということもあります。このようなストレスが、膀胱炎などの尿路疾患の発症に関連していると考えられています。
猫がストレスを感じやすいのは・・・
- 退屈
- 多頭飼育のため競争が起こりやすい(トイレ、食事、水など)
- 他の猫にいじめられている
- トイレが汚れている、気に入らない
来客や家具の模様替え、家のリフォームなどもストレスの原因になることがあります。愛猫が尿道閉塞を起こしたら、何かストレスの原因になっているものはないか考慮し、ストレスの原因を取り除くよう努力しましょう。
愛猫のストレスを解消するためのヒント:
- 猫が気に入って遊べるおもちゃを複数準備しましょう
- 飼育頭数より1個多めにトイレを用意して、自分のペースでトイレを使えるようにします。それぞれのトイレはなるべく離して設置します。また、トイレの掃除は毎日行うようにしましょう。
- 食器は1頭に1つ用意します
- 登れる場所や隠れ家となるスペースを設置しましょう。猫は周囲を見渡すことができ、独りになれる高いところが好きです。
- 猫のストレスに対して配慮された療法食について、獣医師に相談してみましょう
オス猫の尿道閉塞の緊急性や心身ともにケアが必要なことをご理解いただけたでしょうか。日々猫ちゃんの様子を確認して、猫ちゃんにとって快適な環境整備を実践してくださいね。
Contributor Bio

サラ・ウーテン獣医師
サラ・ウーテン獣医師は、カリフォルニア大学デービス校獣医学部の2002年卒業生です。アメリカ獣医ジャーナリスト協会会員のウーテン獣医師は、コロラド州グリーリーで小動物病院を開業しながら、職場の人間関係問題、リーダーシップ、クライアントとのコミュニケーションについての講演活動や執筆活動も行っています。楽しみは、家族とのキャンプ、スキー、スキューバダイビング、そしてトライアスロンに参加することです。