結論

猫アレルギーを完全に治療する方法は現時点でありませんが、まず検査で原因となるアレルゲンを特定し、症状が出やすいかや重症化のリスクを把握することが治療の第一歩です。

猫アレルギー治療の主な方法としては、アレルゲンとの接触を回避する、薬による対症療法、免疫反応を調整して根本改善を目指す免疫療法があります。対症療法や免疫療法を行う場合は、必ず医師と相談しながら進めるようにしてください。さらに、光触媒やUVライト、低アレルゲン化ワクチンなどの研究も進んでおり、将来的にはより効果的な治療法の実現が期待されています。

猫アレルギーとは?

猫アレルギーは、猫の唾液・フケ・皮膚などに含まれるタンパク質(代表的には Fel d1)がアレルゲンとなり、免疫系がこれに過剰反応を起こすことで発症します。多くの人が「猫の毛」を原因と考えがちですが、実際には毛に付着したフケなど微細粒子が主なアレルゲンとなります。空気中に舞いやすい性質を持つため、猫との接触以外でも症状が出る可能性があります。

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猫アレルギーの診断方法は?

猫アレルギー治療の第一歩は、症状の原因を正確に特定することです。猫アレルギーと思われる症状でも、実際には別のアレルギーや疾患が原因であることもあるため、自己判断は避けることが重要です。そのために用いられる代表的な診断方法として、血液検査(特異的IgE抗体検査)と皮膚プリックテストがあります。

血液検査(特異的IgE抗体検査)

血液を採取して、特定のアレルゲン(例えば猫の皮屑・唾液など)に反応するIgE抗体の量を測定し、アレルギー反応の強さをクラス0〜6で評価する検査です。クラスが高くなるほど、猫アレルギー症状がでやすく、症状も重症化するリスクが高まります。

アレルギー反応の強さに応じた症状の出方についての詳細はこちらへ

皮膚プリックテスト

腕や背中の皮膚に少量の疑わしいアレルゲンを滴下し、軽く刺激(刺し/刺入)を加えて、15分〜20分程度で赤み/腫れ(膨疹)が出るかを観察します。

猫アレルギーの根本的な治療は可能?

現時点では、猫アレルギーを完全に治す「根本的な治療法」は確立されていません。症状を和らげるための治療は可能ですが、アレルギー体質そのものを根本的に変える方法はまだ研究段階です。

猫アレルギー治療における3つの柱

猫アレルギー治療の3つの柱は、アレルゲン回避、市販薬で症状を和らげる対症療法、免疫を慣らして根本改善を目指す免疫療法です。

アレルゲン回避

猫アレルギーの最も効果的な対策は、ブラッシングやシャンプーなどでアレルゲンの飛散を抑えながら、こまめな掃除、HEPAフィルター付き空気清浄機の使用、猫のいる部屋に入らないなどしてアレルゲンとの接触を減らすことが大切です。

対症療法

猫アレルギーの対症療法では、症状の種類や重症度に応じて適切な薬剤を選択し、使用することが重要です。使用にあたっては、特にステロイド薬や免疫抑制剤の副作用リスクに注意し、必ず獣医師の指導のもとで使用することが大切です。また、症状の経過や薬の効果、副作用の有無を確認するため、定期的な診察を受けることも推奨されます。

  • 鼻・目のアレルギー症状:抗ヒスタミン薬や点眼薬を使用し、アレルギー反応を抑制。
  • 皮膚のかゆみや湿疹:抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬を使用し、かゆみや炎症を抑制。
  • 咳や喘息などの呼吸器症状:吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を使用し、気道の炎症を抑え、呼吸を楽にします。
  • 重度の症状や長期的な管理が必要な場合:免疫抑制剤やシクロスポリンなどを使用して、免疫反応を調整します。

免疫療法

猫アレルギーに対する免疫療法は、アレルゲンに対する過剰な免疫反応を抑制し、症状の軽減や体質改善を目指す治療法です。主に「皮下免疫療法(SCIT)」と「舌下免疫療法(SLIT)」の2つの方法があります。

  • 皮下免疫療法(SCIT)

皮下免疫療法は、アレルゲンを含む注射を皮膚の下に投与して免疫系を徐々に慣らすことで、アレルギー症状を軽減する治療法です。スギ花粉やダニなどに対して行われ、通常3〜5年の治療期間が必要です。保険適用はスギ花粉症やダニによる通年性アレルギー性鼻炎に限られます。副作用として注射部位の腫れやかゆみ、まれに全身性の症状が現れることがあります。

  • 舌下免疫療法(SLIT)

舌下免疫療法は、アレルゲンを含む錠剤や液剤を舌の下に置いて体内に取り込むことで免疫系を慣らし、アレルギー症状を改善する治療法です。スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎に対して保険適用があります。治療期間は通常3〜5年で、初回は医療機関での管理が必要です。副作用として口腔内のかゆみや腫れが起こることがあります。

猫アレルギーに対する皮下免疫療法・舌下免疫療法は現時点で保険適用外ですが、自費で対応している医療機関もあるため、最寄りの病院に確認してみてください。

猫アレルギー治療における研究と今後

猫アレルギーに対する治療法として、アレルゲン回避、対症療法、免疫療法が主に行われていますが、根本的な治療法は確立されていません。しかし、近年、猫アレルギーに関する新たな研究が進められています。将来的にはより効果的な治療法の実現が期待できるかもしれません。

光触媒によるアレルゲンの分解

東京大学と犬山動物総合医療センター、カルテック株式会社の共同研究により、酸化チタン型光触媒技術を用いて猫アレルゲン(Fel d1)を分解できることが世界で初めて証明されました。これにより、空気中のアレルゲンを効率的に除去し、アレルギー症状の軽減が期待されます。

紫外線(UV)ライトによるアレルゲンの無効化

コロラド大学ボルダー校の研究者たちは、222nmの紫外線(UV222)ライトを用いて猫アレルゲンを不活化できる可能性を示唆しています。実験では、空気中のアレルゲンが30〜40分で最大61%減少し、従来の掃除方法よりも効果的であることが確認されました。

低アレルゲン化ワクチンの開発

大阪府立大学の研究チームは、アレルゲン免疫療法の安全性と効果を高めるため、低アレルゲン化ワクチンの開発に取り組んでいます。これにより、アナフィラキシー反応のリスクを低減しつつ、アレルギーの完治が期待されます。

よくある質問

猫アレルギー治療の相談はどの病院でできる?

アレルギー専門外来を持つ病院・クリニックで、猫アレルギーの治療、相談が可能です。または「耳鼻科/皮膚科」「呼吸器内科」などで、猫アレルギー診療を扱っているところが多いです。ただし、免疫療法を行っている病院は限定的ですので、最寄りの病院に確認してみてください。

猫アレルギー治療で注射を使う?

免疫療法には、皮下注射(皮下免疫療法: SCIT)と、舌の下に薬を置く舌下免疫療法(SLIT)の2つの方式があります。 

猫アレルギーの検査、治療費用はどのくらいかかる?

アレルギー検査(特異的IgE抗体検査など)の費用は、保険適用(3割負担)で3,000~4,000円程度とされています。

猫アレルギーに対する免疫療法は、現時点では保険適用外となっており、治療を希望する場合は、医師と相談の上、自由診療としての対応となる可能性が高いです。

最寄りの病院に確認してみてください。

Nagao Maya Nagao Maya
編集責任者: 長尾麻矢

プロフェッショナル獣医学術部
プロフェッショナル獣医学術マネジャー
日本ヒルズ・コルゲート株式会社