肉食の猫にヴィーガンフードを与えても大丈夫?

執筆: ジェイミー・ドレイク(プロフィール写真)
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ペットに最適なフードを見つけましょう。

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猫は犬と違って、ほかのネコ科動物同様、典型的な肉食動物です。人間がいわゆる肉類を食べないベジタリアンのライフスタイルを取るのは自由ですが、ベジタリアンやヴィーガン(動物性食品を一切食べない、もっとも極端なベジタリアンのこと)の主義を猫にもあてはめることは、現時点ではリスクが高いと言わざる得ないでしょう。

猫は「真性肉食動物」といって、生きていくためにほかの動物から栄養を「摂らないといけない」生き物として分類され、それはその行動特性や解剖学的あるいは生理学的な事実からも支持されています。多くの猫が、猫の栄養を考えて開発されたキャットフードを食べて健康に長生きしてきた事実があります。人間のヴィーガンやベジタリアンは、バランスのいい菜食で健康的な生活を送ることができるかもしれませんが、今までわかっていることから考えると、少なくとも猫にもそれがあてはめられるとは断言できないでしょう。もし既にベジタリアンやヴィーガンの食事を与えているか、これから与えようと考えているなら、まずはこれからご紹介する内容に目を通して、愛猫に何が必要なのか必ず獣医師の意見を聞くようにしてください。

猫の食性と栄養特性

飼い猫たちの先祖は砂漠に住む捕食者で、トカゲ、ヘビ、鳥、齧歯動物、さらにはタンパク質を多く含む昆虫まで食べていました。今日でもほとんどの飼い猫にはその習性が残っていて、その気になれば非常に優れたハンターになることができます。動くおもちゃに目がないのを見ると、なるほど・・・と思うことでしょう。

猫は本来、獲物を狩ったら、新鮮なうちにまるごと食べてしまいます。「獲物」にはいわゆるタンパク質のほか、その獲物が食べた穀類や新鮮であるからゆえのビタミンなどの栄養素も含まれています。「獲物」の大半は消化され、猫が日々必要とするエネルギーとなり、残りは毛玉として吐き出されたり、便として排泄されます。このような食性を元に、猫はタンパク質の要求量が高く、犬とは違った脂肪酸やビタミン・ミネラル類が要求され、糖質の処理能力があまり高くないといった栄養特性をもつことがわかっています。

猫にとって野菜は健康的?

猫は非常に適応力の高い動物でもあります。何らかの事情で通常の肉ベースの食事ができず、植物性原材料ベースの食事の場合でも、それに順応することもできます。ただし、この植物性中心の食事は、緊急時等の一時的措置として許容されるのであって、猫の健康が十分に担保されるほどの適切なアミノ酸(筋肉の構成要素)やそのほかの栄養素を供給してくれるわけではありません。

猫のためのベジタリアンフードついては数多くの研究が行われてきましたが、その結果は完全には明らかになっていません。はっきりしているのは、ベジタリアンの食事で猫の栄養バランスを満たすのは容易ではない、ということです。実際のところ、ベジタリアンフードで猫の栄養ニーズを満たそうとすると、合成アミノ酸が必要になります。つまり、100パーセント自然由来の食材を使用したベジタリアン・キャットフードで猫のニーズを満たすことはそもそも不可能なのです。さらに、不適切な食事を続けることによって、将来、深刻な健康トラブルにつながる恐れもあります。たとえば栄養状態が良くないと、心臓病や尿路疾患、下痢、その他の疾病を悪化させることが知られていると、PetMDは忠告しています。また、栄養不良によって、持病がないのにもかかわらず心臓や眼の病気を患ってしまうこともわかっています。あえてペットの健康を危険にさらす理由はどこにもないでしょう。

そのベジタリアンフードは、猫に必要な栄養が含まれていますか?

もし、愛猫にベジタリアンフードを与えようと検討しているなら、まずそのキャットフードには猫に必要な栄養素が十分に含まれているのか確認しなければなりません。通常、ペットフードのラベルには、そのフードが決められた給与試験や分析試験に合格し、栄養基準を満たしていることが表記されています。実際のところ、適切なバランスで肉類が原材料に含まれているキャットフードを与えることで、猫が健康で幸せに暮らせることを示す研究結果は数多く報告されている一方で、ベジタリアンのフードが猫に必要な栄養を満たしているとする研究はほとんどありません。

猫の健康を守るため、獣医師(DVM)であり認定獣医鍼灸師(CVA)であるアールマティ・メイ博士 ら獣医師たちは、猫にベジタリアンフードを与えることを検討している人々に協力しています。メイ博士はその立場から、今まで与えたことがないベジタリアンやヴィーガンのフードを与える場合には、猫の尿を注意深く観察して、健康上問題がないか確認するよう促しています。有名なベジタリアン・キャットフードを与えている場合でも、血液や尿の状態 を検査して健康状態全般を確認すべきですし、栄養が偏ることで起こりやすい健康問題をもっと詳細に確認するためには、心臓の超音波検査や網膜の検査が必要なように、さらに検査が広範囲に至ることもあります。

ベジタリアンの方へ

多くのベジタリアンやヴィーガンの方は、動物全般に害を与えないことを信条にしているため、その結果として、いかにその倫理観に抵抗を感じずに猫に肉類を与えることができるのかという問題に葛藤しているかと思います。このような倫理的な問題に正解はありません。ただ言えることは、人間がベジタリアンやヴィーガンであることが健康的で自然であると考えるのは自由ですが、肉食の猫にその倫理観をあてはめることは明らかに難しいことなのです。

どんな倫理観をもっているにしても、まずは愛猫の健康を優先するのが猫の飼い主としての務めでしょう。猫に与えるキャットフードは、ライフステージに適したAAFCOの栄養基準に合格したものでなければなりません。猫は肉を食べるのが本来の姿ですが、俯瞰してみればベジタリアンフードであっても適切な成分が追加されていれば、理論的には十分な栄養摂取は可能なのかもしれません。ただ残念ながら、ベジタリアンフードが一般的なキャットフードより健康的であることを示すエビデンスは見つかっていませんし、むしろ栄養バランスが悪いと猫に健康トラブルが生じるというエビデンスも見つかっています。猫たちに、ご自身の倫理観に沿ったできる限り良いことをしてあげたい気持ちはわかりますが、猫にとって健康的でバランスの良いベジタリアンフードの内容が明らかになるまでは、肉ベースの食事が最も安全で自然な方法といえるでしょう。猫の栄養ニーズに基づいて最適なアドバイスをくれる獣医師にも、必ず相談するようにしましょう。

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ジェイミー・ドレイク

動物看護士で、昔から大の動物好き。犬、ウサギ、アルパカ、ヤギなど、多くの動物たちとともにペンシルバニア州に暮らしています。

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