猫が毛玉を吐くのは、グルーミング(毛づくろい)で飲み込んだ毛を体外へ出すためです。飲み込んだ毛の多くは便と一緒に排出されますが、一部が胃の中にとどまり、毛玉として吐き出されるのです。

猫が毛玉を吐くこと自体は、自然な生理現象です。ただし、毛玉が大きくなりすぎたり、うまく吐き出せなかったりすると病気につながる可能性もあるため、よく観察して適切に対処しましょう。

この記事では、猫に毛玉ができる仕組み、毛玉を吐く理由と頻度、吐けない場合のリスク、ブラッシングや食事による毛玉対策、獣医師へ相談する目安を解説します。

 

猫の毛玉とは?毛玉ができる仕組み

猫の毛玉とは、毛づくろい(グルーミング)の際に飲み込んだ抜け毛が胃の中で塊になったもので、正式には「毛球(ヘアボール)」と呼ばれます。

まずは、毛玉ができるメカニズムと、毛玉ができやすい猫の特徴について理解しておきましょう。

毛玉ができる原因とメカニズム

猫の毛玉は、グルーミングで飲み込んだ毛の一部が胃に残り、毛同士が絡み合うことで作られます。

猫は起きている時間の3割以上を毛づくろいに費やすといわれるほどの綺麗好きです。舌の表面には「糸状乳頭」と呼ばれる小さな突起が並んでおり、櫛のように被毛をとかしながら抜け毛やホコリを絡めとります。

しかしこの突起は喉の奥に向かって生えているため、絡めとった抜け毛を吐き出すことができず、どうしてもそのまま飲み込んでしまうのです。

飲み込まれた毛は本来であれば便と一緒に排泄されますが、量が多くなると胃の中で少しずつ絡み合い、フェルト状のかたまりになります。これが、毛玉です。

毛玉ができやすい猫種と特徴

猫の中でも特に毛玉ができやすいのは、ペルシャ、メインクーン、ラグドール、ノルウェージャンフォレストキャットといった長毛種です。これらの猫は、被毛の量が多く、1回のグルーミングで飲み込む抜け毛の量も自然と多くなるためです。

短毛種でも、換毛期(3月〜5月頃/9月〜11月頃)で抜け毛が増えている猫や、多頭飼育でお互いをなめあう習慣がある猫、シニア猫は、毛玉ができやすい傾向があります。

また、皮膚のかゆみなどによって同じ場所を繰り返しなめることが続くと、飲み込む毛の量も増えます。抜け毛が急に増えた、同じ場所ばかりなめる、皮膚に赤みやかさぶたがある場合は、毛玉だけでなく皮膚の状態にも注意が必要です。以下の記事で、猫に見られる主な皮膚トラブルと被毛の変化を解説していますので、参考にしてください。

▶︎ 猫の皮膚トラブルと被毛ケア

猫が毛玉を吐く理由と正常な頻度

猫が毛玉を吐くのは、胃の中にたまった毛のかたまりを体外に排出するためです。

健康な猫であれば、毛玉を吐くのは生理現象であり、そのこと自体は問題ではありませんが、毛玉を吐く頻度や毛玉の大きさ・色によっては病気や健康状態の変化が隠れている可能性もあるので注意しましょう。

猫が毛玉を吐くのは正常な行動

毛玉を吐く行動は、胃の中で消化されずに残った毛を外に出すための、猫本来の防御反応です。

猫が毛玉を吐くときには、「カッカッ」と乾いた咳のような音を出したり、体を低くして首を前後に振ったりといった行動が見られることがあります。初めて見たときには不安を覚えるかもしれませんが、猫が毛玉を吐くときの行動としては一般的です。

吐いたあとに普段どおり元気に過ごし、食欲や排便にも変化がなければ、過度に心配する必要はありません。また、毛玉をほとんど吐かない猫でも、飲み込んだ毛が便と一緒に排出されていれば問題はありません。ただし、吐こうとしても吐けない状態が続く場合や、食欲不振や便秘が見られる場合は注意が必要です。

毛玉を吐く頻度の目安

毛玉を吐く頻度の一般的な目安は月に1〜2回程度ですが、実際に吐く頻度は、猫によって大きく異なります。換毛期以外にはほとんど吐かない猫もいれば、月2〜3回ほど吐く猫も珍しくありません。

一方で、週に何度も吐く、あるいは毎日のように吐こうとする様子が見られる場合は、消化管の異常や毛球症(もうきゅうしょう)の可能性もあります。毛球症とは、飲み込んだ毛を吐いたり便と一緒に排出したりできず、胃や腸の中で大きな塊となって、消化や排泄を妨げる病気です。

また、長毛種でグルーミングを頻繁に行っているにもかかわらず、毛玉をほとんど吐かない場合も注意が必要です。一般的な目安だけで判断せず、以前より毛玉を吐く回数が増えた、吐こうとしても出ないといった変化がある場合は、獣医師に相談してください。

毛玉の大きさと色の変化に注意

猫が吐く毛玉は一般的に2~3cm程度ですが、長さが10cmを超える場合もあります。大きな毛玉があると、便秘や腸閉塞を引き起こす可能性があるため、様子を見て獣医師に相談しましょう。

なお、正常な毛玉は、猫の毛色と同じ色か、胃液が混ざって茶色っぽくなっており、フェルト状に固まっていることが多いです。

一方、以下のような変化が見られる場合は病気が潜んでいるかもしれません。

  • 鮮やかな赤い血が混じっている
  • 黒っぽくコーヒーかす状になっている
  • 黄色や緑色の胆汁が多く含まれている
  • 極端に大きい毛玉がある
  • 未消化のフードが大量に混じっている
  • 毛玉ではなく透明・白い泡だけを繰り返し吐く

このような様子が見られたら、様子をよく観察して動物病院を受診しましょう。

猫が毛玉を吐く理由や頻度については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

▶︎ 猫の胃腸トラブルと対処法

猫が毛玉を吐かない・吐けないときのリスク

毛玉を吐かない・吐けない状態が続くと、胃や腸の中で毛玉が大きくなりすぎて毛球症や腸閉塞を引き起こすことがあります。

「うちの子は毛玉を吐かないから安心」と思われがちですが、実際には毛玉が体内に蓄積して重篤な症状につながっているケースもあるので、放置しないようにしましょう。

毛球症とは

毛球症とは、飲み込んだ毛が胃や腸の中で大きな塊となり、消化や排泄が妨げられてしまう病気です。

初期の頃には、食欲の低下や、繰り返し吐こうとする様子、便秘などが見られます。進行すると、体重が減り、水分が摂れなくなることがあるので、症状に気づいたら早めに動物病院を受診しましょう。

腸閉塞のリスク

毛玉が胃から腸に流れ込んで詰まってしまうと、腸閉塞を引き起こす可能性があります。腸閉塞になると、便が出ず、元気がなくなっていき、悪化すると激しい嘔吐や、強い腹痛で声を挙げるようになることもあります。

このような状態になると大変危険なので、救急で受診してください。状態によっては、全身麻酔での手術になることもあります。

吐けないときの危険なサイン

毛玉を吐きたそうにしているのに吐けない状態が続いているとき、以下のような様子が一つでも見られたら危険です。

  • 食欲がまったくない・大好物にも反応しない
  • 吐こうとしても何も出ない様子を繰り返す
  • 便が出ておらず、ぐったりして元気がない
  • お腹が張って硬くなっている
  • お腹を触られるのを極端に嫌がる
  • 呼吸が苦しそう
  • 歯茎の色が白っぽい

このような状態になったときには、毛球症や腸閉塞が進行している可能性があります。時間との勝負になる場合もあるので、すぐに受診してください。

猫の毛玉対策と予防法

猫の毛玉対策・予防は、飲み込む抜け毛の量を減らすことと、飲み込んだ毛をスムーズに体外へ排出することです。

日々のブラッシングや定期的なシャンプー、毛玉ケアに配慮したフード選び、そして猫草やサプリメントを組み合わせることで、毛玉やそれにともなうリスクを大幅に減らすことができます。

ここでは、家庭で実践できる4つのケア方法を、具体的なやり方とあわせて紹介します。

ブラッシングで毛玉を予防する方法

ブラッシングは、最も効果的な毛玉対策です。抜け毛を毛づくろい前に取り除いておくと、猫が飲み込む毛の量を減らせるためです。短毛種は週2〜3回、長毛種は毎日が目安ですが、換毛期にはさらにこまめにブラッシングをしましょう。

短毛種にはラバーブラシや獣毛ブラシ、長毛種にはスリッカーブラシやコームなど、被毛の長さやタイプに合うブラシを使います。背中から尾に向かって毛並みに沿って動かし、お腹など触られるのを嫌がる部分は最後に短時間で行いましょう。

ただし、すでにフェルト状に固まった毛玉がある場合は、無理にほぐそうとせず、トリマーや動物病院で処理してもらうのが安全です。

シャンプーによる抜け毛ケア

シャンプーは、抜け毛を一気に洗い流せるため、ブラッシングだけでは取りきれない毛を取り除くのに有効なケア方法です。先に丁寧にブラッシングをして抜け毛をできるだけ取り除いた後、猫用の低刺激シャンプーを使って行います。

ただし、猫は本来頻繁なシャンプーを必要としない動物です。長毛種でも月1回程度、短毛種であれば数ヶ月に1回や換毛期のみで十分であり、これ以上の高頻度で行うと皮膚の乾燥やバリア機能低下につながる可能性があるため注意しましょう。

なお、水が苦手な場合や、どうしても嫌がる場合は、ドライシャンプーで拭き取るようにするとよいでしょう。家庭でのシャンプーが難しいようなら、動物病院やトリミングサロンに相談するのもおすすめです。

毛玉ケアに効果的なフード選び

毎日の食事を、毛玉ケア用キャットフードに代える方法もあります。毛玉ケア用フードには食物繊維が配合されており、毛づくろいで飲み込んだ毛を便と一緒に排出しやすくするよう設計されています。

<毛玉ケア用キャットフードの例>

7日間で現在のフードから新しいフードへ段階的に切り替える割合の図

毛玉ケア アダルト 1~6歳 成猫用(インドアキャット アダルト) チキン

https://www.hills.co.jp/cat-food/science-diet-adult-indoor-cat-chicken-dry

 

7日間で現在のフードから新しいフードへ段階的に切り替える割合の図

毛玉ケア シニア 7歳以上 高齢猫用(インドアキャット シニア) チキン

https://www.hills.co.jp/cat-food/science-diet-hairball-indoor-mature-adult-chicken-dry

室内で暮らす猫は、屋外に出る猫と比べて運動量が少なく、毛づくろいに費やす時間が長くなる傾向があります。そのため、毛玉ケアに加えて体重管理にも配慮した室内猫向けフードが販売されています。

なお、フードを切り替える際は、いきなり新しいフードを与えるのではなく、最初は従来のフードに新しいものを少し混ぜることから始め、少しずつ新しいフードの割合を増やしていくようにしましょう。

猫草やサプリメントの活用

猫草は、葉のチクチクとした食感で胃粘膜を刺激することで、毛玉の吐き出しを促す効果があるとされている植物で、ペットショップなどで手に入ります。

ただし、草を食べることで嘔吐の回数が増えすぎたり、胃を荒らしたりすることもあるので、与える量や様子を見ながら調整しましょう。また、すでに毛球症などで胃腸が詰まっているときに無理に吐かせようと与えるのは、逆効果になるため避けてください。

その他、毛玉を便と一緒に排出しやすくする効果のあるサプリメントなどもあるので、獣医師に相談のうえ取り入れてみるのもよいでしょう。

猫の毛玉と食事の関係

猫の毛玉と食事には、密接な関係があります。

フードの成分によって毛玉の排出しやすさが大きく変わるので、猫の毛玉に悩みがある場合は食事を見直すのも効果的です。

毛玉ケア用キャットフードの選び方

毛玉ケア用キャットフードを選ぶときは、以下のポイントを確認しましょう。

  • パッケージに「毛玉ケア」「ヘアボールコントロール」「毛球排出サポート」といった表記があるもの

  • 粗繊維の含有量が一般的な総合栄養食よりも高めに設定されているもの

  • 消化のよい動物性タンパク質が主原料になっているもの

  • 体重管理のためカロリー設計に配慮があるもの

  • 年齢(子猫・成猫・シニア)に合っているもの

フードの説明をよく読み、獣医師の指導のもとで取り入れるようにしてください。

獣医師に相談すべきタイミング

以下の症状が見られる場合は、獣医師に相談してください。

  • 食欲がまったくない・食べられない

  • 吐こうとしても何も出ない

  • ぐったりして元気がない

特に以下のような場合は命の危険があるため、夜間や休日であっても、緊急で診察を受けることをおすすめします。

  • 1週間以内に4回以上毛玉を吐いている

  • 吐こうとして吐けない状態が半日以上続いている

  • 24時間以上まったく食事や水をとらない

  • 3日以上便が出ない

  • 血が混じった便や真っ黒な便が出た

  • ぐったりして呼びかけへの反応が鈍い

  • 痛そうに鳴く

  • お腹が硬く張っている、または触られるのを激しく嫌がる

  • 過去に毛球症や消化管の病気を指摘されたことがある

よくある質問(FAQ)

健康な猫の場合、生理現象として毛玉を吐く頻度は月に1〜2回程度が一般的な目安です。

吐いた後も普段通り元気で、食欲や排便もしっかりしていれば問題ありません。ただし、週に複数回も吐く場合や、毎日のように吐き気をもよおす場合は毛球症や胃腸炎のリスクがあります。また、たとえ月に1回であっても、吐いた後にぐったりする、食欲が落ちるといった異常を伴う場合は、動物病院を受診してください

毛玉を吐かなくても、元気や食欲、排便に異常がなければ、飲み込んだ毛が便と一緒に排出されている可能性があります。

一方、吐こうとしても吐けない状態が続く場合や、食欲不振、便秘、元気の低下が見られる場合は、動物病院を受診しましょう。素人判断で吐かせようとしたり、人間用の便秘薬などを与えたりするのは避けてください。

毛玉ケア用のフードは、配合されている食物繊維の効果で、飲み込んだ毛を便と一緒に排出しやすくなるように設計されています。

効果の現れ方には個体差があるため、獣医師の指導のもとで取り入れるとよいでしょう。

まとめ

猫が毛玉を吐くのは、体を守るための正常な生理現象です。

ただし、毛玉が大きくなり、吐き出せなくなると、毛球症や腸閉塞を引き起こす可能性があります。何度も吐こうとしているのに毛玉が出ない、食欲がない、便が出ない、ぐったりしているといった症状が見られる場合は、動物病院を受診しましょう。