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犬のパルボウイルス感染症は、子犬でもっとも注意しなければならない感染症のひとつです。
パルボウイルスは、強力で伝染力の高いウイルスです。特に子犬ではきわめて伝染しやすく、激しい嘔吐や下痢を起こす腸炎が特徴的な症状です。高熱、食欲不振、急激な脱水を伴い、死に至ることもあります。ワクチンの接種を終えていない幼い子犬は感染のリスクが高いため注意が必要です。犬のパルボウイルスは、1978年に発見された比較的新しいウイルスで、猫や野生動物のアライグマやミンクなどが感染する類似ウイルスの変異型が起源と考えられています。
この感染症について、犬の飼い主として是非知っておきたい情報をご紹介します。
メルク獣医マニュアル に犬のパルボウイルスについて執筆しているトロント動物救急クリニックのケリー・D・ミッチェル獣医師によると、感染リスクが高いのは、6週齢から6か月齢までの子犬、そして年齢にかかわらずワクチンを全く接種していない犬や、接種していても不完全なケースでは非常に感染しやすいとのことです。彼女はまた、以下のような特定の犬種でリスクが高い傾向があるとしています:
適切にワクチンを接種している母犬から生まれた6週齢未満の犬は、通常母乳に含まれる移行抗体によってこのウイルスから守られています。母犬がもともと保有する抗体が不十分だったり、何らかの理由で初乳を十分に摂取できないケースでは、それよりも早く移行抗体が消失してしまうこともあります。

子犬は生後1年間、ワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成犬は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢犬や特別なケアが必要な犬は、より頻繁な検診が必要になる場合があります。
犬がパルボウイルスに感染した場合、一般に感染してからおおむね3~10日後に症状が現れ始めます。子犬にパルボウイルス感染が疑われる症状には次のようなものがあります:
このウイルスは分裂が盛んな細胞を標的にするため、腸管の細胞が傷害されることで腸炎となり、激しい下痢や嘔吐によって犬は極度の脱水状態になります。また、白血球や赤血球などの血液細胞も障害を受けることもあり、白血球減少症や貧血等の重篤な症状を伴うこともあります。この感染症の疑いがあるときは、直ちに動物病院に連れて行くことが重要です。できるだけ早期に治療できるかが重要になります。
このウイルスは伝染力が強く、一般に糞便や感染した土壌を介して口から体内に入り込みます。パルボウイルスは非常にしぶとく、屋内や土の中で2か月以上も生存することができ、さらに熱、低温、湿度、乾燥にも耐えることができます。
「ウイルスは感染した犬の糞便の中に存在し、ごく微量の糞便でも他の犬を感染させることができます。このウイルスは、犬の毛や足にくっついたり、あるいは汚染されたケージや人間の靴、またその他の物品を介して、容易に場所から場所へと伝達されます」と、米国獣医師会 は警告しています。
罹患した犬の糞便内で数週間も生存するため、感染が確認された犬は隔離し、このウイルスと接触した可能性のある場所や物はすべて消毒する必要があります。子犬やワクチン未接種の犬の場合には特に細心の注意が必要です。万一、このウイルスと接触してしまった可能性がある場合には、対処方法について獣医師と相談してください。
このウイルスに対する特効薬があるわけではないので、対症療法が基本になります。症状が急激に進行することが多いので、入院により集中的に静脈内輸液を実施して失われた水分や電解質を補給し、下痢や嘔吐止め、二次感染を防ぐための抗生物質等が投与されます。
前出のとおり、パルボウイルスの感染が疑われる際にはできるだけ早く治療を開始することが重要です。ミッチェル獣医師は、適切な治療を適切なタイミングで受けることができれば、感染しても68~92パーセントは回復する、と書いています。また、発症後の初めの3~4日を乗り切ることができれば完全に回復できる傾向がある、とも言っています。
この感染症の予防は、適切なタイミングで子犬にワクチンを接種することです。ワクチン接種のプログラムが完了するまでは、外を歩かせたり、他の犬との接触はしないようにします。保護犬などの場合には、ワクチンの接種が終わるまでは、 ドッグランのようなほかの犬と接触する可能性が高い場所へ犬を連れて行くことはやめましょう。
パルボウイルス感染症についてご理解いただけたでしょうか。恐ろしい病気ですが、ワクチンによって防ぐことのできる病気ですから、必ずワクチンを接種しましょう。なお、個別の状況によって必要となるワクチンの回数が異なることもあるので、1回接種したからといって安心せず、都度獣医師に相談しましょう。
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