犬の薬の飲ませ方:方法とコツ

執筆: ラシ・シャイブル獣医師
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ペットに最適なフードを見つけましょう。

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どんなに健康でも、時にはお薬にお世話になることがあるのは、人間も犬も同じことでしょう。でも、犬が人間と違うのは"これを飲めば良くなるから我慢する"といったことまで理解してもらうことはできないことです。結構な食いしん坊なワンちゃんでも、フードに混ぜてもそれだけをきれいに残したり、コソっと吐き出したり。きっとお困りの飼い主さんも多いことでしょう。

犬が薬を飲んでくれないのは何故なのでしょうか。単にまずいから、イヤなにおいがするから、大きすぎる、あるいは量が多くて飲みにくい、いつもと様子が違うから、などなど・・・。これらはすべて犬が薬を嫌がる理由に当てはまります。このようなことを前提として考えながら、犬にスムーズに薬を飲ませるコツを獣医師がご紹介します。薬の内容や、個々の犬の性格によって使い分けて、愛犬にベストな方法を習得してください!

犬に錠剤を与える方法:ミートボール法(好きなおやつに混ぜる)

人間の子どもに薬を飲ませるために、アイスクリームやゼリーに混ぜて与えるという方法がありますが、これと同じ考えを犬にも当てはめることができます。獣医師がその薬を食べ物と一緒に与えてもいいと言ってくれた場合は、そのカプセルや錠剤を手作りおやつの中心に埋め込んで与えることができます。これには、缶詰フードや火を通した赤身の肉、チーズ、ピーナツバターなど、犬が大好きな食べ物で薬を包めるものなら何でも使えます。錠剤をくるんで、いわゆるミートボール、チーズボール、ピーナツバターおやつを作ります。投薬するために犬が太ってしまってはいけないので、カロリーを考えて、ここでは赤身の肉か缶詰フードが理想的でしょう。また、犬の投薬用に特別に作られた専用のおやつも販売されています。動物病院やペットショップに相談してみてください。なお、生肉はサルモネラ菌のような細菌汚染による食中毒の心配があるため、愛犬に錠剤を与えるときに生肉を使うのは勧められません。

このミートボール法は、最初から喜んで受け入れてくれることが多い、犬たちには評判の良い方法です。これでうまくいくなら、犬も人もストレスが少なく、一番簡単な方法になります。やや警戒心の強い犬の場合は、錠剤の入っていないただのミートボール(おやつボール)を与えて信頼を得てから、錠剤を入れたバージョンを与えるというようなひと手間が必要かもしれません。

食べ物を使えないとき

錠剤を食べ物と一緒に与えられないとき、あるいは極めて敏感なタイプの犬で、おやつに混ぜても、察知してしまって錠剤を吐き出してしまうときは、やはり直接与えなければなりません。薬を与えるのは以下の手順を参考にしてみてください。本番の薬を使う前に、まずはおやつやフードで練習しましょう。とにかく与える時には、"さりげなく"することが大事です。

  1. 必ず犬と同じ方向を向くようにして、後ろから近付いて犬の横に立ちます。それから利き手におやつを持ちます。対面すると、犬は"何かされるかも・・・"と感じて警戒しやすくなります。
  2. 利き手ではない方の手の親指とその他の指で犬の上顎を両側から持ち、利き手で下顎を引き下げます。利き手にはおやつも持っています。犬の口は、下顎を引き下げることによって開かせるよう努めてください。上顎を引き上げて口をこじ開けようとしてはいけません。 小さな黒と白の犬が人間の手から錠剤をなめます。
  3. 犬にこの新しい方法に慣れてもらうために、ここでおやつを舌の奥の方に入れます。おやつを舌の奥に向かってポンと入れるときには手を下顎から一時離さなければならないため、できるだけ素早く行ってください。この操作では手を犬の口の中に一瞬入れる必要があり、常に噛まれるリスクがあるため、必ず細心の注意を払いながら行わなければなりません。わざわざこのようにしておやつを与えるのは、このちょっと変わった方法が恐いことではないことを犬に理解してもらって、落ち着いた状態で犬に対応してもらうためなのです。こうすることで犬は、ちょっと協力すれば自分の利益になることを覚えてくれます。このような手順に最初にどのくらい手こずるかによりますが、奮闘せずに錠剤を与えられるようにするためのトレーニングとして、おやつまたは普段のドッグフードを用いてこの手順を繰り返してください。
  4. 飼い主も犬も「口を開けておやつを入れる」手順をマスターできたら、いよいよ錠剤を使った本番に挑んでみましょう。錠剤は、できるだけ舌の奥の方、できれば舌の付け根に置いてください。
  5. 犬が薬をうまく飲むことができたら、必ずほめ言葉とおやつを与えるようにしてください。とりわけ不安感の強い犬の場合は、最初に錠剤の代わりにおやつを使った訓練を繰り返し、おやつを受け入れるたびにほめるようにします。犬にとってうれしいことと、錠剤の服用経験をうまくリンクして覚えてもらうことで、その行為に対する犬の抵抗をなくしていくことに役立ちます。

この方法は、犬の口に直接触れるといった、ちょっとしたスキルが必要なため、自分でやってみる前に、獣医師にお願いして一度実演してもらった方がいいかもしれません。うまく犬の口の中に錠剤を入れることができたら、利き手を素早く下顎に戻して、犬の口をしばらく閉じたままにするよう優しくコントロールしてください。犬の鼻に息を吹きかけたり、喉を優しくなでたりすると、薬の飲み込みを促すことができます。ほとんどの犬は、錠剤を飲み込んでしまうと自分で鼻を舐めます。飲み込んだかどうかが分かりにくい犬の場合は、錠剤を吐き出さないか、しばらく観察するようにしてください。

その他の形態の薬

上記の方法を試してみてもうまくいかない場合は、薬の形態を変更してもらう方法もあります。薬の形態には、錠剤のほか、一般的には液体や粉があります(薬の内容によって、形態を変えることが難しい場合もあります)。液体の場合は、注射器や専用の投薬器の先を犬の口の左右どちらかの奥歯の近くに差し込んで投与することができます。頬袋も、液体を投与する場所としては良いポイントです。メルク獣医マニュアルは、犬の頭をやや上に向けて支えると吐き出し防止に役立つ、と説明しています-このコツは、犬に錠剤を与えるときに特に重要です。最後に、愛犬への薬の投与に困っているときは、包み隠さず正直に獣医師に伝えることが大切です。獣医師は、飼い主と犬の両方がリラックスして安全に投与できるように、処方内容を再検討したり調整したりします。別の形態の薬を処方することができない場合でも、獣医師は長年の経験から学んできた独自のコツや秘訣を伝授してくれる可能性もあります。

いかがでしたか。スムーズに犬が薬を飲んでくれないと、人間の方もだんだんムキになってきたりして、余計に悪循環になります。個々の犬によって、受け入れられる許容範囲が異なりますから、性格や好みをよく把握して薬の形態や投薬方法を獣医師と相談するのが良いでしょう。

Contributor Bio

ラシ・シャイブル獣医師

筆者紹介
ラシ・シャイブル獣医師

 

法学修士(MSL)と認定獣医学ジャーナリスト(CVJ)の資格も持つ小動物獣医師であり獣医学ライター。これまでペットの飼い主の教育に貢献してきたことで多数の受賞歴があり、遠隔獣医療の専門家の第一人者として知られています。

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