犬のうっ血性心不全の管理

執筆: ジーン・マリー・バウハウス
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もし獣医師から、愛犬が"うっ血性心不全"と告げられたとしたら、飼い主としてはショックを受けてしまうのは無理もありません。悲しいことに、多くの小型犬種と一部の大型犬種、そして特に高齢ではこの病気を発症しやすい傾向があります。でも、正しい治療を受けて生活習慣をきちんと管理することで、症状を悪化させずに快適に日常を過ごすことが可能です。そこで重要になるのが、大切な愛犬がこの病気になったとき、その症状にいち早く気づいて早期に治療を始めることです。併せて、日々の生活習慣で気を付けることや心がけたほうがよいことなどを獣医師にアドバイスをもらい実践することで、愛犬とより長く一緒にいられることにつながります。

犬のうっ血性心不全とは?

Brown pug naps in a red dog bed on the floor.

うっ血性心不全(CHF[congestive heart failure])は、心臓が血液を全身に十分に送り出すことができず、体内に滞留(うっ血)してしまった状態を言います。様々な原因によりこの状態になると、全身への十分な酸素供給が妨げられ、呼吸が困難になったりむくんできたりなどの症状が出ます。犬ではCHFの主なタイプとして次の2つがあります。

  • 右心不全(うっ血性右心不全:RS-CHF[right-sided CHF])。本来、心臓が収縮すると、右心室からの血液が肺に送られて酸素が取り込まれます。それが何らかの理由で肺にうまく血液を送り出せず、右心系(右心房や右心室)に滞留してしまうことで、この右心不全が起こります。その結果、体循環系がうっ血し、腹腔内に水分が貯留して内臓の正常な機能を妨げます。過剰な水分は四肢に蓄積することもあり、末梢性浮腫と呼ばれるむくみを引き起こします。
  • 左心不全(うっ血性左心不全:LS-CHF[left-sided CHF])。本来であれば、心臓が収縮したときに左心室からの血液が体循環系へ送られます。それが何らかの理由により、全身へ血液を送り出すことができず、左心系(左心房や左心室)に滞留してしまうと、その前の血液の経路である肺に負荷がかかってしまうことでこの左心不全が起こります。肺組織に水分が漏れ出して肺水腫と呼ばれる状態を引き起こし、これが咳と呼吸困難等の症状につながります。犬のCHFではもっともよくみられるタイプです。

犬のうっ血性心不全の症状

Pet Health Network によると、愛犬がうっ血性心不全の可能性がある場合によくみられる症状には次のようなものがあります。

  • 持続的なパンティング
  • 呼吸困難
  • 速い呼吸(特に安静時)
  • すすんで動きたがらなかったり運動を嫌がったりする
  • 散歩しているときや遊んでいるときに疲れやすくなった
  • 倦怠感
  • 歯茎の色が青白い
  • 腹部膨満
  • 喀血
  • 失神

これらの症状に気づいたら、すぐに獣医師に診てもらうようにしましょう。

うっ血性心不全の原因

Jack Russell Terrier asleep under white sheets with head on pillow.
Love to Know によると、トイ・プードル、ポメラニアン、ダックスフンド、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどの多くの小型犬は、大型犬に比べると心臓弁の弁が変性しやすく、CHFを発症しやすい傾向があるとされています。ただし、一部の大型犬種、特にセント・バーナード、グレード・デーン、ドーベルマン、ボクサーなどの大型~超大型犬種は拡張型心筋症とよばれる心疾患によりCHFを発症することがあります。小型犬では、高齢になってからの発症が一般的ですが、大型犬の場合は中年齢で診断されることが多いようです。いずれにしても、明らかな症状が現れ始めるまでは病気であることが分かりづらい病気です。

CHFは他の心臓病が原因となって発症することもあるため、ペットを心臓病 にしないためにできること(肥満予防やフィラリア予防など)を実践しておくことが重要です。

診断と治療

診察により、愛犬に心雑音やその他の心臓の異常が見つかった場合には、獣医師はさらに詳細な検査を実施したり、状況に応じて専門医を紹介したりするでしょう。CHFを診断するための一般的な検査には、胸部X線、心電図、超音波を使用する心エコー検査が含まれます。他疾患や併発疾患の可能性を除外するために(心臓病と腎臓病が併発していることはよくあるため)、血液検査と尿検査も実施されるでしょう。

呼吸困難が見られる場合、獣医師は犬が自力で十分に呼吸ができるようになるまで酸素療法を行うことがあります。症状の程度によっては、入院が必要になることもあります。タフツ大学カミングス獣医療センター によると、継続的な治療として、おそらく数種類の投薬を受けることになります。これには、肺や体に貯留した余分な水分を除去するための利尿薬、CHFの犬の臨床症状を改善して生存期間を延長させることが示されているアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、血管を弛緩させて心臓が血液を送り出しやすいようにする血管拡張薬等が含まれます。患者の症状に応じて、心臓の収縮力を強化して血流を改善するために、強心薬と呼ばれるタイプの薬剤が処方されることもあります。

生活習慣の管理

投薬は、うっ血性心不全の犬の治療の一部に過ぎません。まずは愛犬の食事について獣医師に相談しましょう。獣医師は、愛犬の病態に応じた栄養のニーズと、最適なナトリウム制限のレベルに基づいて、適したフードを勧めてくれます。プリスクリプションダイエット は、ナトリウムの量が適切に調整され、栄養素のバランスが取れており、健康維持に必要なビタミン類が含まれているため、心疾患の栄養管理に役立ちます。また、心臓と肺の定期的なモニタリングや、利尿薬などのある種の薬剤を使用している場合は腎機能 のモニタリング等のために、各種の定期検査が必要になることもあります。さらに、家庭でのケアに役立つように、ペットの安静時の呼吸数のモニタリングする方法と、それが正常より増加しているときにするべきこと獣医師にたずねておきましょう。加えて、犬の環境内にあるストレスをできる限り減らしたりなくしたりする必要もあります。日常のお散歩程度の適度な運動は問題ないことがほとんどですが、思いっきりダッシュする等の過度な運動や、犬が望む以上に頑張らせたりしないよう注意が必要です。

予後

残念ながら現在のところCHFを完治させる方法は存在せず、治療は主として生活の質の向上を目的としたものになります。とはいっても、かつてはうっ血性心不全の犬の予後はよくありませんでしたが、現在ではこの病気の治療に用いられる医薬品の進歩により、予後は大きく向上しています。家庭での注意深い細やかなケアと生活習慣の管理は、より長い期間症状を悪化させず快適に日常を送るために大いに役立ちます。この病気を発見して治療を開始するのが早ければ早いほど、愛犬の寿命を延ばせる可能性は高くなります。

心臓の病気は命と直結するという深刻なものではありますが、早期の診断と治療、適切な生活習慣の管理とケアによって、愛犬とより長く一緒に楽しく過ごすことができます。飼い主として犬にしてあげられる一番のことは、年に一度は必ず健康診断を受け、獣医師の指示に従うことです。そのときには、おやつを含めて栄養が適正かどうか、飲み水や運動はどのくらい必要か、より健康的な生活を送るために必要な追加のケアはないか、などについて獣医師に尋ねるといいでしょう。

Contributor Bio

Jean Marie Bauhaus

ジーン・マリー・バウハウス

オクラホマ州タルサ在住のペットオーナーでもあり、ペットブロガー、兼小説家。いつもペットたちに見守られながら執筆活動に勤しんでいます。

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