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犬のマウンティングとは、相手や物に対して前足をかけ、腰を振る行動のことを指します。これは犬の本能的な行動の一つであり、品種を問わず見られます。マウンティングにはさまざまな理由があり、状況によっては適切な対処が求められることもあります。
メス犬もマウンティングを行います。マウンティングはオス犬特有の行動と思われがちですが、実際にはメス犬にも見られる本能的な行動です。もしマウンティングが見られても問題行動ではありませんが、過剰に、頻繁に行うようであれば後述する要因を確認してみてください。
オスメスかかわらず、犬はどうして腰を振ってマウンティングをするのでしょうか。犬がマウンティングする理由は、以下の通り発情期に見られる性的興奮によるものと、それ以外に大きく分類できます。
最もよく知られているのは、発情期に見られるマウンティングかと思います。発情期に犬が腰を振るのは、異なる性の犬に対して発情を知らせたり、注意を引くという意味があります。
発情期でなくとも、犬は腰を振ってマウンティングすることがあります。「発情期でもないのに、避妊去勢処置をしたのに」と疑問を持たれる方もいますが、マウンティングは発情期だけに見られるものではありません。自分が家の中で最高順位だという優位性を示すためであったり、興奮やストレス発散など様々な理由で犬は腰を振ることがあります。それ以外にも、もっと遊んでほしいと飼い主の注意を引くときも腰を振ることがあります。例えば、愛犬がゴロゴロ寝そべっていた後やウロウロ歩き回った後にマウンティングを始めた場合などです。
犬のマウンティングに関して、よくある質問について紹介します。
犬が人の足に腰を振るのは、本能的な行動や興奮、ストレス発散などが主な理由で、必ずしも性的な意味だけではありません。無理に引き剥がさず、無反応で離れたり、コマンドで落ち着かせる等の対処をとりましょう。
男性よりも女性のほうが、犬にマウンティングされやすいということを示す根拠は特にありません。よく、男性にはない女性特有の匂い、またはホルモンに興奮してということも耳にしますが、特にそのようなことはありません。
前述の通り、犬は性的興奮以外の理由でもマウンティングをします。ぬいぐるみやクッションに対して腰を振る場合は、楽しくて興奮している、ストレス発散といった理由が考えられます。主従関係を示す目的でマウンティングすることもありますが、ぬいぐるみやクッションに対してそのような理由で腰を振ることはありません。

子犬は生後1年間、ワクチン接種のために複数回の通院が必要になる場合があります。成犬は一般的に年に1回の検診が効果的ですが、高齢犬や特別なケアが必要な犬は、より頻繁な検診が必要になる場合があります。
マウンティング自体は決して悪いものではありませんし、1日1~2回程度マウンティングする程度なら過剰でもありません。しかし、犬自身や飼い主、周囲の犬友達に悪影響があったり、迷惑がかかったりする場合には、やめさせた方がいいケースもあるでしょう。マウンティングを少なくしたり完全になくす方法にはどんなものがあるのか見ていきましょう。
マウンティングはメス犬が最初の発情期を迎える頃に始まることが多いです。そのため、多くの獣医師は、マウンティング予防のために、この頃までに避妊または去勢手術を受けさせる ことを勧めています。不妊処置はマウンティングを予防し、予期しない妊娠を防ぐだけでなく、精巣がんや乳がんなどの性ホルモン関連性疾患のリスクを減らすことにもなります。ただし、不妊処置済みの犬でも時々マウンティング行動を示すことはあります。
処置がまだの愛犬を持つ方は、犬の避妊手術に関する情報をまとめたこちらの記事をご覧ください。
ASPCA* は、すべての犬に、好ましくないものに手を出させないようにする「leave it(手を出すな、放っておけ)」というコマンドを早くから教えることを勧めています。愛犬がこのコマンドを覚えてくれたら、家具、他の犬またはお客様から離れなさい、と合図することができます。愛犬が何かにマウンティングしそうな気配(擦る、舐める、クンクン鳴くなど)が見られたら、「leave it」と言って、おもちゃや犬にとってもっと魅力的な遊びで気をそらすようにします。これを身に付けさせるトレーニングには少し時間がかかるかもしれませんが、好ましくないマウンティングをやめさせるには、おそらく一番簡単な方法です。
犬のマウンティングは基本的に正常な行動ですが、時には隠れた他の問題のサインである場合もあります。どのようなマウンティングを注意したらいいのか、いくつか紹介します。
犬がマウンティングしたり、過剰に性器を舐めたりする場合は注意が必要です。皮膚のアレルギー症状や尿路感染症などで違和感があるためにそのような行動をしている可能性があります。マウンティングに加えて、お尻を気にして舐める、頻繁に排尿する、排尿しにくいなどの行動に気づいたら獣医師の診察を受けたほうがよい、とASPCAは言います。
前述の通り、犬はストレスを緩和するためにマウンティングすることがあります。新しいペットや赤ちゃんが家族に加わった、あるいは最近仕事のスケジュールが変わったりしていませんか。毎日の日課のほんの些細な変化でさえ、時には犬にとってストレスにつながることがあり、ストレスに対する反応は犬によっていろいろです。犬が不安を感じる可能性のあることがないか、一度ゆっくり考えてみましょう。そして、新たな日課に犬が早く慣れてくれそうなことを考えてやってみましょう。ストレスからくるマウンティングを長く放置すると、マウンティング癖がついてしまい直すのが非常に難しくなることがあります。
マウンティングに繋がっている可能性のある原因をすべて排除しても、問題を解決できない場合はどうしたらいいのでしょうか。マウンティングが癖になっている犬の場合、専門家による服従トレーニングを受ける必要があるかもしれません。集団社会化トレーニングのような新しい手法や、専門家による1対1のトレーニング、あるいはタイムアウト法(好ましくない行動をしたときに犬をしばらく完全無視する方法)の導入がおそらく必要になってくるでしょう。獣医師にマウンティングの医学的な原因を除外してもらったら、次に行うべきアプローチについてもアドバイスしてもらいましょう。
オスメスかかわらず犬はマウンティングをします。そして、犬がマウンティングする理由は様々で、対処法も異なります。医学的問題を解決することはもちろんですが、犬の個性や性格を見極めてその犬に合った対処法を選択することで犬と人間との正しい関係を築くことが解決の鍵です。
*参照先:
https://www.aspca.org/pet-care/dog-care/common-dog-behavior-issues/mounting-and-masturbation
プロフェッショナル獣医学術部
プロフェッショナル獣医学術マネジャー
日本ヒルズ・コルゲート株式会社
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