小型犬のシニア犬に合う食事とは

執筆: エマ・ミルン獣医師(BVSC、FRCVS)
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フェンスの向こうから現れた黒と褐色の犬。ジャンプして宙を舞い、まるで立っているかのように見える。

ペットに最適なフードを見つけましょう。

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「小型犬」とは、地域によって多少の認識の違いはあるかもしれませんが、だいたい成犬で約12~15kgを超えない犬種を指します。そして、「シニア犬」とは何歳から当てはまるのかは、サイズによってやや異なります。一般的に小型犬は大型犬よりも長生きです。そのため、たとえばラブラドールでは7歳でシニア犬と見なされるかもしれませんが、ジャック・ラッセル・テリアのような小型犬ではおそらく9歳から10歳になるまでシニア犬とは見なされないでしょう。

一般的な小型犬の食事、そして中型犬以上の大きさの犬たちとの違いについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。小型犬には一般的に次のような形態学的、あるいは生理学的な特徴があります。

  • 大型犬と比較すると新陳代謝が速く、体重1kgあたりのカロリーをより多く必要とする。

  • 大型犬より早く成熟するため、必要とするミネラルバランスが少し異なる。

  • 口が小さい(フード粒のサイズ調整が必要。)

  • 大型犬よりもストレスを感じやすい傾向がある(不安を和らげるのに役立つ成分を配合したフードが役に立つ場合がある。)

  • 大型犬よりも平均寿命が長い(細胞老化や消耗という生理現象に対抗し、健康維持をサポートする抗酸化成分を多く摂取することが望ましい。)

シニア犬には成犬とは異なる食事が必要

犬も人間同様に歳をとるにつれて変化していきます。身体の機能は少しずつ効率が低下し、関節炎のような変性疾患が起こり始めます。徐々に活動的ではなくなり、運動能力が低下していきます。近年、犬の寿命が伸びているのは、もちろん獣医療の進化によることもそうですが、栄養面の向上も大きな理由のひとつでしょう。適切な時期にシニア犬用フードへ切り替えることで、シニア犬にとって理想的な栄養をバランスよく摂取することができます。シニア犬用ドッグフードには、一般的に次のような特徴があります。

  • カロリー控えめ:一般的に、シニア犬は運動機能にトラブルがあるケースも多く、活動性が低下するため、体重が増えやすくなります。過剰な体重はただでさえ足腰に負担になりますが、関節に問題がある場合にはさらに事態は深刻です。言うまでもないことですが、適正な体重を維持することは非常に重要です。カロリー控えめでも、満足感を得られるように工夫されているフードもあります。一方で、歯のトラブルやそのほかの健康問題による痛みなどで食欲が落ちてくることもあるでしょうし、さらに年齢を重ねたハイシニア犬では、自然に筋肉量が減って体重が減少してくる傾向もあります。健康的な体重維持が大切、という点では同じですが、個々の状況に応じてフードに求める内容は異なってくるので、フード選びは獣医師と相談しながら行ってください。
  • たんぱく質とミネラル成分を適切に調整:シニア犬になると、内臓機能の効率が少しずつ低下し、心臓や腎臓などのトラブルが生じやすくなります。たんぱく質やミネラルの量を適切に管理することで、これらの内臓への負担を軽減することができます。筋肉量の維持のために、たんぱく質は高品質で消化しやすいものでなければなりません。
  • 抗酸化成分とオメガ3脂肪酸の増量:抗酸化成分は細胞の老化に対抗するのに役立ち、オメガ3脂肪酸は抗炎症作用をはじめとして生体にとって多くの有用な作用があります。これらの成分は、脳の老化や認知機能障害に対しても役立ちます。

小型犬のシニア犬に合う食事とは

基本的に食事を変更する際には、その理由も含めて獣医師に相談しましょう。また、切り替えは特別な指示が無い限り、必ず5~7日かけて徐々に行うようにしましょう。これは突然の変更によって消化不良を引き起こすのを避けるためです。

そして、理想は小型犬のニーズとシニア犬のニーズをどちらも満たすフードです。バランスの取れた総合栄養食であり、犬が必要とするすべての栄養素を適切な割合で含有していることが条件です。犬と飼い主の好みに合わせて、与えるのはウェットフードでもドライフードでも、その組み合わせでも構いません。シニア犬は、口内のトラブルや体調不良などで食欲が落ちることもあるかもしれないので、その場合には食べやすいウェットフードを上手に取り入れるとよいでしょう。

食べやすい環境を整えてあげることも、シニア犬には必要な配慮になります。たとえば、フードと水のボウルを段差や専用台の上に置いて少し高さを出してあげるのもよいでしょうし、シニア犬にとって滑ることはとても危ないので、床に滑り止めの工夫を施すことも検討してください(特に食事場所では)。これらの配慮によって足腰が弱ってきていても食べやすくなります。また、胃腸への負担を考慮して、1回の食事量を減らして食事回数を増やすのもよい方法です。

最近では、小型犬用でさらにシニア犬向けのドッグフードの種類も増えて選択肢が広がっています。食生活は健康の基本ですから、獣医師と相談しながら、愛犬に合う最適なフードを見つけてくださいね。

監修:ハイン・マイヤー博士(DVM、PhD、Dipl-ECVIM-CA)