ヤマアラシの棘が犬に刺さってしまったら?

執筆: カーラ・マーフィー
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ペットに最適なフードを見つけましょう。

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ヤマアラシというと、動物園でした見たことがない、という方もいらっしゃるかもしれませんが、世界にはヤマアラシが生息している地域があり、そういった地域で暮らしているペットたちは、ヤマアラシの被害にあってしまうことがあります。ヤマアラシのもつ棘(針毛)は体毛が変化したもので、実にあの体に3万本以上生えています。危険を感じたときに体当たりして、相手を刺したらすぐに体から抜け落ちるという、ヤマアラシにとって都合のいいようにできています。たまたま遭遇してしまった場合、犬はたいてい単なる好奇心から、追いかけたりちょっかいを出したりしてしまい、刺されてしまうといったことがあります。

Porcupine on dead log eating flowers and grass

安易に抜こうとしてはいけない

ヤマアラシにとっての防御機構であるこの棘は、単なる棘ではなく、相手に最大限のダメージを与えられるようにできています。というのも、それぞれの棘の先には、矢尻や釣り針のように小さな返しが付いていて、それが皮膚に刺さると、抜くのが難しく痛みも伴います。

そのため、リバーロード獣医科クリニックは、飼い主さんは自分で棘を抜こうとはしないでください、とアドバイスしています。リバーロードクリニックは、ヤマアラシに出会って被害に遭ってしまったさまざまな動物たち、犬だけでなく、猫や馬、羊、牛も治療したことがあると言います。

万一、犬にヤマアラシの棘が刺さってしまったときには、すぐに動物病院を受診しましょう。おそらく痛いので、何とか棘を取ろうとして犬が足で搔いたりこすったりするかもしれませんが、そうするとさらに棘が奥に刺さったり折れたりして、ますます抜くのが難しくなることがあります。棘は、刺さっている時間が長くなればなるほど脆くなって、取り除くのが難しくなります。

このような怪我をした状態の犬は興奮してパニックになってしまっていて、人を咬んだり暴れたりする可能性があること、また刺さっている棘の数によっては、獣医師は安全に処置を行うために、鎮静剤や鎮痛剤、あるいは麻酔薬を使用することもあります。さらに、ヤマアラシは狂犬病ウイルスを保有していることが知られているので、狂犬病ワクチンの追加接種も行うことになる、とリバーロード獣医科クリニックは言います。感染のリスクを考慮して、抗生物質が処方されることもあります。

棘は外傷だけではなく、体内にダメージを与えることも

ヤマアラシの棘は、その返しのせいで犬の軟部組織に引っかかってしまい、時間の経過とともに徐々に体の奥にまで移動してしまうおそれがあります。とくに顔や足裏などの場合には、犬が動けば動くほど、棘が折れてさらに奥深くに入ってしまう可能性が高くなるわけです。獣医師の診察を受けるまでは、できるだけ犬が激しく動かないように、静かに落ち着かせておくようにしておきましょう。

ルサーン動物病院によると、この棘は、関節に入ったり、体の内部にまで入りこんで内臓を傷つけたり、さらには化膿して膿がたまり膿瘍になってしまうこともある、と警告しています。獣医師は、傷の状況や受傷後の時間の経過に応じて、体の深部の棘の場所を特定するために超音波検査など必要な検査を実施します。とにかく大事な事は、ヤマアラシに遭遇してその棘で怪我をしたときには、すぐに動物病院で診てもらうことですが、このような緊急時に備えて、かかりつけの動物病院のほか、救急病院についても事前に調べておきましょう。

できるだけヤマアラシと遭遇しないために

犬がヤマアラシと遭遇して、その棘に刺されないようにするためには、やはりヤマアラシの習性を知っておく必要があります。マサチューセッツ動物虐待防止協会-エンジェル動物医療センター によると、この猫ほどの大きさの草食動物は、専ら草花、果実、樹皮を食べ、主に夜行性のため日中の多くは巣穴や中が空洞になっている丸太の中で眠っています。普段は穏やかな顔つきをしているものの、警戒心が強く気性が激しいといわれています。そのため、ヤマアラシの活動中である夕暮れ時から夜明け頃までは、ヤマアラシが生息していそうな木がうっそうと生い茂った場所には犬を立ち入らせないようにするのが賢明です。

ヤマアラシがしばしば出現することが分かっている場所、特に巣穴の存在が疑われる場所には、ペットを近寄らせないようにしてください。Canadian Veterinary Journal に掲載された、ヤマアラシと格闘して獣医師の診察を受けた犬296頭に関する研究によると、ヤマアラシとの遭遇は春と秋に顕著に増加していました。

飼い主にできる最善策は、愛犬を常にリードでつないでおくこと、そして地域の野生動物との遭遇を避けられるように周囲の状況をよく知っておきましょう。それでも愛犬がヤマアラシと接触してしまったときは、すぐに動物病院に連れて行き、適切な治療を受けることが大切です。

Contributor Bio

Kara Murphy

カーラ・マーフィー

ペンシルベニア州エリー在住のフリーライター。ゴールデンドゥードゥルのマディーと暮らしています。

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