
キャットフードと食物繊維
ペットに最適なフードを見つけましょう。
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食物繊維といえば、お腹の調子を整えて便通を改善する、ことがよく知られていますが、今やそれだけではなく、健康を維持するのにさまざまなメリットが知られるようになっています。そして、これは人間だけのお話ではありません。
実際、市販されているキャットフードの多くに食物繊維が配合されています。食物繊維は、猫の消化機能を整え、便の質の改善に役立ちます。さらに食物繊維を多く含む食事は、便秘や下痢のほか、糖尿病の管理や、肥満の際の体重管理にも有用です。
腸内微生物とキャットフード中の食物繊維の相互作用
腸内マイクロバイオームとは、猫(犬、人間などの他の生物も含めて)の消化器系に住む何億もの微生物(細菌だけではなく、原虫、真菌、ウイルスも含む)のことを指します。微生物で形成されたこの体内の生態系は、消化機能に重要な役割を果たしています。
ペットの大腸に住む細菌は、消化できない食物を分解し、ビタミンなど体にとって大切な物質を作り出しています。この機能が最も発揮されるのは、食物繊維の分解です。細菌は発酵と呼ばれる方法でペット自身が消化できない食物繊維を分解しています。
適度な食物繊維は、猫の健康維持に多いに役立つのです。
キャットフードに使われている食物繊維の分類
食物繊維にはいくつかの分類法がありますが、その1つが水に溶けるかどうかです。水溶性食物繊維は胃液や水に溶けやすく、その一部はゲル状になり、水分を保持することで便を柔らかくして、排泄しやすくします。もう一方の不溶性食物繊維は、腸の内容物のカサを増すことで、腸管内の内容物の通過速度を調節します。また、便の硬さや量を増やします。水溶性繊維も不溶性繊維も微生物による発酵を受けるため、腸内細菌がこれらの繊維質を分解して新しい物質を作りだすことができるのです。このようにして作られた物質には、腸細胞の栄養になる短鎖脂肪酸などがあります。
プレバイオティクスとキャットフード
プレバイオティクスとは、大腸まで分解・吸収されずに到達して、大腸の有益な細菌(善玉菌)のエサになって善玉菌を増やしたり、腸内環境を整えたりするもので、多くの食物繊維やオリゴ糖などが代表的です。一般的に、食物繊維を強化したフードには、このようなプレバイオティクスとなる成分が含まれています。
多くの消化器系疾患では、様々な原因によって、結果的に腸内微生物のバランスが崩れてしまい、慢性的な下痢や便秘が続いてしまっている、といったことがあります。食物繊維を強化したキャットフードの中には、いわゆるプレバイオティクスの機能を高めて、善玉菌を増やし腸内微生物のバランスを整える働きという点によりフォーカスしたものもあります。
食物繊維と疾患の管理
糖尿病の猫には、通常、高たんぱく質・低炭水化物食が推奨されますが、体重が増えやすかったり、特定の消化器系疾患がある場合には、食物繊維が強化された食事が推奨されることもあります。食物繊維には栄養素の吸収を遅らせるものがあり、炭水化物中の糖分の吸収を緩やかにすることで、血糖値が急に上昇するのを抑えるのに役立ちます。肥満気味の猫や体重が増えやすい猫の場合、食物繊維によって通常の食事よりも満腹感が得られやすくなり、体重管理がしやすくなることで糖尿病の管理にも役に立ちます。
そして、消化器疾患でも、特に大腸のトラブルの場合には、食物繊維を強化した食事が役立ちます。食物繊維は、消化管の運動と水分バランスを調節することで、便秘にも下痢にも両方の症状の改善をサポートします。さらに、食物繊維が腸内細菌に分解されることで、腸の細胞の栄養になる短鎖脂肪酸が作られます。
猫は肉食動物なのに、なぜ食物繊維が必要なのか?
自然界で生きる野生の猫は、獲物の毛や骨、すじ、羽毛、魚の鱗、胃内容物など、獲物をほぼ丸ごと食します。つまり、肉食といってもこのようにさまざまなものを食べることによって、必要なビタミンやミネラル、適量の食物繊維を摂取していることが想像できるでしょう。
猫の栄養学には科学者によって解明されていない点がまだ多く残っていますが、食物繊維は肉食動物の猫にも実際に役立つことが認識されつつあります。Journal of Animal Scienceに掲載されたチーターの食性に関する研究では、毛皮、胃内容物などを含めて獲物を丸ごとを食べた方が肉だけを食べているよりも糞便の性質がよくなることが明らかになりました。したがって、肉食動物であっても、おそらく食物繊維を消化管で利用することができるに違いない、と研究者たちは結論を出しています。
食物繊維の含有量が少ないキャットフードの役割とは
反対に、食物繊維をあえて少なくして設計しているフードもあります。獣医師がこのような食事を勧めるケースには、急性の下痢や嘔吐などを伴う疾患や外科手術後など、消化管に負担をかけない、消化のよい食事が推奨されるときです。こういったキャットフードは、一般的に電解質やビタミンB群などが強化され栄養豊富に設計されており、栄養面から猫の回復を促します。健康上気になることがなければ、基本は年齢に合った総合栄養食を与えていれば、食物繊維も適量摂取できているはずですが、いずれにしても、猫の食事のことで気になることがあれば、獣医師に相談するようにしてくださいね。
Contributor Bio

パティ・クリー獣医師
ペットの健康に関する常識にとらわれない執筆活動で知られ、数々の賞を受賞した獣医師。独創的な考え方をもち、ペットに関する啓発活動を活発に行っています。
ウェルズリー・カレッジとペンシルベニア大学獣医学部をともに優秀な成績で卒業し、高名なVMD/MBA二重学位プログラムの一環としてウォートン・ビジネススクールでMBAを取得。現在はフロリダ州マイアミのサンセット・アニマル・クリニックのオーナーです。
それに加えて、読書オタクで大の編み物マニア、熱狂的なホットヨガファン、音楽マニア、奮闘するランナー、飽くなき美食家などの顔も持っています。犬3頭、数え切れないほどの猫、2頭の保護ヤギ、そして愉快な鶏たちとサウスマイアミで暮らしています。
DrPattyKhuly.com と sunsetvets.comで執筆活動中。