猫に見られる消化器系のトラブル

執筆: サラ・ウーテン獣医師
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猫では健康でも吐いたりすることがあるので、猫でこういった消化器系トラブルはそんなに特別なことでもないと考えている飼い主さんも少なくありません。でも、猫がしょっちゅう吐く、とか頻繁に便が緩くなる、といったときには、実は病気が隠れていることもあります。食事や飼育環境を見直すことも大事ですが、やはりまずは獣医師に相談してほしいと思います。ここでは、猫に見られる消化器系トラブルと、その対策のためのヒントをご紹介します。トイレに座ってカメラを見ている生姜猫。

1.消化管内寄生虫

腸を含む消化管に寄生する寄生虫は、体の内部に寄生する内部寄生虫と呼ばれ、猫では消化器トラブルの原因となることも多いものです。こういった寄生虫の中には、たとえ室内で飼育している場合でも感染してしまう可能性があるものもあります。さらに、寄生していても無症状のこともあるため、そもそも発見しにくく、治療の機会が少ないということも問題です。猫で多い消化管内寄生虫には、回虫や鉤虫、条虫といった虫が含まれます。

猫の消化器系に侵入した消化管内寄生虫が原因となって起こる症状には以下のようなものが挙げられます。

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 便または吐しゃ物の中に虫がいる
  • 体重減少や発育不良
  • 太鼓腹(お腹が膨れる)

猫の消化管内寄生虫は、単に気味が悪いだけでなく、人間にもうつることもあります。そのため、定期的に動物病院で検査を受けることは、猫の健康維持だけではなく、公衆衛生上でもとても重要な意味があるのです。飼育環境にもよりますが、年に1~2回は猫の糞便検査を受けるようにしましょう。検査で陽性となったときは、獣医師の指示に従って、しっかり駆虫を行いましょう。

2.便秘

人間同様、猫でも便秘は問題になりやすい消化器系トラブルの一つです。便秘によって全身状態が悪くなることも多く、処置を行うにも十分な注意が必要になります。原因としては、交通事故などで骨盤を損傷し物理的に便がたまりやすくなってしまうといった単一のケースもありますが、一般的には、脱水や、大腸の運動性の低下、肥満や高齢といった様々な要素が複合的にリスクファクターとなって慢性的な便秘に進行していきます。便秘が慢性化すると、腸の本来の運動機能が低下し腸壁が持続的に拡張してしまうことによって、巨大結腸症という病態に至ります。

猫の便秘は決して放置してはいけません。何らかの異常に気づいたら、できるだけ早く獣医師に診せるようにしてください。獣医師は、その便秘の程度に合わせて適宜治療を行います。便秘傾向の猫がひどくならないように獣医師が勧める一般的な解決策は、食事を含めた生活習慣の見直しでしょう。できるだけ水分摂取を増やすために、缶詰フードの給与を推奨したり、便秘に配慮して設計されたフードへの変更やサプリメントの使用を勧められるかもしれません。また、運動量を増やしたり、過体重であれば減量を指示されることもあります。さらに、猫トイレの環境の整備(清潔に保たれているか、猫の好みやニーズに合っているかなど)についても指摘することがあります。

3.ヘアボール(毛球症)

猫のヘアボール問題は、猫を飼っている方にとってはよく知られた現象でしょう。毛繕いすることによって、自身の被毛がお腹の中に溜まって、毛玉が形成されます。いつもスムーズに消化管を通って便と一緒に排泄されてくれればいいのですが、ときには胃の中に残ったまま、あるいは腸に多くとどまってしまい、毛玉になっていきます。猫がヘアボールを時々吐く程度なら(正常とみなされるのは月に1回以下)、必ずしも獣医師に診せる必要はありません。

ヘアボール対策として、フードの変更を検討しているようなら、ヒルズでは役立つさまざまなヘアボールコントロール用キャットフードを準備しています。これらの製品は、食物繊維を強化することによって、毛玉の排泄を促し毛玉の軽減をサポートします。さらにカロリーも控えめです。私の臨床経験上、室内飼いの猫の多くは体重過多に悩んでいるため、これは優れた特徴です。ヘアボール問題が続くときは、獣医師に相談することももちろんですが、長毛種であればプロにグルーミング(ライオン風カットなど)を依頼することも検討してみてください。

あくびをしている青い襟の白猫。

4.炎症性腸疾患と慢性腸症

嘔吐、下痢、食欲不振などの消化器系症状が3週間以上続く場合、それは慢性腸症かもしれません。慢性腸症というのは、炎症性腸疾患(IBD)を含むさまざまな治りにくい消化器疾患の総称です。 IBDの原因は不明な点が多いですが、遺伝的素因や、免疫系、食事や環境、腸内微生物叢といった因子が複雑に関与していると考えられています。

IBDは、他の胃腸障害とよく似た症状であるため、診断するにはほかの可能性のある疾患を除外していく方法が重要と考えられています。現在のところ、ほかの疾患が除外された後、 内視鏡検査と腸粘膜の生検後の病理組織学的検査によってIBDの診断がなされます。一般にIBDの猫の治療管理には、ステロイド剤をはじめとした薬剤の投与と、獣医師が勧める食事療法が含まれます。 愛猫がIBDと診断されたときは、獣医師の指示をきちんと守り、再診時には猫の様子をしっかり報告するようにしてください。

5.食物アレルギー

猫では食物アレルギーは比較的まれです。食物アレルギーの場合、消化器症状(嘔吐や下痢)と皮膚症状(皮膚の痒み、紅斑、脱毛)の一方または両方が見られることがあります。猫に食物アレルギーを起こしやすい食材には、牛肉、乳製品、魚が含まれる、とタフツ大学カミングズ獣医療センターは説明しています。

獣医師が猫に対して食物アレルギーを疑った場合、通常、療法食を用いた10~12週間の食物負荷試験を実施します。この期間中は、猫にアレルギーの原因と思われる成分は入っていない、推奨されたフードのみを与えるようにして、猫にアレルギーの原因と思われるような食材は与えないようにしなければなりません。この期間中に猫が何か別のものを食べてしまうと、試験をもう一度始めからやり直さなければならなくなります。推奨のフードは、猫の反応によって適宜変更される場合もあります。食物アレルギーなら、消化器症状は通常2~3週間で、皮膚症状は8~12週間で解消します。

猫の消化器系のトラブルでは、なんといってもいち早く気付いて動物病院に連れて行くということが、まずは一番です。猫は具合が悪いのを隠しがちですから、ちょっとした変化にも気付いてあげられるように、普段から猫の様子をよく観察して把握しておきましょう。

Contributor Bio

サラ・ウーテン博士

筆者紹介
サラ・ウーテン獣医師

 

サラ・ウーテン獣医師は、カリフォルニア大学デービス校獣医学部の2002年卒業生です。アメリカ獣医ジャーナリスト協会会員のウーテン獣医師は、コロラド州グリーリーで小動物病院を開業しながら、職場の人間関係問題、リーダーシップ、クライアントとのコミュニケーションについての講演活動や執筆活動も行っています。楽しみは、家族とのキャンプ、スキー、スキューバダイビング、そしてトライアスロンに参加することです。

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