猫の嘔吐と食物有害反応について

執筆: サラ・ウーテン獣医師
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ペットに最適なフードを見つけましょう。

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猫が動物病院を受診する理由で多いものの一つには嘔吐があります。ご存知のように、猫は自分自身で毛繕いをするという習性があるので、時々嘔吐したり、その中に毛玉が混じっていたリすることは、健康な猫でも起こります。でも、定期的に、あるいは頻繁に起こるのはちょっと心配です。今回は、猫の吐き気の原因として考えられるものの中から、食物有害反応についてお話しようと思います。

食物有害反応とは、何らかの食物を摂取することによって起こる、身体にとって望ましくない反応の総称です。この中には、一般的に免疫学的な機序が働いたことによって起こるとされる食物アレルギー反応と、免疫学的機序が関与しない食物不耐症が含まれています。嘔吐や下痢といった症状を起こすという点ではこの2つは同じですが、その機序はこのように同じではありません。

玄関先であくびをする灰色の猫

食物不耐症

食物不耐症は、免疫系によって引き起こされているものではなく、食物に対する望ましくない反応で、あらゆる年齢のペットに起こり得るものを指す用語です。消化器系のトラブルに至る食物不耐症の原因には、食中毒、腐敗した魚に含まれているヒスタミン、乳糖不耐性、普段与えられないものを食べてしまうゴミ箱あさりなどがあります。つまり、体が消化できない、代謝しきれないものを摂取したときに起こります。飼い主にできることは、思い当たるような事がなかったかじっくり思い出して、獣医師と相談しながら原因を探り、再発を防ぐことです。

食物不耐症の猫では、治療を進めていくうえで食事の変更が必要になることもあります。獣医師は、非常に消化が良くできている高消化性フードへの切り替えを選択肢の一つとして推奨することがあります。

高消化性フード

消化性とは、犬や猫が食べたものをどれだけ消化して、その中に含まれる必須栄養素を吸収できるか、を意味します。消化性が「高い」とは、消化管で容易に消化しやすく吸収もしやすいということなのです。消化性にもっとも大きく影響する要因は、原材料そのもののほか、原材料の品質、そしてフードの製造に用いられる加工方法です。胃が弱く吐き気を起こしやすいペット向けとされているフードは、たいていが高消化性の原材料で作られていますが、加えて腸内細菌叢(マイクロバイオーム)のサポートに役立つ繊維も適量含んでいます。それらはまた、健康維持に必要なビタミン・ミネラル類などの必須栄養素のすべてを猫が確実に摂取できるように、完全バランス栄養食にもなっています。

食物アレルギー

食物アレルギーは、摂取した食物に対する異常な免疫系の反応の結果として起こると言われていますが、猫の食物アレルギーの病態については詳細が不明な部分もあります。一般的に食物アレルギーを起こすには、その猫にとって有害なアレルゲンに繰り返しさらされる必要があります(たとえば毎日それを食べるなど)。食物アレルギーの症状には、嘔吐や下痢、食欲不振といった消化器の症状から、皮膚の痒みや脱毛、発赤などの皮膚症状のほか、呼吸器の症状を示すこともあります。猫で食物アレルギーは比較的まれなことですが、このように複数の病態が見られる場合には疑われることがあります。

猫の食物アレルギーの原因として多いと言われるのは牛肉と乳製品です。ですが、Veterinary Practice Newsの記事によると、ほとんどの「食物アレルギー」は、単純な胃の不調を心配した飼い主による誤診、ということもいわれています。地域的な食文化の影響もあるので、結局のところ、なかなかはっきりとしたことは言えないのかもしれません。

食物アレルギーが疑われたときには?

実際に食物アレルギーが疑われた場合、獣医師が推奨する治療プランには猫用療法食が含まれています。

飼い主としては、病院にある決まったものではなく、ご自身で猫が好みそうなものから選択したいという気持ちになるかもしれませんが、食物アレルギーが疑われる場合には、それはかえって猫の食事の問題を複雑にして、獣医師が正しい治療法を見つけるのを難しくしてしまう可能性があります。

食物アレルギーを正確に診断する唯一の方法は、厳密な除去食試験です。この試験は、この猫が今まで食べてきた食事や、症状に関連したタイミングで食べていた食事などをよく考慮して食事を選択する必要があります。一般的にはこの目的のために特別に設計された療法食の中から選択されることが多いです。正しい除去食試験は約10~12週間を要し、その間、猫にはそのフードだけを与えます。つまり、獣医師から許可されない限り、おやつをはじめ、猫の歯磨き粉にいたるまで、一切与えてはいけません。もし猫が真の食物アレルギーだった場合には、問題となっている嘔吐などの症状は一般的に2~4週間程度で解消します。皮膚の痒みのような症状の解消には、もう少し時間がかかることもあります。除去食試験に真剣に取り組んでも問題が続いている場合には、食物アレルギーではない可能性もあるので、獣医師はその都度症状を観察し、必要な検査や処置をして対応していきます。

足の裏側をなめる縞模様の猫

「アレルギー反応を引き起こしにくい」、新奇タンパク質、加水分解タンパク質とは?

一般的にアレルギー反応はタンパク質に対して起こるものです。食物アレルギーでは、今まで食べてきた何らかの食べ物のタンパク質に対して身体が異物として認識し、過剰に反応してしまうことによって起きていると考えられているので、その対応策としては、今までおそらく食べたことがないタンパク質に変更するか、タンパク質として認識されないくらいに小さく分解してしまうという方法があります。

新奇タンパク質とは、一般的にペットフードの原材料として使用される機会の少ないタンパク質のことで、シカやラムといった目新しいタンパク質のことをいいます。このような原材料が使用されたフードは、一般的にアレルギー反応を起こしにくいと言えます。ただし、猫によっては反応してしまうケースもあります。もう一方の、理論的にアレルギーを起こしにくい手段としてタンパク質を小さく分解したものが、加水分解タンパク質です。これは、猫の免疫系がアレルゲンとして認識できないくらいの小さな断片にタンパク質が分解されています。食物アレルギーが疑われた際に、獣医師が除去食として推奨するキャットフードには、この新奇タンパク質が使用されているタイプか、加水分解タンパク質が使用されたタイプかの2つがあります。猫の今までの食事歴を考慮したうえで、猫の好みにも配慮し、慎重に選んでいくことが重要になります。

Contributor Bio

サラ・ウーテン博士

筆者紹介
サラ・ウーテン獣医師

 

サラ・ウーテン獣医師は、カリフォルニア大学デービス校獣医学部の2002年卒業生です。アメリカ獣医ジャーナリスト協会会員のウーテン獣医師は、コロラド州グリーリーで小動物病院を開業しながら、職場の人間関係問題、リーダーシップ、クライアントとのコミュニケーションについての講演活動や執筆活動も行っています。楽しみは、家族とのキャンプ、スキー、スキューバダイビング、そしてトライアスロンに参加することです。

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