愛犬の便に血が混じっていると、強い不安を感じる飼い主さんは多いと思います。血便は、犬の消化管のどこかで出血が起こっているサインです。一過性で様子を見てよいケースもあれば、緊急の処置が必要なケースもあります。便の色や状態、混ざり方、犬の元気や食欲によって、対応は変わってきます。

この記事でわかること

  • 犬の血便とは何か、正常な便との違い

  • 血便の種類(鮮血、ゼリー状、黒色便、下痢を伴う血便、ストレス性)と原因

  • 血便があっても元気な場合の対応

  • すぐに動物病院を受診すべきケースの判断基準

  • 血便を繰り返さないための予防と食事管理

犬の血便とは?正常な便との違い

犬の正常な便は、茶色〜こげ茶色で、適度な水分を含み、形がしっかりしています。これに対して、便に血液が混じっている状態を「血便」と呼びます。

血便は、出血している場所(消化管の部位)のおおまかな目安として、「鮮血便(下血)」「黒色便(タール便)」「ゼリー状の血便(粘血便)」の3つのタイプに分けられます。

また、原因には以下のようなものが考えられます。

  • 大腸炎:大腸が何らかの原因で炎症を起こした状態で、犬では比較的よく見られます。頻繁に便意をもよおし力む様子が見られ、ゼリー状の粘液の混じった下痢や軟便が見られることが多く、ときに血液が混じることもあります。人の食べ物をイタズラしたりなど、普段食べ慣れないものを食べたりすることで起こることが多いですが、別の原因が潜んでいることもあります。

  • 犬パルボウイルス感染症などの感染症や急性出血性下痢症候群:重度の出血性の下痢症状が急激に見られ、短期間に非常に深刻な状態に至る可能性があります。パルボウイルスについてはワクチン接種による予防が大切です。

  • 異物の摂取:異物の内容にもよりますが、骨や砂利などの鋭利な形状の場合、腸管壁が傷つき、出血してしまう場合があります。

  • 慢性の腸疾患:食事を変更することで改善する食事反応性腸症や抗菌薬によって改善する抗菌薬反応性腸症などがあります。

  • 寄生虫:消化管の寄生虫によって粘膜が傷つき出血することがあります。かかりつけの獣医師の指示に従って、駆虫プログラムを実施してください。

  • 腫瘍や(非腫瘍性の)ポリープ

  • 食物アレルギーや食物不耐症

  • 毒物:殺鼠剤などの一部の毒物は、腸管を含む全身の出血を引き起こします。

血の量がわずかでも、消化管に何らかの異常が起きているサインなので、状態をしっかり確認して適切に対処しましょう。

犬の血便の種類と原因

上述の通り、血便はその見た目から「鮮血便」「粘血便」「黒色便」のように分けられます。ここでは、それぞれのタイプについて、具体的にどのような原因・病気が考えられるのかをさらに詳しく見ていきましょう。

鮮血が混じる血便(血便・下血)

便の表面に赤い血が付着している、便の最後に血がポタポタ垂れる、便に鮮やかな赤い血が混じるといった症状が見られる場合は、主に大腸や肛門付近から出血している可能性があります。

<考えられる主な原因>

  • 大腸炎:大腸が炎症を起こしている状態。犬では比較的よく見られる。

  • 肛門周囲のトラブル・傷:肛門嚢炎や、便が硬すぎることによる肛門の傷。

  • 寄生虫感染:消化管の寄生虫によって粘膜が傷つき、出血している。

  • 腫瘍やポリープ:非腫瘍性のポリープや腫瘍。特にシニア犬(老犬・高齢犬)はリスクが高まるため注意が必要。

黒色便(タール便)

全体が黒く、ドロッとして粘り気があるコールタールのような便で、メレナと呼ばれています。

<考えられる主な原因>

  • 上部消化管の損傷:胃潰瘍、胃や小腸の炎症。

  • 異物の摂取:骨や砂利などの鋭利なものが腸管壁を傷つける。

  • 重大な疾患:腫瘍、薬の副作用、毒物(殺鼠剤など、全身の出血を引き起こすもの)。

ゼリー状の血便(粘血便)

便に透明または白っぽいゼリー状の粘液が混じり(粘液便)、その中に血液が含まれている状態です。粘液が多く、便そのものが少ないこともあります。

<考えられる主な原因>

  • ストレス:引っ越し、来客、ペットホテル、工事の音などの環境変化など。ストレスによって頻繁に力む様子が見られる。

  • 大腸炎:食事の急な変更、人の食べ物のいたずら食い、食物アレルギー、食物不耐症、寄生虫。

【タイプ別】血便の見た目の特徴と出血部位

血便のタイプ見た目の特徴考えられる出血部位
鮮血便(下血)便の表面や全体に赤い血が見られる。
トイレシーツに血が垂れることもある。
下部消化管
(大腸、直腸、肛門付近など)
黒色便(メレナ)便全体が黒っぽく、コールタールのようにドロッとして粘り気がある。上部消化管
(胃、小腸など)
粘液便(ゼリー状)透明または白っぽいゼリー状の粘液が混じり、その中に血が含まれている。大腸の炎症

 

【重要】下痢を伴う血便について(深刻な病気のサイン)

血便に激しい下痢(水様便や泥状便)が伴う場合は、上記の3つのタイプ(鮮血、ゼリー状、黒色)のどれであっても、より深刻な病気が隠れている可能性があります。

たとえば、以下のような疾患によって血便を引き起こす場合があります。

  • 急性・感染性疾患: 犬パルボウイルス感染症や、激しい下痢が突然始まる急性出血性下痢症候群(AHDS)が疑われます。これらは短時間で深刻な脱水症状を招き、命に関わることがあります。

  • 慢性の腸疾患: 改善に時間がかかる「食事反応性腸症」や「抗菌薬反応性腸症」、炎症性腸疾患(IBD)などが潜んでいることもあります。

激しい下痢を伴う場合の詳しい原因や家庭でのケアについては、「犬の下痢の原因と対処法」もあわせてご確認ください。

犬が血便をしても元気な場合の対応

血便が出ていても、元気な様子で食欲もあり、いつも通りに見えることもあるでしょう。その場合、「元気はあるから、もう少し様子を見ても大丈夫かな」と判断したい気持ちになるかもしれません。

便にわずかな血液が混じっていても、元気や食欲があり、嘔吐や下痢などの症状がなく、回数も1回限りであれば、少し様子を見ても問題ないことが多いと考えられます。愛犬が普段と変わらず食べたり遊んだりしていれば、1〜2日程度様子を見て、その後の便の状態を観察するのも一つの選択肢になるでしょう。

ただし、犬は不調を隠す性質があり、見た目には元気でも、消化管の中で出血が続いている場合があります。元気があっても、以下のいずれかに当てはまる場合は、できるだけ早めに動物病院へ相談してください。

  • 血便が複数回続いている、または翌日以降も続く

  • 血の量が増えている・便の状態が悪化している(粘液、下痢、黒色便など)

  • 子犬、シニア犬、持病のある犬の場合

  • ワクチン接種歴が不明、または接種していない犬の血便

元気そうに見える場合でも、便の写真を撮り、状態を記録しておくと、後の診察に役立ちます。

すぐに動物病院を受診すべきケース

血便のなかには、家庭で様子を見るのではなく、できるだけ早く動物病院へ向かうべきケースがあります。様子を見てよい血便なのか、すぐに受診すべき血便なのかを、判断しやすいように整理します。

【すぐに動物病院を受診すべき血便のチェックリスト】

以下のいずれかに当てはまる場合は、様子を見ずに動物病院へ相談してください。

  • 下痢を伴う血便(形のない水様便)が出ている

  • 嘔吐の症状も見られる

  • ぐったりしている

  • 元気がなくなり、食事もとれない

  • 水を飲まない

  • 血便が続けて出る、または数日間続いている

  • 黒色便(タール便)が出ている

  • 子犬やシニア犬で血便が出た

  • ワクチンを接種していないか、または接種歴が不明

  • ゴミ箱のいたずら食いをした

  • 毒物や薬物を口にしたかもしれない

  • 体が冷たい

  • 歯ぐきの色が白っぽい・紫色など、ショック状態が疑われる

このどれかが当てはまる場合、脱水や感染症が進行し始めていたり、毒物の影響を受けたりしている可能性があります。

「これくらいで連れて行ってもいいのかな」と迷う場合は、まず動物病院に電話で相談しましょう。状態を伝えれば、すぐに受診すべきか、様子を見て大丈夫かを判断してもらえます。

【様子を見てもよい血便の目安】

以下のすべてに当てはまる場合は、便の状態を観察しながら、いったん様子を見てもよい可能性があります。

  • 便に少量の赤い血が少しついている程度

  • 元気があり、食欲も普段と変わらない

  • 嘔吐や下痢などの症状がない

  • 血便が1回出ただけで繰り返さない

ただし、血便が再び出たり、愛犬の様子に変化があったりした場合は、動物病院で相談しましょう。

動物病院では、犬の状態に応じて糞便検査、血液検査、画像検査(レントゲン検査や超音波検査など)が行われることがあります。

数日間、消化の良い回復期用フードに切り替えることで回復するケースも多いですが、症状が続く場合には、腫瘍や炎症性腸疾患などを疑い、生検などの精査が提案されることがあります。

犬の血便の予防と食事管理

血便の原因はさまざまで、すべてを完全に防ぐことはできません。ただし、日常の暮らしと食事を整えることで、消化器のトラブルが起こりにくい状態を保ち、血便のリスクを下げることはできます。

【食事の管理】

  • 年齢、体格、健康状態に合ったフードを選ぶ

  • フードを変更するときは、1〜2週間かけて少しずつ切り替える(急に切り替えると、消化器に負担をかけるため、軟便や下痢の原因になります)

  • 人の食べ物や、犬にとって危険な食材(チョコレート、玉ねぎ・ねぎ類、ぶどう、キシリトールを含む食品など)を与えない

  • おやつの量を適切に保ち、与えすぎない

  • 水をいつでも飲める状態にしておく

血便を繰り返している場合や、慢性的な消化器の不調がある場合は、食事を見直すことで改善するケースもあります。獣医師と相談しながら、消化器の健康をサポートする療法食への切り替えを検討する選択肢があります。療法食は、症状や体質に合わせて獣医師が処方するものです。自己判断で導入するのではなく、必ず動物病院で相談してください。

消化器サポートを目的とした療法食として、ヒルズプリスクリプション・ダイエットi/dシリーズなどがあります。導入を検討される場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

犬の血便に関して、よくある質問を紹介します。

Q1: 犬が血便をしていますが元気です。病院に行くべきですか?

A: 元気で食欲もある場合、1-2回の軽い血便であれば翌日の受診でも問題ないケースが多いです。ただし、子犬やシニア犬、持病のある犬は早めの受診を推奨します。

Q2: 犬のゼリー状の血便は何が原因ですか?

A: ゼリー状の血便は大腸の炎症(大腸炎)が最も多い原因です。ストレス、食事の急な変更、寄生虫感染なども考えられます。

Q3: 犬の血便と下痢が同時に起きたらどうすべきですか?

A: 血便と下痢の併発は感染症や中毒の可能性があり、特に子犬のパルボウイルスは緊急性が高いです。12時間以上続く場合は速やかに受診してください。

Q4: 犬の血便はストレスでも起こりますか?

A: はい。環境変化、長時間の留守番、来客等のストレスで一時的に血便が出ることがあります。ストレス要因を取り除けば通常1-2日で改善します。