猫の皮膚トラブルのサインとは

執筆: エマ・ミルン獣医師(BVSC、FRCVS)
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猫は起きている時間の約3分の1から半分ほどを毛づくろいに費やしていると言われています。そういえば熱心にあちこちよく舐めているな、と感じる飼い主さんも多いことでしょう。きれい好きなのは大変ありがたいのですが、もし皮膚のトラブルがあるときには、この毛づくろいの様子にどのような変化があるのでしょうか。あるいはほかに気づけるサインはあるでしょうか。

猫の皮膚トラブルには、かゆみを伴ったり、炎症を起こしたり脱毛したりといったことがありますが、その原因には次のようなものがあります。

  • ノミやダニなどの寄生虫

  • 環境中の物質に対するアレルギー(猫のアトピー性皮膚炎)

  • 皮膚の感染症

  • 食物アレルギー

  • 化学物質への接触による反応

  • 膿瘍や喧嘩による傷

これらの詳細については、こちらをご覧ください。

猫の皮膚病のサイン

猫は被毛に覆われているため、皮膚病のいわゆる病変に気づくよりも先に、猫の行動や様子の変化の方が分かりやすいサインになることがあります。猫の皮膚病の多くはかゆみや炎症を伴うことが多く、それはつまり何らかの刺激を感じていて、それに対して反応的な行動をする、ということです。とはいっても、そういった行動の方が分かりやすいものもあれば、皮膚の様子そのもののほうがわかりやすいこともあります。

  1. 過剰な毛づくろい:猫が毛づくろいに多くの時間を費やすことはすでにご紹介しましたが、とはいっても見るたびに毛づくろいをしている、ひっきりなしにそればかりしている、といった状態は毛づくろいが過剰で、何らかの皮膚トラブルが起こっている可能性があります。また、今まで普通にしていて、まるで何かに驚いたかのように突然に毛づくろいを始めたりすることもあります。これは猫のかゆみの典型的なサインです。

  2. 体を引っ掻いたり皮膚がけいれんしている:比較的分かりやすいサインの一つは猫がしきりに体を掻くことですが、皮膚が常時ピクピクと動いているときも、かゆみや刺激を感じている可能性があります。

  3. 毛玉(ヘアボール):毛づくろいが過剰になると、それだけ飲み込んでしまう被毛の量も多くなります。毛づくろい自体を人目につかない場所でやっている場合、行動だけでは気づかないこともあるかもしれません。今までよりも毛玉を吐く回数や量が多くなった、便に毛が多く混じっている、などの様子に気づいたら、毛づくろいが過剰になっている可能性があります。皮膚トラブルに加えて消化器のトラブルにもつながりかねないため、獣医師に確認してもらってください。

  4. 切毛や脱毛:猫はざらざらとした舌で毛を舐めるため、繰り返し舐めることによって毛が引きちぎれて毛が薄くなり、広範囲の切毛や脱毛を起こす可能性があります。皮膚表面をよく見るとうっすらと毛がトゲの様に残っているように見えることも多いでしょう。一方で、毛が何かの理由で発育が止まってしまい毛根から抜けてしまって脱毛することもあります。

  5. 発赤や炎症:明らかに脱毛していたリ、目立つ場所にない限り、分かりにくいかもしれません。気にする仕草がなくても、ときどき毛をかき分けて皮膚の状態をチェックしましょう。

  6. ノミのフンなど:ノミは、猫に不快感やかゆみを引き起こす主要な原因の一つです。ノミの成虫は動きが早くなかなか見つけにくいですが、ノミのフンはいわゆる血液で、ごみ粒のように見えても濡らすと赤く滲みます。室内で飼育していてもノミが感染する可能性はあるので、獣医師に適切な駆除薬を処方してもらいましょう。

  7. 膿瘍:猫同士のケンカの傷が膿んでしまって形成されることが多く、頭や顔、お尻付近によく見られます。最初のうちは傷そのものが小さく、少し腫れている程度であることも多く、触ると痛がるのに傷が分からない、といったこともあります。徐々に化膿が進んで膿みがたまってくるとやがて破裂し、明らかになります。

  8. かさぶた:同じくこれも被毛で分かりにくいこともありますが、なでていてブツブツとした感触に気づくことがあります。

このような行動的な変化や皮膚そのものの様子の変化があるときには、皮膚のトラブル、あるいはその背景となる何らかの異常が存在している可能性があります。気になることがあれば、早めに動物病院を受診してくださいね。

監修:ハイン・マイヤー博士(DVM、PhD、Dipl-ECVIM-CA)