猫の血便:うんちに血が混じる原因と動物病院に行くべき状況

執筆: エマ・ミルン獣医師(BVSC、FRCVS)
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猫の血便の原因はさまざま

猫の血便の原因はさまざまで、便の状態や血の色、混ざり方によって深刻度も異なります。必ずしも緊急性があるわけではありませんが、注意が必要な場合もあるため、血便の状態から考えられる出血部位や原因、また動物病院を受診すべき猫の状態について解説します。

猫の血便の状態と出血部位

血便というと真っ赤な色を思い浮かべるかもしれませんが、出血している部位によって、その外観は異なってきます。つまり、便の外観から出血部位をある程度推測することができます。

鮮血が混じっている便

鮮血が混ざっている場合には大腸から、便の表面だけについている場合には、直腸や肛門からの出血が考えられます。特に大腸の粘膜からの分泌物が混ざることでゼリー状の血便になることが多く、大腸に問題がある可能性があります。

黒っぽい血便

胃や十二指腸などの上部の消化管から出血している場合には、血液が部分的に消化され黒っぽい外観になります。

猫の血便の原因

では、そもそも消化管が出血するのは何故なのでしょうか。粘膜を傷つけたり炎症を起こすものであれば、いずれも出血につながる可能性がありますが、猫の血便の原因としては以下のケースが挙げられます。

  • 寄生虫:猫の腸に寄生する寄生虫によって粘膜が傷ついて出血することがあります。治療は駆虫薬の投与ですが、外に出る猫の場合、駆虫しても繰り返し寄生してしまうこともあります。獣医師と駆虫プログラムや飼育環境について相談してください。

  • 下痢:一時的な下痢であれば数日で治まることが多いですが、下痢が長引くと、粘膜から出血することがあります。

  • 大腸炎:大腸が炎症を起こした状態です。ゼリー状の粘液の混じった下痢や軟便が見られることが多く、ときに血液が混じることもあります。

  • 慢性腸症:対症療法に反応しない、3週間以上消化器症状が継続する原因不明の慢性の消化器疾患のことで、これには、食事反応性腸症(FRE;Food-Responsive Enteropathy)、抗生物質反応性腸症(AFR;Antibiotic-Responsive Enteropathy)、ステロイド反応性腸症(SRE;Steroid-Responsive Enteropathy)などが含まれます。

  • 食物有害反応:一般に食物に起因する有害な反応のことで、食物アレルギーと食物不耐症が含まれます。

  • 腸内のがんまたはポリープ

  • 有害物質:例として殺鼠剤のように腸を含む全身に出血を引き起こすものがあります。

  • 細菌またはウイルス感染症

  • ストレス:同居猫との相性や環境の変化などが猫にとってストレスとなり、血便が出ることがあります。猫は調子の悪さを隠すのがうまく、ストレスを感じていることに気づけないこともあります。

動物病院に行くべき状況

排泄の状態はもちろん、元気や食欲、普段の行動をよく観察することが大切です。

外出習慣のある猫は排泄の確認が難しいですが、外出頻度やタイミング、元気や食欲に変化がないか注意しましょう。

消化器の不調は自然に治ることもありますが、以下の症状がある場合は必ず動物病院を受診してください。

  • 明らかに具合が悪そうに見える、食欲の低下あるいはまったく食べない、体重が減った、目に力がなくだるそうに見える、いつもより水をよく飲んでいる、などの状況の時は必ず獣医師の診察を受けてください。何らかの健康問題が生じている可能性が高いと考えられます。

  • 血が混じっているかどうかにかかわらず、重度の水様性の下痢があってさらに嘔吐も見られるときも、すぐに動物病院を受診すべき状態です。嘔吐と下痢による水分喪失によって脱水症状を引き起こし、重要なミネラルも失われるおそれがあるため、できるだけ早く適切な処置をする必要があります。

  • トイレで何度もいきんでいるとき。これは、便秘や大腸炎、または腸内の異物の際にも見られる徴候ですが、尿道閉塞などでも同じような様子が見られることがあります。尿が出ないのは医学的な緊急事態のため、早急に動物病院に受診し処置をしてもらってください。

  • 消化器症状が続いている場合。食欲があったとしても下痢や嘔吐が48時間以上続くときは、動物病院を受診しましょう。

下痢や血便で動物病医院を受診する場合には、可能であれば糞便検査のための便を採取して持参してください。動物病院ではそのほか状況に応じて血液検査や画像検査などを行うことがあります。

一般的に下痢や嘔吐などの消化器症状の大半は、食事の内容や食事量の調整、あるいは投薬によって改善することが多いものの、中には原因となる疾患が存在し、なかなか改善しないケースもあります。いずれにしても長引かせないよう、早めに動物病院を受診してアドバイスをもらうようにしましょう。

監修:ハイン・マイヤー博士(DVM、PhD、Dipl-ECVIM-CA)