犬の尿漏れや粗相について:知っておきたいこと

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ペットに最適なフードを見つけましょう。

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犬を室内で飼育する上での困りごと・・・といってまず思い浮かぶのは、排泄に関する問題という方も多いのではないでしょうか。今までは室内のトイレや屋外で排泄ができていたのに、なぜか部屋の全然違う場所にオシッコをしてあるのを見つけたときは、これはわざとなのか、それとも漏れてしまったのか、などといろいろと心配になってしまいますよね。1回や2回ならともかく、何回か続くと、部屋を汚されてしまうことへの嫌悪感も加わって、愛犬を叱ってしまうこともあるかもしれません。でも、このような排泄のトラブルは、心身に関係した病的な理由が隠れていることもあるので、注意が必要です。

犬がトイレ以外の場所で排尿する理由とは?


トイレ以外の場所での排尿には、厳密には自分の意志で排尿するケース(一般的に粗相というイメージでしょうか)と、自分の意志とは関係なく無意識に漏れてしまう尿失禁(いわゆる尿漏れですね)があります。シンプルなところでいえば、犬がまだトイレの場所を十分に覚えていない、あるいはトイレの場所や素材が気に入らないといったことだったり、トイレの場所が遠くて間に合わない(あるいは外でする習慣の犬がしたいタイミングで外に出られなかった)などがあり、こういった粗相の多くは、トイレトレーニングの実施やトイレ環境を見直すことで解決できます。排泄場所は犬の習性に加えて、個々の好みもあるので、人間の都合だけではなくこういったことも考慮してあげるとトイレトレーニングが成功しやすくなります。ベッドに横たわっている黒のフレンチ ブルドッグ。

また、代表的な粗相には、いわゆるマーキングの場合もあります。一般的にマーキングは、とくに去勢していないオス犬に多い問題で、去勢を行うことで解決する場合があります。ただし、この行動はこういった性ホルモンの影響によるもの以外にも理由があるといわれているので、去勢したオスや避妊したメスにも見られることがあります。不安やストレスを感じたとき、特に新しいペットが仲間に加わり、自分の地位が脅かされるのではないかと感じたときなどに起こりやすいようです。

粗相には、このような理由のほかに、行動学的な原因が隠れていることがあります。

  • 興奮しすぎ(興奮性排尿):子犬は興奮しすぎて粗相をしてしまうことがよくありますが、多くの場合は成長とともに解消します。しかし、成長してもこのくせが直らない子もいます。
  • 服従性排尿:他の犬や動物、ときには人間に対する服従のサインとして排尿する子もいます。
  • 過剰な不安または恐怖誘発性:不適切な場所での排尿は、何かへの恐怖や不安に対する反応かもしれません。飼い主が不在で留守番中に起こる場合には分離不安症の症状の可能性もあります。また、大きな騒音など、特定の事象に対して恐怖を感じた場合に誘発される場合もあります。
  • 環境の変化:引っ越しなど環境の変化があった場合には、まだトイレの場所を覚えていない可能性もありますし、マーキングの意味であちこちに排泄する場合もあります。

尿漏れや粗相の原因として考えられる病気

トイレのしつけがしっかりとできていて、環境にも上手く順応している犬がトイレ以外で尿を漏らすようになった場合は、何らかの健康トラブルが原因になっている可能性があります。自分自身で排尿のコントロールができなくなってしまう病気もあれば、強い尿意をもよおして、排尿の頻度が増えたりする病気もあります。そのような可能性のある疾患には次のようなものが挙げられます。

  • 関節炎などで排尿しようとしゃがんだり足を上げたりしたときに痛みがある
  • 尿路(膀胱)の感染症
  • 膀胱結石
  • 糖尿病
  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)あるいは低下症(アジソン病)
  • 尿崩症
  • 腎臓病や肝機能障害
  • 腎臓や膀胱の腫瘍
  • 加齢にともなう病気や障害
  • 脳疾患や認知症などによる認知障害
  • 尿路の奇形、エストロジェン反応性失禁(避妊メス)

尿漏れや粗相に気づいたら、どうすればよい?

トイレ以外での排泄に気づいたら、まずはどのような状況で漏らしているのかよく観察しましょう。そして、動物病院を受診して、状況をよく説明し、診察してもらいます。獣医師は身体検査や尿検査、そのほか状況に応じて必要な検査を行って、原因を探っていきます。

加齢が原因の場合や病気が慢性化していて、治療による根本的な解決が難しい場合には、愛犬が快適に過ごせてかつ日々のケアがしやすい、愛情のこもった方法について獣医師と話し合いましょう。散歩や外に出す回数を増やしたり、それが難しい場合にはサークルの中にペットシーツを敷きつめて行動範囲を狭めるなどの対策があります。また、犬用おむつをうまく利用するのも一つです。

行動学的な問題が原因の場合も、もちろん獣医師と話し合う必要があります。分離不安のような問題行動が関係している場合、不安や恐怖と感じるその状況を克服するためには専門的な治療が必要なこともあるため、犬の行動学の専門家を紹介してくれることもあります。病的疾患がなければ、信頼できるドッグトレーナーに相談して、トイレトレーニングの正しい方法についてアドバイスをもらうのもよいアイデアです。愛犬がトイレ以外の場所で排尿したら、ニオイが残り、またその場所で排尿してしまうことがあります。ニオイが残らないように専用のクリーナーを使ってしっかりふき取りましょう。

そして、排泄の問題には関してけっして叱らないでください。愛犬が、叱られたことと不適切な場所で排尿したことを結びつけて理解してくれるとは限りませんし、叱ったことで排尿自体がいけないことだと理解し、かえって愛犬の抱える問題が悪化することもあるからです。現行犯ではなく、飼い主の留守中に排尿して、飼い主が帰宅した時にその跡が見つかった場合に特に当てはまります。一般によく言われるような、排尿をした場所に犬の鼻を押しつけるようなことも絶対ダメです。正しい場所で排尿出来たらおやつを与えたり、たくさん褒めて愛情を示すことに重点を置きましょう。

トイレ以外での排泄によって、部屋のカーペットやクッションをダメにしたり、いちいち掃除したりすることが度重なってくると、どんなに愛犬が可愛くてもイライラしてしまうかもしれません。でも、よくよく考えてみると、トイレ以外での排泄は犬から何らかのメッセージを発信しているサインともいえませんか?この場所ではトイレしたくない・・・、とか、なんかわからないけどおしっこが間に合わないの・・・と訴えているのかもしれません。排泄のトラブルはしつけの問題だと思われがちですが、愛犬の行動をよく観察して、適切な対処ができるようにしたいものですね。

Contributor Bio

 高橋智司

高橋智司

編集責任者: 高橋智司
アソシエイト ディレクター  獣医師
プロフェッショナル獣医学術部
日本ヒルズ・コルゲート株式会社

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