子猫を迎えるための準備:やることリスト

執筆: エマ・ミルン獣医師(BVSC、FRCVS)
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偶然の運命的な出会い・・・もあるかもしれませんが、やはり子猫を迎えると決めたら、しっかりと準備したうえで安心してお迎えしたいものです。さらにいえばもっと根本的な事、今後20年近く続くであろう猫との暮らしで起こりうるさまざまなことに対して、責任と覚悟をもてるのか、しっかりと心の準備を整えるところからやることリストは始まっています。

猫との暮らしの現実を知ること

近年、猫の寿命は延び、10代後半まで生きることも珍しくありません。そのため、子猫を迎えるにあたっては、その後長きにわたってその責任を負うということ意識しなければなりません。一般的に猫は散歩もいらず、自立した特性から、たしかに飼育するためのエネルギーは犬よりも少ないですが、それでもペットを飼育するということは時間も手間も必要ですし、おそらく思っている以上に費用もかかります。イギリスの動物福祉関連慈善団体であるPDSA (People's Dispensary for Sick Animals)* は、平均的な猫の一生にかかる費用は少なくとも11,100ポンド (約211万円) とかなりの高額に見積もっています。子猫を引き取る前には、ご自身の生活スタイルを振り返って、時間やスペース、エネルギー、そして費用についてよく検討してください。

そして、猫には、引っ掻く、高いところに上る、狩りをするといった多くの行動面のニーズがあること、いざ一緒に暮らしてみるとその猫であるが故の行動に悩まされるケースもあることを思い出してください。こういったことも踏まえて、ご自身や家族が猫と暮らしていけるのかよく考えてください。

入手先を確認

ブリーダーから入手する場合、必ずブリーダーについて調べ、気になることはブリーダーに質問するようにしてください。愛情をたっぷりと注いだ養育環境で子猫を育て、十分に社会化し、人に慣れるようにトレーニングしている施設を選びましょう。こういった施設では、子供から大人まで年齢にかかわらず人間に触られることや、一般的な家庭の音や匂いなどについて好ましいものとして経験を積ませています。子猫を譲り受けるときには母猫にも会わせてもらいましょう。シェルターなどから引き取る場合でも、事前に施設を調べるなどして情報を入手するようにし、不明な点は問い合わせるようにしてください。

子猫を迎える前に必要な準備

母猫から離れて新しい環境にうつることは、どんな子猫にとっても大きなストレスになります。少しでもその負担を少なくするために、引き取る2~3週間前に、毛布などをブリーダーに預けておくことができれば、新しい環境にも馴染みやすくなるかもしれません。また、新しい環境でよりリラックスした気分にさせるのに役立つ、猫のフェロモンディフューザーを子猫が到着する前に設置しておくのもいいでしょう。 

あらたに準備するものは次のとおりです。

  • 猫用キャリー。成猫や子猫を移動させるのにフリーな状態は非常に危険です。頑丈で、できれば上部にも開口部があるキャリーが便利です。

  • 毛布とベッド

  • 子猫用フード。まずは必ずブリーダーやシャルターから今まで食べていたフードを少なくとも1週間分程度分けてもらいましょう。あらかじめ今までのフードの情報をきいておいて同じものを用意しておいてもよいですし、別の子猫用フードを与える場合には、フードの切り替え方法について獣医師に尋ねておきましょう。

  • フード用と飲み水用のボウル。食事の時間を楽しくするために、パズルフィーダーのような知育おもちゃを用意しておくといいかもしれません。

  • 猫用トイレと猫砂。トイレは、飼っている猫の数よりも1個多く用意するのが理想です。トイレの場所は、静かで人目につかず、フードや飲み水から離れたところに設置しましょう。

  • 子猫のお手入れに適した、柔らかめのクシやブラシ。

  • 爪とぎポールまたは爪とぎパッド。猫は生来、爪とぎを必要とします。爪とぎには、爪のお手いれのほか、マーキング、さらには気持ちを落ち着ける意味もあるとされています。猫にとって心地の良い爪とぎを用意しておくことによって、家具や壁などを守ることにもつながります。

  • 首輪。安全性を考慮した作りのものを選べば、居場所の確認や身分証明などの意味で役に立ちますし、地域によっては法律で定められていることがあります。一部の国で義務づけられているマイクロチップの埋め込みは、さらに確実な身分証明の方法で、猫を恒久的に識別することができます。マイクロチップの装着については獣医師に尋ねてみてください。

  • おもちゃ。遊びは子猫の体づくりや狩猟本能を満たすなど猫にとって大切な意味があり、飼い主とのコミュニケーションツールとしても大いに役立ちます。複数のおもちゃを用意して、子猫が飽きないように、それらを交互に与えるとよいでしょう。

  • 猫用ドア。猫のためにわざわざドアを開け閉めしないですむため、あると便利です。ただし、猫を自由に外出させることに対する見解は国ごとに大きく異なるため、屋外へつながる猫用ドアについては、お住まいの地域の状況に従ってください。

子猫をお迎えしたら

やっとやってきた子猫をたくさんかまいたくなる気持ちはわかりますが、子猫にとっては一大イベントであることを忘れないでください。まず、フードと水とトイレ(トイレはフードと水から十分離れていること)を準備した一室に子猫を入れて、あまり構わないようにします。子猫は、初めは当然隠れてしまうでしょうが、子猫のペースで、じっくり探検させてあげましょう。静かに見守るようにして、子猫が自分から近づいてくるのを待ちます。猫によって慣れるまでの時間はまちまちですが、焦らずじっくり距離を縮めてください。

先住猫がいる場合には、新参者の登場はかなりのストレスになります。いきなり引き合わせるのは、どちらの猫にとっても負担になり、その後の関係性にも大きく影響します。先住猫の性格をよく考慮して、そもそも多頭飼いをすべきか、新しく迎い入れるならどのように引き合わせるのがベストか、獣医師とよく相談してください。

猫は基本的には穏やかで落ち着いた環境を好むので、ゆったりと優しく接するように心がけましょう。これからはじまる猫ちゃんとの暮らしを存分に楽しんでくださいね!

*参照先:https://www.pdsa.org.uk/press-office/latest-news/cost-of-living-statement

監修:ハイン・マイヤー博士(DVM、PhD、Dipl-ECVIM-CA)

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