猫のお腹の膨らみが気になったことはありませんか。猫のお腹が膨らむ原因は、肥満や腹水、臓器の腫大など複数考えられます。

「太ったから食事を減らそう」と安易に判断してしまいがちですが、猫のお腹の膨らみは、お腹に水がたまる「腹水」や内臓疾患が原因の可能性もあるため、自己判断による対応は危険です。放置することで病気の発見が遅れる恐れもあるので、正しい知識を持って対応しましょう。

この記事では、猫のお腹が膨らむ原因や腹水の見分け方、動物病院での検査や治療法について詳しく解説します。

 

猫のお腹が膨らむ主な原因とは

猫のお腹が膨らむ原因は、肥満、腹水、妊娠、寄生虫感染、臓器の腫大など複数の要因が考えられます。

肥満によるお腹のたるみ(ルーズスキン含む)

猫のお腹が膨らむ原因としてまず考えられるのは、肥満で脂肪がついたことによるお腹のたるみです。

肥満の猫は、お腹だけでなく胸まわりや腰まわりにも脂肪がつきやすく、体全体がふっくらして見えます。触るとやわらかい脂肪の厚みがあり、お腹だけが膨らむのではなく体型が少しずつ変わっていくのが一般的です。

また、猫のお腹の下に皮のたるみが見えることがあり、ルーズスキンと呼ばれています。ルーズスキンは病気ではなく、もともとの体質や去勢・避妊手術後の変化として現れることが多いものです。

猫が肥満かどうかを判断する方法は、以下の記事で詳しく解説しています。

猫の肥満チェック

腹水がたまっている場合

猫のお腹の膨らみは、腹水が原因のこともあります。

腹水とは、腹腔と呼ばれるお腹の中の空間に、水分やたんぱく成分を含む液体がたまった状態で、背景に病気が隠れている可能性があります。

猫の場合、以下のような疾患が原因として考えられます。

  • 出血:腹腔内への出血は、腫瘍からの出血、内臓の損傷、血小板数減少または血小板機能異常症、抗凝固性殺鼠剤の摂取などから起こります。
  • 悪性腫瘍(がん):悪性腫瘍は、体液や場合によっては血液の腹腔内貯留を引き起こすことがあります。
  • 心不全:右心不全があると、効率的に血液を送り出すことができなくなり、その結果として腹水がたまることがあります。心不全が疑われるときは緊急事態と考えて、直ちに検査を受ける必要があります。
  • 低たんぱく血症:血液中のたんぱく質が不足することで起こり、肝不全・腎臓病・腸の疾患・栄養失調などが原因になります。たんぱく質が極端に減ると、水分が血管外に漏れやすくなり、腹水やむくみが生じることがあります。
  • 猫伝染性腹膜炎(FIP):猫コロナウイルスが原因で発症するウイルス性疾患です。かつては非常に治療が難しい病気とされていましたが、近年では有効な抗ウイルス薬による治療法が普及し、早期発見・治療によって回復を目指せるようになってきています。
  • 臓器の破裂:膀胱、胆嚢、消化管などの破裂は、内容物が漏れ出すことがあり腹水の原因となります。いずれも緊急を要する病態です。

腹水がたまると、下腹部が重たく垂れるように膨らみやすく、立ったときにお腹が下方向に目立つことがあります。お腹を触ったときに、中で液体が動くような感触がある場合は、脂肪ではなく腹水の可能性があります。

腎臓病によって血液中のたんぱく質が減ることもあるため、症状や検査については以下の記事もあわせてご覧ください。

猫の腎臓病について

妊娠によるお腹の膨らみ

妊娠も、お腹の膨らみの原因として考えられます。

ただし、妊娠初期は見た目だけで判断することが難しく、肥満や腹水、子宮の病気との区別がつきにくいことも多いです。

妊娠の可能性がある場合は、動物病院の超音波検査などで確認しましょう。

寄生虫感染

寄生虫感染によって、猫のお腹が膨らんで見えることがあります。

特に子猫の場合、回虫などの寄生虫がお腹の中で増殖しやすいため、体は痩せているのにお腹だけがぽっこりと膨らんで見えるときは注意しましょう。

寄生虫感染が確認された場合は駆虫薬を処方されます。寄生虫感染を正しく確認するのは難しいので、市販薬を自己判断で使用することはせず、獣医師の診察を受けるようにしましょう。

臓器の腫大・腫瘍

臓器の腫大や腫瘍によってお腹が膨らむこともあります。

その場合、肝臓や脾臓などが大きくなり、腹部の容積が増えてお腹がパンパンに張った状態になります。

病気は外からはわかりにくいので、「太ったのかな」と放置してしまうと、病気が進行してしまうかもしれません。お腹が膨らんでいる、お腹がパンパンに張っていることに気づいたら、動物病院を受診するようにしましょう。

猫の腹水の見分け方と特徴

猫の腹水は、お腹の膨らみ方や体全体の状態から疑うことはできますが、見た目や触った感覚だけで確定することはできません。

ここでは、一般的な腹水の見分け方を紹介しますが、腹水の場合は病気が原因の可能性もあるため、自己判断せず必ず獣医師に相談しましょう。

たぷたぷとパンパンの違い

猫のお腹の膨らみをよく見ると、「たぷたぷ」という表現が合う場合と、「パンパン」という表現が合う場合があります。

一般的には、お腹が「たぷたぷ」している場合は脂肪やルーズスキン、腹水の可能性が高く、「パンパン」に張っている場合は、臓器の腫大、腫瘍をはじめとする病気が疑われます。

猫のお腹が「たぷたぷ」している場合、膨らみを触ってみて液体のように感じられるようなら腹水の可能性があります。ただし、腹水が急激に増えたときには「パンパン」に張ったように見えることもあるため、「たぷたぷ」か「パンパン」かによって腹水かどうかを正確に判断することはできません。

どのような場合でも、症状を正しく判断するためには獣医師の診察を受けましょう。

腹水とルーズスキンの見分け方

腹水とルーズスキンの見た目の違いは、以下のような点にあります。

  • 腹水:お腹の中に液体がたまって腹部全体が大きく見える。

  • ルーズスキン:下腹部の皮膚や脂肪がたるんで見える。

腹水には、短期間でお腹が大きくなるという特徴があり、背中や腰まわりは痩せているのに、お腹だけが目立つことも多いです。

一方、ルーズスキンは下腹部の皮膚や脂肪が袋状に垂れたもので、歩いたり走ったりすると左右に揺れるのが特徴です。以前から同じ位置にたるみがあり、体重や体調に大きな変化がなければ、ルーズスキンの可能性があります。

猫のお腹がパンパンに膨らむ危険な症状

猫のお腹がパンパンに膨らみ、呼吸の乱れや食欲低下、嘔吐、下痢などを伴う場合は、緊急性の高い状態が疑われます。

直ちに受診する必要がある症状

お腹が急に膨らみ、次のような症状を伴う場合は、緊急性が高いため、すぐに動物病院を受診してください。

  • 口を開けて呼吸している:強い呼吸困難が起きている危険な状態。
  • 呼吸が速い、浅い:腹水や臓器の腫大によって横隔膜が圧迫されている可能性がある。
  • 立ち上がれない:体を支えられないほど衰弱している。
  • 元気がなく、動かない:腹水の原因となる病気が進行している可能性がある。
  • 食欲がない:腹部の圧迫や痛み、病気の影響の可能性がある。
  • 嘔吐や下痢が続いている:脱水や消化管の異常、感染症の疑いがある。
  • 抱き上げると強く嫌がる:腹部に強い痛みがある可能性がある。
  • 短期間で体型が変わった:腹水が急速に増えた、臓器の腫大、腫瘍などの疑いがある。

このような場合にはできるだけ早く動物病院を受診しましょう。

下痢が続く原因や受診の目安は、以下の記事で詳しく解説しています。

猫の下痢の原因と対処法

猫のお腹の膨らみに対する検査方法

お腹の膨らみの原因が肥満なのか腹水なのか、臓器の腫大や腫瘍なのかを見極めるために、動物病院では、触診や視診、血液検査、画像診断などが行われます。

触診・視診

猫の腹水などを調べる場合に、最初に行われるのは視診と触診です。

獣医師は、膨らみ方が全体的か下腹部中心か、左右差があるか、触ったときに波動感があるか、痛みがあるかなどを確認します。

腹水などの疑いがあれば、血液検査や画像診断などでより詳しく調べます。

血液検査・画像診断

続いて血液検査や画像診断を行い、お腹が膨らんでいる原因が、腹水、臓器の異常、腫瘍などのどれに当たるのかを調べます。

血液検査で確認するのは、炎症や貧血の有無、肝臓や腎臓の働き、血液中のたんぱく質の量です。これらの数値から、肝臓病や腎臓病、感染症など、お腹の膨らみにつながる病気がないかを判断します。

超音波検査では、お腹の中に液体がたまっていないか、肝臓や腎臓などの臓器が大きくなっていないか、腫瘍がないかを確認します。一方、レントゲン検査で分かるのは、臓器の大きさや位置、胸水の有無、心臓の大きさなどです。

腹水が見つかった場合は、必要に応じて腹部に針を刺し、たまっている液体を採取します。採取した液体に血液や炎症を起こす細胞、腫瘍細胞などが含まれていないかを調べ、腹水がたまった原因をさらに絞り込みます。

お腹の膨らみには消化器の異常が関係することもあります。食欲や便の変化も見られる場合は、以下の記事も参考にしてください。

猫の消化器の健康管理

猫のお腹の膨らみの治療法

猫のお腹の膨らみは、症状や原因に合わせて、食事管理、駆虫薬、投薬、手術、腹水を抜く処置などで治療します。

腹水が確認された場合は、腹水を取り除くとともに、腹水の原因となっている疾患の治療も行います。

原因別の治療アプローチ

治療は、お腹の膨らみの原因に合わせて行われます。

  • 肥満の場合:食事量の見直しや運動習慣の改善
  • 寄生虫の場合:駆虫薬を投与
  • 臓器の腫大や腫瘍の場合:投薬、手術、化学療法など
  • 腹水の場合:FIP(猫伝染性腹膜炎)や心臓病、肝臓病など、腹水を引き起こしている病気の治療

お腹の膨らみが見られる場合、様子を見たり、市販のサプリメントなどで対処したりすると、病気の発見が遅れる可能性があります。

特に腹水の場合、たまっている水を減らしても再びたまることがあるため、検査で原因を特定し、その病気を治療することが重要です。

腹水の治療と管理

検査によって腹水が確認された場合には、以下のような方法で腹水を減らすための処置が行われる場合があります。

  • 腹部に針を刺して腹水を抜く(腹水穿刺)
  • 利尿剤で体内の水分を排出する

ただし、これらは腹水を減らすための処置であり、根本的な治療ではありません。腹水には原因があるため、原因を治療しなければ、再び腹水がたまる可能性があるからです。

処置によって腹水が減った後には、原因疾患の治療とあわせて、腹水が再び増えていないかのチェックが定期的に行われます。

また、原因となる病気や猫の状態によっては、塩分や栄養バランスを調整した食事療法を行うことがあります。必要な食事内容は病気によって異なるため、獣医師の指示に従ってフードを選ぶようにしましょう。

猫のお腹の膨らみを予防するために

お腹が膨らむのを防ぐために、定期的な健康チェックと適切な食事管理を行いましょう。

定期的な健康チェック

動物病院で定期的に体重を測り、お腹の膨らみ方や背中、腰まわりの体型を確認します。

腹水やその原因となる疾患がある場合は、早期発見・早期治療ができれば悪化を防げることがあります。そのためには、定期検診で血液検査や超音波検査なども行い、見た目ではわからない臓器の異常や腹水の有無を調べるのが有効です。

家庭でも体重や体型を定期的に確認し、気になる点があればできるだけ早く動物病院を受診しましょう。

年齢を重ねた猫に必要な検査や受診頻度は、以下の記事で詳しく紹介しています。

シニア猫の定期健診

適切な食事管理

猫の肥満を防ぐために、年齢や体重、運動量に合うフードを適量与えるようにしましょう。フードのパッケージに記載された給与量は目安なので、体重や体型の変化を見ながら、獣医師に相談して量を調整してください。

なお、肥満に気づいたからといって急激に食事量を減らすと、体調を崩す恐れがあります。獣医師に相談しながら目標体重と一日の食事量を決め、体重管理に適したフードを選んで無理のないペースで減量を進めましょう。

猫のお腹の膨らみに関するよくある質問

猫のお腹がたぷたぷしていても、必ずしも病気とは限りません。

お腹がたぷたぷしている場合、肥満やルーズスキン、腹水などが原因として考えられます。

背中や腰は痩せているのにお腹だけが大きい場合や、短期間で膨らみが強くなった場合は、腹水の可能性があります。なるべく早く動物病院を受診しましょう。

家庭でお腹の膨らみ方や触った感触を確認することはできますが、腹水かどうかを正確に見分けるのは困難です。

腹水では、お腹全体が膨らむ、下腹部が垂れるように見える、触ると内部で液体が動くように感じることがあります。ただし、肥満やルーズスキン、臓器の腫大でも似た見た目になるため、家庭で判断することはできません。

腹水が疑われる場合は、動物病院で超音波検査やレントゲン検査を受け、腹水の有無と原因を調べてもらいましょう。

猫のお腹が急に膨らんだら、早めに動物病院を受診しましょう。猫のお腹の膨らみには、さまざまな原因が考えられます。特に、呼吸が速い、元気や食欲がないといった様子が見られるときや、嘔吐や下痢があるときは、緊急性が高いためすぐに受診してくましょう。

まとめ

猫のお腹の膨らみは、肥満やルーズスキンといった病気以外のものから、腹水や臓器の腫大、腫瘍などの重度の疾患まで原因はさまざまです。

特に「急にお腹が大きく膨らんだ」「背中は痩せているのにお腹だけ目立つ」「元気や食欲がない」といった様子が見られる場合は、腹水をはじめとする病気の兆候かもしれません。

肥満と病気による膨らみを家庭で正確に区別することは不可能なため、お腹の膨らみや体型の変化に気づいたら自己判断せず、早めに動物病院を受診しましょう。

 

Dr. Jessica Seid Dr. Jessica Seid

ジェシカ・セイドは、ニューイングランド地域で救急獣医師として活躍しています。ノースカロライナ州立獣医科大学を卒業し、10年以上この分野で活躍しています。診療をしていない時は、夫、娘、そしてフレンチブルドッグと過ごす時間を楽しんでいます。